税務調査の事例まとめ|消費税・源泉所得税・相続税で指摘される点

消費税・源泉所得税・相続税で指摘が集中するのは、課税か非課税かの線引き、書類の保存要件、名義と実態のずれの3つです。金額の大小ではなく取引の性質で結論が変わるため、正しいと思って処理していたのに調査で覆るケースが後を絶ちません。

しかも2026年(令和8年)は、インボイスの経過措置・2割特例・食事の現物給与の非課税限度額がそろって切り替わる年です。改正の内容と実際の指摘事例を、税目ごとに整理しました。

ここを指摘される!税務調査の事例紹介

税金の中には、取引内容や品目、税法の改正などによって課税されたり非課税になったりするものがあります。こうした中には線引きが難しいものもあり、正しいと思って処理していたのに税務調査で指摘されてしまうケースは少なくありません。

そこで、どこに注意すればよいのかを事例を交えてまとめました。

消費税編

消費税には、取引の内容によって課税・非課税・不課税に分かれるものがあります。たとえば住宅の家賃は原則非課税ですが、賃貸期間が1か月未満だと課税になるなど、専門的な知識がないと正しい処理ができず、税務調査で指摘されることになります。

また、2023年10月に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、原則として仕入税額控除には適格請求書の保存が必要となったため、この点も消費税の調査で確認されやすくなっています。

  • 同業組合費を課税仕入として処理していたが、対価性がないことを指摘され修正申告をした。
  • 国内の業者を経由して海外に商品を販売していたが、税務調査で輸出免税に該当しないと指摘された。
  • 仕入税額控除を受けるために法人クレジットカードの請求明細書を保存していたが、要件を満たさないと指摘された。

2026年10月から「8割控除」は「7・5・3割控除」へ

インボイス発行事業者以外(免税事業者など)からの課税仕入れについては、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。この経過措置が令和8年度税制改正で適用期限を2年間延長したうえ、控除できる割合が見直されました。国税庁が示している時系列は次のとおりです。

インボイス経過措置で控除できる割合が80%から70%・50%・30%へ段階的に縮小し2031年10月以降は0%になることを示す棒グラフ
令和8年度税制改正で適用期限が2年延長され、控除割合が「7・5・3割控除」に見直されました(2026年9月時点)。

つまり、2026年10月1日から2年間は控除できる割合が70%に下がり、以後は50%→30%と段階的に縮小し、2031年10月1日以後は控除できなくなります。

あわせて、一のインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込)が、その年または事業年度で1億円(改正前は10億円)を超える場合、超えた部分にはこの控除を適用できません。この1億円の基準は、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。

調査の現場では、仕入先がインボイス発行事業者かどうかを取引ごとに区分できているか、経過措置を使う取引に必要な記載が帳簿にあるか、といった点が確認されます。

控除割合が切り替わる時期をまたぐ取引は、計上時期のズレがそのまま計算誤りにつながるため注意が必要です。なお、税込1万円未満の課税仕入れについて帳簿の保存だけで控除を認める「少額特例」は、2029年(令和11年)9月30日までの措置とされています。

「2割特例」は2026年9月で区切り、個人事業者には「3割特例」

売り手側の負担軽減策も切り替わります。インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった人が、納付税額を売上税額の2割にできる「2割特例」は、令和8年9月30日までの日の属する課税期間が最後です。個人事業者であれば令和8年分の申告までが対象になります。

その後の受け皿として、令和8年度税制改正で個人事業者向けの「3割特例」が創設されました。インボイス発行事業者の登録を受けたことで課税事業者となった個人事業者は、令和9年分・令和10年分の消費税の確定申告で、納付税額を売上税額の3割とすることができます。

適用には、基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること、インボイス発行事業者の登録を受けていることが必要です。申告は一般課税または簡易課税で行い、簡易課税への移行措置も設けられています。

外注先に個人事業者が多い会社では、取引先側の納税負担が変わることで価格交渉の材料になる可能性があります。買い手側の控除割合とあわせて、取引条件を見直す時期といえます。

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源泉所得税編

会社は、所得を受け取る人に代わって給与や報酬から所得税を差し引いています(源泉徴収制度)。しかし、永年勤続表彰や社員旅行費用など一時的に発生するものについては、課税・非課税の認識不足から誤った処理をしていることがあるので注意が必要です。

  • 残業の際の社員の食事代を現金で支給していたが、税務調査で給与の一部とみなされ源泉所得税を納付した。
  • 永年勤続者表彰の記念品を社員に選んでもらい、会社が購入して与えていたが、税務調査で非課税と認めてもらえなかった。
  • 留学生アルバイトを源泉徴収なしで雇っていたが、専門学校に該当する学校だったため所得免税が適用されなかった。

食事の現物給与は非課税の上限が引き上げられた(2026年4月1日以後の支給分)

役員や使用人に食事を支給した場合、次の2つの要件をどちらも満たすときは給与として課税されません。

  • 役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること
  • 会社の負担額(食事の価額から本人負担額を差し引いた残額)が1か月あたり7,500円以下(消費税および地方消費税を除く)であること

この上限は令和8年3月31日付の通達改正で月額3,500円から7,500円へ引き上げられ、2026年(令和8年)4月1日以後に支給する食事について適用されます。深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて金銭を支給する場合に課税しないこととされる金額も、1回あたり300円以下から650円以下へ引き上げられました(国税庁「食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて」)。

注意したいのは、現金で食事代を渡す方法は、この非課税の枠組みには原則として当てはまらないという点です(深夜勤務の夜食に代えて支給する一定額を除きます)。上の事例のように、残業時の食事を現金で支給していたために給与と判断されるケースは今も起こり得ます。

永年勤続表彰の記念品も、勤続年数や表彰の間隔などの要件を満たすことが前提で、本人が品物を自由に選べる仕組みや、現物に代えて金銭を支給する形は課税対象と扱われます。金額の水準だけでなく「渡し方」が見られる、と考えておくと誤りを防げます。

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相続税編

相続税は、申告した人のうち一定の割合に税務調査が入ります。国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月公表)によると、実地調査は9,512件(前事務年度比111.2%)、文書や電話・来署依頼による「簡易な接触」は21,969件(同117.0%)で、合わせると年間およそ3万1,000件です。

簡易な接触の件数・追徴税額は、公表を始めた平成28事務年度以降で最高になりました。実地調査だけでなく、書面や電話での是正が広く使われている点は押さえておきたいところです。

注目すべきは指摘を受ける確率です。実地調査が入った場合に申告漏れなどが指摘された割合は82.3%と非常に高く、いったん調査対象になると高い確率で指摘を受けているのが実態です。

実地調査1件あたりの申告漏れ課税価格は3,093万円、追徴税額は867万円で、うち1,065件(非違件数の13.6%)には重加算税が課されています。一方、簡易な接触でも5,796件の申告漏れ等が見つかっており、1件あたりの追徴税額は63万円でした。

無申告のまま済ませてしまったケースにも目が向けられています。無申告事案に対する実地調査は650件で、追徴税額は142億円と公表開始(平成21事務年度)以降で最高、1件あたりの追徴税額は2,187万円にのぼりました。

海外資産も同様です。国税庁はCRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)など租税条約等に基づく情報交換を活用しており、海外資産に係る申告漏れ等の非違は209件(同124.4%)、申告漏れ課税価格は97億円(同155.5%)と増えています。「国外にあるから分からない」は通用しないと考えるべきです。

では、何が申告漏れになっているのか。同資料の構成比を見ると、現金・預貯金等と有価証券で全体の4割強を占めています。

申告漏れ相続財産の構成比を財産の種類別に示した棒グラフ
現金・預貯金等と有価証券で全体の4割強を占めます(令和6事務年度)。

指摘を受けやすいのは、被相続人の預貯金・生命保険・名義預金など。家族名義の預金や保険でも相続財産とみなされるケースがあるので要注意です。

国税庁が同資料で公表した事例には、相続開始前に被相続人の口座残高が基礎控除以下になるよう相続人やその家族名義の口座へ預金を移し、税務署の照会文書にも「基礎控除以下」と回答して申告しなかったケースがあり、増差課税価格は約7億2千万円、追徴税額は約4億3千万円(重加算税あり)にのぼっています。

  • 父親の財産を相続したが基礎控除額の範囲内だったので申告しなかった。ところが後から有価証券があることがわかり、相続税の申告が必要になった。
  • 被相続人である祖父が孫名義の預金口座に積立をしていたが、実質的に祖父が管理していたため、相続財産として修正申告を求められた。
  • 被相続人の妻名義の株式を相続申告に入れなかったが、妻が自由に売買できない状況だったため相続財産とみなされた。

いずれも「名義が誰か」ではなく「実際に誰のお金で、誰が管理していたか」で判断されている点が共通しています。通帳・印鑑の保管場所、入出金の指示を誰がしていたかは、調査で必ず確認される部分です。

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3つの税目に共通する「指摘されやすい形」

税目は違っても、指摘の入り口はよく似ています。事前に自社の処理を当てはめて確認しておくと、調査の場で慌てずに説明できます。

共通点どういう状態か調査で見られるところ
線引きが判断に委ねられている課税・非課税、給与・福利厚生など、金額ではなく取引の性質で結論が変わるそう判断した根拠を、契約書や社内規程で説明できるか
形式的な書類だけで済ませている請求明細書だけを保存している、稟議や規程がないまま運用している法令が求める記載事項を満たした書類が実際に残っているか
名義と実態がずれている家族名義の預金、外部への支払いに見える給与など資金の出どころと、実際に管理・指示していた人は誰か

税目をまたいで見られる論点は税務調査で指摘されやすいポイントに、申告書の作成段階で起きやすい誤りは確定申告でありがちなミスにまとめています。

制度は毎年のように改正されます。ここで取り上げた数値・要件は2026年9月時点のものです。

参考・出典

実際の判断にあたっては、国税庁の公式サイトや顧問税理士に最新の取扱いをご確認ください。