
クリニック・病院・医療法人・歯科医院は「公的な医療だから税務調査とは無縁」と思われがちですが、実際には対象になりやすい業種です。令和6事務年度(令和7年12月公表)の国税庁データでは、眼科医が1件当たりの申告漏れ所得金額3,894万円で全業種2位に入りました。
もっとも、過度に恐れる必要はありません。指摘が集中するのは自由診療の収入計上・共通経費の按分・概算経費特例(措置法26条)の要件という、事前に整えられる論点です。あわせて2026年(令和8年)10月1日からインボイスの経過措置が80%控除から70%控除へ切り替わります。
ドクターにも税務調査は入る
保険診療報酬を主体とする開業医・医療法人は、お金の流れが明確で税務調査とは無縁というイメージがあります。しかし実際には、調査の対象となりやすい職種の1つです。
以前から医業は「1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」に繰り返し登場してきました。平成24事務年度の国税庁統計では産婦人科医が1位、内科医が7位に入りました。
令和5事務年度(令和6年11月公表)では医業は上位10業種の圏外で、1位は経営コンサルタント(1件当たり申告漏れ所得3,871万円)でした。ところが直近の令和6事務年度では眼科医が前年20位圏外から一気に全業種2位(3,894万円)へ浮上しています。

同年度の1位はキャバクラ(4,164万円)、3位はホステス・ホスト(2,968万円)、4位は経営コンサルタント(2,734万円)でした。国税庁は業種ごとの背景を公表していないため、順位の理由を断定することはできません。
ただし規模感は押さえておきたいところです。眼科医の3,894万円は、所得税の実地調査(特別・一般)全体の1件当たり申告漏れ所得金額1,486万円の約2.6倍にあたります。眼科医の1件当たり追徴税額は964万円(全体は299万円)でした。
統計からみる開業医・医療法人の税務調査の変遷
国税庁が公開している統計によると、医業に対する調査は次のような推移をたどってきました。
- 平成16事務年度(2004年):整形外科が2位にランクイン
- 平成17事務年度(2005年):病院が1位にランクイン
- 平成23事務年度(2011年):整形外科が5位
- 平成24事務年度(2012年):産婦人科医が1位、内科医が7位
- 令和5事務年度(令和6年11月公表):医業は10位圏外。1位は経営コンサルタント(3,871万円)
- 令和6事務年度(令和7年12月公表):眼科医が全業種2位(3,894万円・追徴964万円)
医業は一定の周期でランキング上位に登場するパターンが続いています。加えて注目したいのが、調査全体の規模と手法の変化です。
令和6事務年度は選定にAIを活用するなどした結果、所得税の「調査等」による追徴税額の総額が1,431億円と過去最高になりました(国税庁公表文)。申告内容の不備が以前より発見されやすくなっています。
内訳を見ると、実地調査は4万7千件でほぼ横ばいの一方、税務署へ来署を依頼したり文書・電話で申告内容を是正する「簡易な接触」が68万9千件(前年比123.7%)へ急増しました。調査等の合計は73万6千件で、うち非違があったのは36万9千件です。
つまり「調査官が院内に来る」形だけが税務調査ではないということです。文書や電話での問い合わせも、申告内容の是正につながる正式な接触として集計されています。
開業医・医療法人に税務調査が入る頻度
開業医・医療法人に対する調査件数は公開されていませんが、おおむね数年〜10年に1度の周期で入るケースが多いとされています。所得税全体の実地調査率が1〜数%程度であることを踏まえると、入りやすい部類といえます。
また、過去の調査で申告漏れ等の指摘があった場合には、より高い確率かつ短い期間で次の調査が入るケースが想定されます。前回の調査で指摘を受けている医院は、税理士と事前に相談しておくことが大切です。
高所得であること自体も関係します。国税庁は有価証券・不動産の大口所有者や経常的な所得が特に高額な個人を「富裕層」として積極的に調査しており、令和6事務年度の富裕層に対する調査の1件当たり追徴税額は855万円(実地調査全体の299万円の2.9倍)でした。どの業種が調査されやすいかは税務調査が入りやすい業種は?法人・個人別の最新データでも整理しています。
開業医・医療法人はなぜ狙われるのか
保険診療報酬が主な開業医・医療法人は、比較的お金の流れがわかりやすい業種です。一方で、以下のような項目が申告漏れとして指摘されやすい傾向があります。
自由診療・保険外収入の申告漏れ
健康診断・美容治療・予防接種・人間ドックなどの自由診療は保険外収入となるため、保険診療報酬とは管理体系が異なります。現金での受け取りが多くなりやすく、申告漏れが発生しやすい項目として注目されています。
国税庁の記載要領では、一般の自由診療収入に加えて室料差額収入、人間ドックや生命保険会社との契約による診断料、母子保健法に基づく検診料、介護保険法に基づく主治医意見書作成料なども自由診療の収入等に含めて整理することとされています。
窓口収入の「未収分」
見落としやすいのが窓口収入です。社会保険診療報酬のうち患者から窓口で収入すべき金額については、その全部または一部が未収でも、また受け取らないこととした場合でも、「収入すべき金額」として収入金額に含めて記載することとされています。
「実際に入金がなかったから計上しない」という処理は、収入計上もれとして指摘される典型例です。
学会費・交際費の取り扱い
学会への参加や研究活動が多い医師・歯科医師は、交際費・旅費の取り扱いが指摘の多い箇所です。事業に関わる飲食費等については「誰と・何のために行ったか」を領収書等に記録しておくことが重要です。個人的な旅行や会食との区別が曖昧だと、調査で否認されるケースがあります。
医療器具・サプリメント等の物販(OTC)
院内で医療器具やサプリメントの物販を行っている場合も、計上もれに注意が必要です。物販収入は診療報酬とは別の売上として、適切に計上する必要があります。
ここで押さえておきたいのが区分です。国税庁の記載要領では、治療器具等の販売収入・医薬品の仕入れリベート・自動販売機等の手数料・貸与寝具やテレビの使用料などは「雑収入」とされ、後述する7,000万円判定の「医業及び歯科医業から生ずる収入金額」には含まれません。計上は必要ですが、判定の分母は別という理解が必要です。
個人的な費用の経費計上
課税所得が高い開業医・医療法人では、個人的な費用(旅行・衣服・自宅関連費用など)を事業経費に計上してしまうケースが見受けられます。「業務に必要である」ことを合理的に説明できる記録・証拠を残しておくことが大切です。
医師特有の「概算経費の特例(措置法26条)」と調査官が見る3点
医療機関の税務調査を理解するうえで欠かせないのが、医師・歯科医師にだけ認められた概算経費の特例です。個人の開業医は租税特別措置法第26条、医療法人は同法第67条により、実際にかかった経費の額にかかわらず、社会保険診療報酬について一定の計算による「概算経費」を必要経費とすることができます。
適用できるのは、その年の社会保険診療報酬が5,000万円以下、かつ医業・歯科医業から生ずる収入金額が7,000万円以下の場合です(国税庁「所得税青色申告決算書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》記載要領」)。いずれか一方でも超えると適用できません。
概算経費率は社会保険診療報酬の額に応じて段階的に定められており、金額区分ごとに率と加算額が変わります。自院がどの区分に当たるかと、実額計算との有利・不利は年ごとに変わるため、区分と適用の判断は税理士に確認してください。
この特例があるため、税務調査官は次の3点を重点的に確認します。
- 社会保険診療報酬が5,000万円ラインを正しく区分できているか(患者の窓口負担分も社会保険診療報酬に含めて判定します)
- 自由診療も含めた「医業及び歯科医業から生ずる収入金額」が7,000万円を超えていないか(前述のとおり雑収入は含めません)
- 保険診療と自由診療で共通してかかる経費の按分が合理的か(概算経費の対象は社会保険診療に対応する経費のみで、自由診療分は実額計算が必要です)
自由診療割合の「調整率」は診療科で違う
共通経費の按分では、診療実日数または収入金額を用いて自由診療割合を算出します。ここで見落とされやすいのが調整率です。
同じ原価で診療しても一般に自由診療のほうが単価が高いため、収入割合を用いる場合は、収入割合に次の調整率を乗じて自由診療割合を算出することとされています。
| 診療科 | 調整率 | 備考 |
|---|---|---|
| 眼科・外科・整形外科 | 80% | 自由診療の単価が高い科目 |
| 産婦人科・歯科 | 75% | 同上 |
| 上記以外(美容整形を除く) | 85% | 美容整形は対象外 |
自由診療割合は小数点以下第3位まで算出し、第3位を四捨五入します。調整率を掛け忘れると按分が過大または過小になり、そのまま否認の入口になります。
なお、自由診療分と社会保険診療分に明確に区分できる経費の例として、国税庁は事業税(自由診療分)、第三者に委託したレセプト請求費用(社会保険診療分)、未収金を個別管理している場合の貸倒損失等を挙げています。まず区分できるものを分け、残りを按分するのが順序です。
申告書の「書き方」も確認されます
措置法26条を適用するときは、申告書側の手当ても必要です。付表《医師及び歯科医師用》を決算書とともに添付し、算出した措置法差額を決算書「損益計算書」の所得金額欄の下の余白に「措置法差額○○○円」と記載します。
あわせて申告書第二表の「特例適用条文等」欄に「措法26」と記載します。さらに、青色申告特別控除額の計算の基礎となる事業所得の金額には社会保険診療につき支払を受けるべき金額に対応する金額が含まれないため、青色申告特別控除額の計算も通常とは異なる算式になります。
医療法人(措置法67条)の「総収入金額」の範囲
医療法人の場合、7,000万円判定の総収入金額は「経営する医業・歯科医業から生ずる収入の額」です。国税庁の通達では、次のものは含まれないと明示されています。
- 国庫補助金・補償金・保険金等の収入
- 固定資産または有価証券の譲渡による収入
- 受取利息・受取配当・固定資産の賃貸料などの営業外収益
- 貸与寝具・貸与テレビ・洗濯代等、電話使用料・自動販売機等の手数料
- マスク・歯ブラシ等の物品販売収入、医薬品の仕入割戻し
このうち使用薬品等の仕入割戻し(値引きを含む)は、社会保険診療報酬に係る所得の計算とは関係なく益金に算入します。また、医業者その他の団体の任意の契約に基づく社会保険類似の行為に対して支払を受けた金額には、措置法67条の適用はありません。
2026年10月に切り替わるインボイスの経過措置と医院の実務
医療機関の消費税は少し特殊です。社会保険診療は消費税が非課税のため、課税売上になるのは自由診療・健診の受託・物販・テナント賃貸などに限られます。
それでも、これらの課税売上について本則課税(一般課税)で消費税を申告している医院にとって、2026年(令和8年)10月1日からの経過措置の見直しは、仕入税額控除の額に直接はね返ります。
インボイス発行事業者以外の相手(免税事業者など)からの課税仕入れは、本来は仕入税額控除の対象になりません。急激な負担増を避けるため一定割合を控除できる経過措置が置かれており、令和8年度税制改正で適用期限が2年延長されたうえ、控除できる割合が見直されました。

| 期間 | 控除できる割合 | ポイント |
|---|---|---|
| 令和5年10月1日〜令和8年9月30日 | 80% | 現在適用されている割合 |
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 70% | 令和8年度税制改正で新設された段階 |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 50% | 2年間 |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 30% | 1年間 |
| 令和13年10月1日以後 | 0%(控除不可) | 経過措置は終了 |
改正前は令和8年10月から一気に50%へ下がる予定でしたが、70%という段階が設けられ、引き下げが緩やかになりました(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。
あわせて、同一の相手からの課税仕入れの合計額(税込)がその年または事業年度で1億円を超える場合、超えた部分にはこの経過措置を適用できません(改正前は10億円。令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用)。一般的な医院で問題になる金額ではありませんが、大型の医療法人では確認しておきたい点です。
医院の支払先で相手が免税事業者になりやすいのは、個人経営の歯科技工所、フリーランスの清掃・送迎スタッフ、個人で活動する講師やカメラマン、小規模な修繕業者などです。こうした取引が多い医院ほど、10月以降の負担増が読みにくくなります。まずは取引先ごとに登録の有無を洗い出し、影響額を試算しておきましょう。
税務調査で問われるのは「帳簿の記載」
経過措置を使うには、区分記載請求書等と同様の内容が記載された請求書等の保存に加えて、帳簿に「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を記載しておく必要があります。記載漏れは控除の否認に直結します。
ここで実務上のポイントがあります。国税庁のQ&Aでは、この「旨」の記載方法として「80%控除対象」のように率を書く方法、「免税事業者からの仕入れ」「免」と書く方法、「※」などの記号を付けて別途「※は80%控除対象」と凡例表示する方法が認められています。
したがって、率を書く方式にしている医院は、2026年10月以降の取引について「70%控除対象」へ直す必要があります。一方、率を含まない書き方にしていれば、割合が変わっても記載の直しは不要です。自院がどちらの方式かを、9月中に会計ソフトの税区分設定とあわせて確認しておくと安心です。
もう1点、受領した請求書等に「軽減対象資産の譲渡等である旨」や「税率ごとに合計した税込価額」の記載がない場合に限り、受領者が自ら追記して保存することが認められています。相手が免税事業者で請求書の書式が簡素なときは、この追記で要件を満たせます。
影響を受けない医院・売り手側の特例
免税事業者の医院や、簡易課税制度を選んでいる医院には、この経過措置の影響はありません(実際の仕入れから控除額を計算しないため)。また、税込1万円未満の課税仕入れについて帳簿の保存だけで控除できる「少額特例」は、令和11年9月30日までとされています。
売り手側も変わります。インボイス登録をきっかけに課税事業者になった事業者の「2割特例」は、令和8年9月30日が属する課税期間(個人事業者は令和8年分)までで終わります。
その後は、個人事業者に限り、令和9年分・令和10年分の申告で納付税額を売上税額の3割にできる「3割特例」が使えます。主な要件は、個人事業者であること・基準期間(適用年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること・インボイス発行事業者の登録を受けていることです。医療法人などの法人は対象外です。
あわせて簡易課税への円滑な移行措置も創設されました。2割特例・3割特例の適用を受けた翌課税期間に簡易課税を使いたい場合、通常は前課税期間の末日までに必要な届出書を、その課税期間の申告期限までに提出すればよいとされています。2割特例が終わる医院は、この選択肢も含めて検討してください。
税務調査に備えて何をすれば良いか
日頃の会計記録と申告内容の適切な管理が、最も効果的な対策です。特に意識しておきたいポイントを整理します。
- 保険診療と自由診療の収入を明確に区分して記録する(現金収入の日次管理を徹底し、窓口の未収分も「収入すべき金額」として計上する)
- 共通経費の按分根拠と調整率の適用を書面で残す(診療科ごとの調整率を掛けたうえで自由診療割合を算出する)
- 交際費・学会費・旅費の目的・参加者を記録する(日時・場所・出席者・目的をメモ)
- 個人的費用と業務費用の按分基準を明確にしておく(自宅兼院・車両など)
- インボイスの登録状況と帳簿記載を取引先ごとに点検する(2026年10月からの70%控除への切り替えに向けて、税区分設定と帳簿の表示方式を確認)
- 帳簿・領収書等の証拠書類を保存する(法人は原則7年、青色欠損金が生じた事業年度は10年。個人の青色申告は帳簿7年・書類は種類により5年または7年。偽りその他不正の行為が疑われる場合は最大7年さかのぼって調査されます)
とくに帳簿の提示は加算税にも影響します。令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについては、調査で帳簿の提示・提出を求められたのに応じなかった場合や、帳簿への売上金額の記載が本来の額の2分の1未満だった場合に、無申告加算税が10%加重されます(3分の2未満の場合は5%加重)。
準備する間もなく調査の連絡が来た場合には、税務調査に詳しい税理士へ早めに相談してください。医療法人を専門に扱う事務所の料金や対応範囲は人見貴行税理士事務所|医療法人専門の料金と税務調査への備えでも確認できます。
申告漏れを指摘されたときのペナルティ早見表
税務調査で申告漏れが認められた場合、不足していた本税に加えて、性質の異なる複数のペナルティが課される可能性があります。主な加算税・延滞税を整理すると次のとおりです。
| 種類 | 税率(本税に対して) | ポイント |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 原則10% (期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%) | 調査通知前に自主的に修正申告すれば不適用。調査通知後・更正予知前は5%(超過部分10%) |
| 無申告加算税 (調査後の期限後申告等) | 50万円までの部分15% 50万円超300万円までの部分20% 300万円超の部分30% | 令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの。事前通知前の自主的な期限後申告は5% |
| 重加算税 | 過少申告に代えて35% 無申告に代えて40% | 隠蔽・仮装があった場合。5年内に同じ税目で無申告加算税・重加算税を課されていると45%/50%へ加重 |
| 延滞税(令和8年) | 納期限の翌日から2か月以内は年2.8% 2か月経過後は年9.1% | 納付が遅れたことへの利息。割合は毎年改定される(令和7年は2.4%/8.7%) |
重加算税や延滞税が重なると、追徴税額は大きく膨らみます。延滞税の割合は市中金利に連動して毎年改定され、令和8年分は前年から引き上げられています。申告内容に不安がある場合は、早めに税理士へ相談してください。
よくある質問
Q. 税務調査の事前通知は、何日前に連絡が来ますか?
A. 法令に日数の定めはありません。国税庁は「調査開始日までに納税者が準備等をできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行う」としており、何日前かを一律に示すことは困難としています。実務上は1〜2週間前の連絡が多いとされますが、事案により異なります。
Q. 調査官から電話が来たら、日程を変更できますか?
A. できます。国税庁は、一時的な入院・親族の葬儀・業務上やむを得ない事情などのほか、理由が合理的と考えられれば変更を協議するとしています。申出は口頭で差し支えありません。ただし繰り返すと非協力とみられる場合があるため、顧問税理士と相談のうえ対応してください。
Q. 医療法人と個人の開業医で、調査の観点は変わりますか?
A. 収入計上もれ・経費の妥当性・自由診療の管理といった基本は共通ですが、法人には論点が加わります。医療法人では役員報酬や退職金の適正性、MS法人との取引価格の妥当性が確認されやすく、個人では家事費との按分や措置法26条の適用が論点になります。
Q. 概算経費の特例(措置法26条)は税務調査で否認されることがありますか?
A. 要件(社会保険診療報酬5,000万円以下かつ医業・歯科医業からの収入7,000万円以下)を満たし、収入区分と按分が適切であれば、基本的に否認されません。一方、収入が7,000万円を超えているのに適用していた、調整率を掛けずに按分していた、といったケースでは否認され追徴となる可能性があります。
Q. 保険診療しか行っていない医院でも、2026年10月のインボイスの変更に備える必要はありますか?
A. 課税売上がまったくなく免税事業者である医院、または簡易課税制度を選んでいる医院なら、控除割合の変更による直接の影響はありません。健診の受託・予防接種・物販・テナント賃貸などで課税売上があり本則課税で申告している医院は影響を受けます。まず自院の申告方法を確認してください。
まとめ
令和6事務年度のデータでは眼科医が1件当たり申告漏れ所得金額3,894万円で全業種2位に入り、医業の税務調査リスクは依然として高い水準にあります。同年度は所得税の調査等による追徴税額が1,431億円と過去最高で、選定にはAIが活用されています。
もっとも、指摘されやすい論点は絞られています。自由診療と保険診療の区分、窓口未収分を含む収入計上、共通経費の按分と診療科ごとの調整率、概算経費特例の5,000万円・7,000万円ライン。ここを毎月確認していれば、慌てる必要はありません。
直近では2026年10月1日からインボイスの経過措置が70%控除に切り替わります。本則課税の医院は、取引先の登録状況と帳簿の記載方式を9月中に点検しておきましょう。個人で2割特例を使ってきた方は、3割特例と簡易課税への移行措置もあわせて検討してください。
調査が入る基準や選ばれやすい特徴は税務調査が入る基準とは?選ばれやすい会社・個人の特徴と最新データで詳しく解説しています。
※本記事の統計は国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)、税率・制度はタックスアンサー No.2024・国税庁「延滞税の割合」にもとづき2026年9月に確認しました。税制は改正が多いため、適用の可否と最新の取扱いは国税庁サイトや顧問税理士にご確認ください。















