業種ごとの税務調査

保険代理店の税務調査

保険のイメージ画像今回は金融庁の免許が必要な保険会社(通称「メーカー」)ではなく、主に保険の販売を保険代理業の税務調査の傾向と対策についてお話しします。

保険代理業の業務は, 自己が代理人契約を結んでいる保険会社が開発した商品を、加入者の開拓し販売して、保険の各種サービスを提供することによって販売手数料を受取るものです。

会計税務上は売上が手数料収入だけで一見単純なようですが、扱う商品が多種にわたり、色々なキャンペーンもあり複雑化しています。

税務調査では、大きく4つが論点となりやすいです。

収益の計上時期と計上額

手数料収入の適正計上時期と適正額が調査されます。

収益計上時期は、保険代理店が保険契約者から保険契約書を受領し、これを保険会社に取り次いで、はじめて保険会社と被保険者、保険契約者との契約が成立することとなるわけです。つまり、

保険契約の開始日=保険契約が成立日=収益計上時

となります。

手数料収入の額は、大部分は集金した保険料から毎月精算入金されるため、収入の期問帰属は他の業種に比べて明確です。

保険手数料収入のもとになる保険料の受取日は, 保険会社の保険金支払義務の発生日となります。

保険会社の手数料明細に基づき, 預金通帳の入金を確かめ, 売上計上の網羅性と期間帰属の妥当性を確認します。

架空人件費

保険代理店は、小規模なものが多く、 手数料収入に占める人件費の割合が高くなります。そのため税務調査では組織図、履歴書、給与台帳、営業日報等により 人員の存在を確認し架空人件費の計上をチェックします。

紹介料・リベート

保険代理業で最も注意しなければならないのは紹介料・リベートです。

保険代理業では、保険加入の紹介者に対する謝礼を現金または金品等により行うことがあります。

現金支払いの場合には、厳しい反面調査が実施されて架空交際費・外注費とされる可能性があります。

また、個人に対する紹介料は原則として交際費となり、中小企業の800万円の定額控除を超える可能性があります。

定額控除を超えると、超えた紹介料は費用にすることができません。

ただし、相手が個人であっても以下の3つの条件を満たせば情報紹介料として費用にすることができます。

  1. 紹介料が予め締結された契約に基づき支払われたものであること
  2. 紹介料を受けるための条件が契約で具体的に明らかにされていること
  3. 紹介料の額が対価として相当な金額であること

この場合は、税務調査においては紹介者との契約書の有無と内容が重要なポイントとなってきます。

予め専門の税理士に契約書をチェックしておかれることをお勧めします。

また、保険料は保険会社の料率が定まっているので値引きは禁止されています。

しかし、現実には値引きや大口契約によるリベートの支払を要求される場合もあります。

代理店の発行する保険契約者への保険会社名の領収証は、値引きしていても正規の保険料が記載されており,相手方が申告をせずに裏リベートとなりやすく、 この点が重点的に税務調査されます。

リベートの相手先を明かせない場合には、使途秘匿金課税されないように、予め役員報酬の支払いの中から紹介料を払うことも方法の1つとなります。

地代家賃

保険代理業で発生する経費として大きいのは支払家賃です。比較的小規模な保険代理店は自宅を店舗にしているケースがあります。その場合には、事務所利用面積から家賃の金額が適正かどうか確認されます。

一般的には、自宅の見取図を基に事業として専属で使用する面積割合を求めた資料を準備しておくと税務調査はスムーズに行われます。

 

税務調査に強いおすすめ税理士事務所リスト【東京編】

 

 

飲食店・居酒屋の税務調査

経済産業省が発表した飲食関連産業の動向によると、全国の飲食店は約50万店あまりに存在し、店舗数が多いイメージのコンビニ、美容室・理容室と比較しても圧倒に多くの店舗数が存在しています。

従業員数でも見て、飲食業で勤務する方々は全国で360万人を越え、全就業者の5%が携わっている計算となります。

この数年でPayPayなど各種キャッシュレスが普及してきましたが、現金取引が多い業種でもあります。

 

日本全国の飲食店の店舗数

 

飲食店の半数近くで税務調査で問題は見つかる?

国税庁が発表した平成29事務年度 法人税等の調査事績の概要によると、飲食店の2店舗もしくは3店舗のうち1店舗の割合で不正が見つかっているとされています。

理由は様々あると思いますが、実態として税務調査の結果、不正が多いとされる業種となっています。不正認定された所得も1件当たり440~820万円と高額になっており、追徴課税などを含めると100万円単位の支出となることが想定されます。

税務調査で発見される不正割合の多い業種

 

飲食店の税務調査の流れ

一般的な税務調査は顧問弁護士経由で税務調査の連絡が入るケースが多いですが、事前連絡なしで「事前調査」や「現物確認調査」(現況調査)が行われるケースがあります。

これは調査上必要な場合は事前連絡せずに調査を行う権限を税務署が持っているためです。

飲食業は現金商売という性質上、売り上げを申告しないなどの悪質なケースもあり事前連絡せずに調査に入るケースも他の業種と比較すると多いようです。

事前調査

事前調査は店舗に客として調査官が来店し店舗の運営状況を確認するものです。店舗の外から客の入りなどの確認を行ったり、実際に店舗に客として来店し、座席数、回転数、客の入り具合、伝票の記載有無・レジの入力有無などを確認します。

また、自身が注文した料理や金額を記録し、後日の現実確認調査で店舗が保管する伝票と突合できる準備をしたりします。

現物確認調査(現況調査)

税務署の調査員が午前中に突然来店し、帳簿などの資料の閲覧を求めきます。突然、税務署の調査員がきたらパニックになってしまいそうですが、税理士の立ち合いが困難であったり、営業に支障がある場合には日を改めたい旨を伝えるなどの対応を行うほうがよいでしょう。

仮にこの時点で顧問税理士との契約がない場合には、「営業上の支障」などを理由に現実確認調査の日程調整をその場で依頼し、すぐに税務調査対応のための税理士選びを行うべきでしょう。

 

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どのくらいの期間・何年分(いつから)の調査が行われるか?

税務調査の期間は最大5年分が行われると考えてください。これは国税通則法第70条で、過去5年間の確定申告を更正対象であることを明示しているためです。

なお、税務調査の結果、脱税が認められた場合には調査期間は7年にまで遡ることとなっています。

また帳簿、領収書などの各種資料には7年間の保管義務があります。

国税通則法第70条

 

売上げごまかし・売上げ抜きはバレる?

事前調査で調査官が支払った伝票が保管されていなかった、同業種の他店舗と比較して売上原価率が高い、キャッシュレス決済比率が高い、おしぼり、割り箸の仕入れ数と売上伝票数が合わないなど、売上げをごまかしていることを発見する手段はいくらでもあるため、完全に隠すことは難しいでしょう。税務調査により是認(確定申告の内容に問題なし)と判断されるのは全体の10-20%程度といわれています。

レジなしの注意点/伝票

帳簿などの各種エビデンスは7年間の保管が義務付けられています。レジを利用していなく、紙伝票で処理をしている場合、その紙伝票自体を7年間保管する必要があるので、膨大な量となります。

税務調査の際に、「2018年7月の伝票を見せてください」といわれたら、売上伝票の金額と一致する紙伝票、1か月分をスムーズに提出しなければなりません。

いかに売上げを管理しているかという管理手法自体が調査されると考えましょう。

万が一に想定される追徴課税

税務調査の結果、提出していた確定申告書が否認、もしくは未申告であった場合の追徴課税としては下記の種類があります。

種類 内容 追徴過税額
過少申告加算税 修正申告を行った場合のペナルティ 10%もしくは15%
無申告加算税 確定申告の期限後に申告した場合のペナルティ 5%もしくは15%
重加算税 事実隠蔽、虚偽に対するペナルティ 35%もしくは40%
不納付加算税 源泉徴収による所得税の納付が期限までにされなかった場合のペナルティ 5%もしくは10%

上記以外にも、延滞税として年利8.9%(2020年現在)ものプラスされることとなります。修正申告の期間が長期間に渡ると、本来払うべき税額の200%以上も納付する必要があるというケースもでてくる計算です。

 

コロナ禍の各種補助金・給付金の税務処理

コロナ渦で飲食店向けには多くの補助金、給付金が導入されています。

家賃支援給付金、持続化給付金、休業要請に対する給付金(東京都感染拡大防止協力金)、持続化補助金、雇用調整助成金などいずれも課税対象となります。

家賃支援給付金

 

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サラリーマンにも税務調査は入る?

お勤めの方は会社が毎月のお給料から所得税・住民税を源泉徴収し納めているので確定申告の必要はありません。住宅ローン控除の手続きが必要なマイホーム購入や相続など特別な事がない限りサラリーマンが税務調査の対象となる事は基本的にはありません。

 

それでは法人・個人事業主ではないサラリーマンは税務調査と無縁なのでしょうか?実はサラリーマンや主婦の方も税務調査の対象となる場合があります。

更に近年は税務調査が入るサラリーマンが急増しています。

 

サラリーマンは『副業』で調査が入る

サラリーマンに税務調査の入る大きな要因は『副業・サブビジネス』です。

 

2018年1月に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表した事で大手企業やベンチャー企業では副業が公に解禁となりサブビジネスを始めるサラリーマンが増え、スキルを活かして始めた副業が申告の対象となっている場合があります。

 

株式会社リクルートキャリアが副業・兼業を認めている企業に行った「兼業・副業に対する個人の意識調査(2019)」によると約4割の従業員が副業・兼業を行っている又は行ったことがあると回答している事から副業の浸透と共に税務調査の対象となるサラリーマンは今後も増加しいく事が予想されます。

サラリーマンの副業経験

 

仮想通貨やネットオークションも申告が必要

近年は『副業(収入)』の認識がないまま(あるいは意識的に)収入を得ており無申告となっているケースが増加しています。1つは仮想通貨の売買による利益、社会問題にもなったビットコインを皮切りに様々な仮想通貨が流通しておりサラリーマンのみならず主婦や学生まで多額の利益を得たケースも多く確認されています。

2つめはネットオークションで家具や洋服などを販売した収益です。こちらは1回毎の取引による利益は少ない場合が多いですが日常的に出品している場合や引越しなどにより一度に大量の取引を行った場合には総額がふくらみ確定申告の対象となる場合があります。

 

副業で申告が必要になる条件は?いくらから?

サラリーマンの副業で申告が必要となる条件は副業の種類により異なります。

 

副業の種類がパート・アルバイトの場合

1月1日から12月31日までの期間の『収入』が20万円以上になる場合は確定申告が必要。

 

副業の種類が仮想通貨・ネットオークション等の場合

1月1日から12月31日までの期間の『所得』が20万円以上になる場合は確定申告が必要。

※所得は売上、売却益から仕入れ原価、経費等を差し引いた金額となります。

 

副業の無申告。なぜバレる!?

副業で得た収入を得たが申告を行わなかった場合、どのようにして税務署にばれてしまうのでしょうか?代表的なものを挙げてみました。

 

  • 副業収入の支払先から税務署に提出された支払調書により発覚
  • 取引先や仮想通貨取引所などに調査が入り芋づる式に発覚
  • 給与収入の金額に対して不釣り合いな金額の家や車を購入し発覚
  • 税務署へ第三者が情報提供(タレコミ)され発覚
  • サイバー税務署(情報技術専門官)により取引が発覚

 

 

上記5つのポイントが主に税務署にばれてしまう原因となる様です。「心当たりはあるが税務署から連絡は来ていないから私はセーフ」と思われた方もご注意ください。

税務調査は申告を行わなかった直後の年度に来るわけではありません。

 

追徴課税は最大7年に遡って請求できるため3~5年経ってから突然電話がくる!というケースが多い様です。

 

実は怖い副業のネットビジネスの無申告

2019年11月に国税庁が発表した「平成30事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によるとインターネット取引を行っている個人に対する調査状では2,127件の調査が行われた内1,850件に申告漏れ等が発見されています。

さらに1件当たりの追徴税額は274万円と決して少ない金額ではありません。

インターネット取引を行っている個人への税務調査

 

申告をしていなかった。という方はまずは税理士に相談してください。すでに確定申告についての連絡、税務調査の連絡が来てしまったという場合は税務調査専門の税理士に相談することをおすすめします。

 

 

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建設業・土木工事業の税務調査 頻度や指摘されるポイントは!?

建設業・土木工事業の税務調査、入る頻度や確率は?

建設業は飲食業と並んで税務調査の入りやすい業種といえます。国税庁が発表している平成29年度法人税等の調査事績の概要では不正割合の高い10業種中3業種が建設・土木関係の業種になります

税務調査で発見された不正所得金額も上位10業種総額の1/3を占めており、毎年の税務調査で上位に上る業種となっています。

そのため、税務調査が入る頻度も一般の業種よりも高く5年から10年の期間で調査が入るケースが多いようです。

取引先や元受け、下請けに調査が入ることにより芋づる式に調査が広がっていく事があるのも建設業、土木業の特徴です。

業界の特徴として一人親方や家族経営が多くどんぶり勘定の会計処理を行っているケースが多いため税務調査により多くの不正所得を指摘され加算税が高額になるケースが多いようです。

 

なぜ建設業・土木工事業は税務調査が多いのか?

建設業・土木工事業は業界全体で申告漏れや過少申告等の不正が多いため、毎年税務調査の対象になりやすい傾向があります。

特に指摘されるポイントとして下記の3点が挙げられます。

  1. 期ズレによる売上計上漏れ
  2. 受注謝礼金(キックバック)の支払いと交際費
  3. 人件費の現金支給や架空人件費

また、設立から5年程経過して売上が伸びている会社も対象となりやすいので売り上げを伸ばすだけでなく正確な会計が行えているかを事前に確認する事が重要となります。

 

建設業の売上の期ズレは税務調査でどうなる?

建設業・土木業は売上の繰り延べ(期ズレ)の指摘が非常に多い業界と言われています。

理由としては意図的に売上を来期に先延ばしをしようとする他、発注元の都合などにより成果物(建物や施工の完了)の引渡しから代価(工事代金)の請求・支払いまでに期間が空く事が多く計上が煩雑になりやすい事が挙げられます。特に期末直前に完了した工事で請求が翌期となった場合には請求時期ベースで翌期の売上に計上しがちですが、工事の完了が当期中の場合には当期に計上する必要があります。

意図していなかった場合でも加算税の対象となってしまう場合があるので、「引渡しが完了した時点で計上」の会計ルールにのっとり処理することが望ましいです。

建設業・土木工事業の売上げズレ、繰越

 

建設業・土木工業界の常識、受注謝礼金(キックバック)は?

建設業・土木工事業は他業種にはない諸経費が掛かる業種です。工事受注にあたって発注元に支払う謝礼金や地元有権者に工事遂行の仲立ちを依頼するための地元対策費。談合で受注のために入札順の調整を図った場合に暗黙のルールとして支払う「降り賃」など多岐にわたります。

これらの費用を「交際費」として支払うことは税法上問題になるケースはあまりありません。

しかし交際費では一定額以上が経費とならないため「業務委託費」「支払手数料」の科目で経費として処理し調査の際に「科目仮装や「使途秘匿の指摘を受け重加算税が課されるケースが多い。

税務調査官として指摘のしやすいポイントであり決して業界内で言われる「バレない方法」ではないためご注意いただきたい。

 

現金支給に注意!架空人件費はアウト!

建設業・土木業は人の出入りも激しく日払い雇用や現金支給も珍しくない業界です。

特に一人親方の場合は現金支給で作業員を雇うケースが少なくありません。この際に振込であれば問題ないのですが現金支給かつ支払を証明できる領収書等がない場合には税務調査が入った際に外注費として支払った事を立証できないため不利な判断となります。

日払い雇用であっても振込で対応するか領収書をきちんと保管しておくなど、備えを怠らない事が重要になってきます。

また過去に在籍していた従業員に給与を支払ったように見せかけ、実際の賃金は交際費等にあてる架空人件費。実務に従事している従業員を外注先の扱いにする事で賃金を「給与」でなく「外注費」として支払い源泉所得税や消費税を減らすスキームも建設業・土木業ではまだ多く見受けられます。

こうした点も税務調査ではチェックの対象となり悪質と判断される事もあるため、安易に架空人件費や架空外注を行うと経営に大きな打撃を与えることになります。思い当たる節がある場合には税務調査対策に強い税理士などに相談し修正申告などの対策を講じる事でダメージを最小限にできる場合があります。

 

 

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寺院・神社・宗教法人の税務調査

寺院・神社・宗教法人などは非課税であるため、税務調査の対象外というイメージを持つ方が多いですが、実態はどうなのでしょうか?

本ページでは寺院・神社・宗教法人の税務調査についてまとめてみました。

 

そもそも寺社仏閣は税務調査の対象になるの?

寺院をはじめとした宗教法人=非課税(収益事業がない場合)のイメージが強いため納税がないのだから税務調査の対象外では?と思いがちですが寺院・神社・宗教法人も税務調査の対象となります。

 

寺院仏閣に対する税務調査の件数と傾向

国税庁の発表している「平成27事務年度における公益法人等の調査事績」によると、宗教法人を含めた公益法人への税務調査は平成30年で429件、平成26年の868件と比べると5年間で約1/2に減少している。

申告義務のある公益法人数35,109件から計算すると税務調査の入る確率は約1.2%、約80年に1度の頻度という事になる。

寺院・神社・宗教法人の税務調査の件数

 

寺社仏閣 税務調査で見られるポイント

寺院・神社・宗教法人が税務調査でチェックされるポイントは大きく2つあります

1. 源泉所得税
2. 宗教活動か収益事業か

 

指摘の多い 源泉所得税

布施、奉納金、会費、献金、賽銭、寄附金、雑収入等は全て宗教法人の収入として課税の対象とならない収入になります。しかし住職や宮司、職員に支払う給与や退職金は源泉所得税の対象となりますので、宗教法人は源泉徴収義務者として源泉所得税を納付する必要があります。また、税理士などに支払った報酬等に対しても同様の義務が発生します。

 

◎支払以外に源泉徴収の対象となるケース例

●個人(住職・弟子・職員)の飲食代や生活費等を宗教法人として負担した場合は負担額が給与と同等に取り扱われ源泉徴収の対象となります。

●弟子の学費を負担した場合は負担額が給与と同等に取り扱われ源泉徴収の対象となります。

 

高額になりやすい 収益事業の申告漏れ

寺院・神社・宗教法人では課税対象となる収益事業が下記の通り分類されています。

寺院・神社・宗教法人の収益事業

 

〇線引きの難しい物販販売業
物販全般が課税対象になるのではなくお守りやお札、おみくじなど喜捨金と認められるものは収益事業の対象に該当しません。

絵葉書や御朱印帳、キーホルダーなど通常販売されているものと大きな価格差なく販売されているものは物販販売業に該当し課税対象となります。

〇価格を通常より高く設定すれば喜捨金?
2008年にとある宗教法人が「御利益のある水」0.9リットルを3,800円で販売し非課税対象として処理いていたが、国税局より収益事業に該当すると指摘を受けました。
「御利益」を主張すれば課税対象でなくなる訳ではないので注意が必要です。

 

過去には“あのお寺“も申告漏れの指摘を

2011年2月に京都の観光地として3本の指に入る金閣寺(鹿苑寺)、銀閣寺(慈照寺)を管理する住職が掛軸を書いて得た収入を宗教法人に対するお布施として処理し個人所得としなかった事から3年間で2億円の申告漏れの指摘を受けています。

 

税務調査 過去帳の開示には応じなければいけない?

寺院・神社・宗教法人の税務調査では宗教法人としての非課税収入(布施、奉納金、会費、献金、賽銭、寄附金等)がきちんと計上されているかを重点的にチェックされます。
その過程で故人の逝去日から葬儀日を逆算し布施や奉納金が反映されているかを知るために調査官から過去帳の提出を求められる事があります。

その際に過去帳を提出しなければいけない法的根拠はありません。しかし、実際にはその場の空気に圧され資料として提出してしまうケースが多いようです。
逆に意固地に拒んでも「何か隠しているな」と疑われてしまいます。

過去帳は故人やその親族の個人情報、寺社仏閣への信頼の証である事から提出を拒む方も多くいます。おすすめできる選択としては提出を求められた際はその場では応じず税務調査の対応に精通した税理士に相談し税務調査官との交渉を依頼する事が良いでしょう。

自営業/個人事業主/フリーランスの税務調査

中小企業白書によると自営業/個人事業主/フリーランスは全国に約200万人いるとされています。

全国の勤労者は5,500万人とされており、100人に4名程度が自営業/個人事業主/フリーランスとして働いている計算です。

自営業/個人事業主/フリーランスでは全体の半数以上の方が雇用者なしで事業をされており、税務調査とは無縁だと思われている方も多いと思います。

しかし、自営業/個人事業主/フリーランスだからと言って、税務調査が無いわけではありません。税務署が追加で税金を取れると判断すれば税務調査の依頼がくると考えたほうがいいでしょう。

本ページでは自営業/個人事業主/フリーランスの方に向けた税務調査の情報をまとめています。

個人事業主の人数

 

 

青色・白色申告について

自営業/個人事業主/フリーランスの方が確定申告をする場合には青色申告もしくは白色申告をする必要があります。それぞれのメリット・デメリットがあるので、比較表で違いを確認してみましょう。

青色申告 白色申告
申請手続き 事業開始後2ヶ月以内に税務署に申請をする必要がある 不要
記帳 複式簿記で帳簿を揃える必要がある 現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳
メリット ・青色特別控除(65万円)が活用できる
・専従者の給料の全額は経費として計上できる
・赤字の繰越ができる
複式簿記の知識無く確定申告が可能
デメリット 複式簿記の知識が必要(税理士への依頼が無難) ・青色特別控除(65万円)がない
・専従者の給料の全額は経費として計上できない
・赤字の繰越ができない

 

白色申告の推定課税に要注意!

推定課税は売上、所得、経費などの詳細が分からない場合に「近隣の同規模同業者の差益率(仕入金額に対する収入金額の比率)」や、「水道光熱費やその他事業に必要な経費の金額」から売上、所得は推定し課税することをいい、帳簿の信憑性、保管状態が悪い場合に、税務署が税額の計算を推定で行うことをいい、白色申告の必要帳簿が青色申告と比較すると簡易的なものであるが故に発生するリスクとなります。

自営業/個人事業主/フリーランスを長期間続ける場合には青色申告に向かっていったほうがメリットがあると言って良いでしょう。

 

 

売上900万円前後は要注意

売上900万円前後の自営業/個人事業主/フリーランスは税務調査に注意が必要といわれています。これは消費税の納税義務が売上1,000万円以上となっているからです。1,000万円以下であれば免税事業者となり売上げの中に含まれている預かっている消費税が丸々利益になることになります(正確には経費に課税されている消費税分は支払いをすることになります)

このため売上900万円が何年も続いている場合、税務署から見ると売上げをごまかしていないかと懸念を持つのも仕方ないのかもしれません。

 

何年分(いつから)の調査が行われるか?

税務調査は過去3年分の調査が行われます。この3年の調査で確定申告の無いように大きな間違いが見つかると5年に、さらに金額の大きな申告ミス、脱税などが発覚すると7年まで遡って税務調査が行われます。

国税通則法の第70条によると、すべての税金について税務調査で遡及できる年数は5年と定められており、よっぽど悪質でないと7年の調査が行われることは稀です。

税務調査を行う税務署の署員も追徴課税という「成果」を得るために税務調査を行っていますので、意味が無く5年、7年と調査範囲を広げることはありません。

 

自営業/個人事業主/フリーランスの税務調査の実態

個人宅の調査は行われるか

自宅兼事務所でお仕事をされている場合などさまざまなケースがあると思われますが、税務署が必要と判断する重要な嫌疑が無い限り、プライベートスペースである個人宅への調査はないでしょう。しかし、事務所として100%の経費計上をしている場所で生活をしていればそれは税務上の業務スペースとなるので立ち入りとなる可能性は極めて高いでしょう

万が一に想定される追徴課税

税務調査の結果、確定申告の無いように問題がなければ「是認」となるわけですが、これは極めて稀で多くの場合には追徴課税が発生します。売上げや確定申告の内容により追徴課税の金額は変わってきますが、申告漏れ所得税の平均額は約810万円、追徴課税額の平均額は約206万円とされています。えっ、そんなに?と思われるかもしれませんが、これはさまざまな業種(医師などの高額所得者を含む)を含んだものであることを強調しておきたいと思います。

なお、修正申告が必要となった場合には延滞税が必要でありその年率は8.9%にもなります。仮に5年前の確定申告について延滞税が付けばそれだけで納税額が1.5倍にもなってしまいます。

 

個人口座・通帳はどこまで提出する必要があるか・調査されるか

特に事業用と個人用とをごっちゃとしている場合には確実に提出を求められると考えてよいでしょう。完全に分けている場合には提出する必要はありません。

 

顧問税理士がついていないの税務調査に入られやすい?

結論から言うと顧問税理士の契約がないことは税務調査に入られやすい1つの要因と考えてよいでしょう。税務署の署員も税務調査で追徴課税という成果を上げることを目的としていますので、税理士が付いていない個人事業主の方が突っ込みどころがあると考えます。

事業規模が大きいなど税務調査の影響範囲が大きい場合には、実際に税務調査の依頼が税務署からあった後からでも遅くなりません税理士に立会いなどの依頼したほうがよいでしょう。

 

税務調査に強い税理士の比較表はこちら

 

個人事業主・自営業のイメージ画像

クリニック・病院・医療法人・歯科医院・開業医の税務調査

クリニック・病院・医療法人・歯科医院・開業医と聞くと公的なビジネスの側面が強いので、税務調査と無縁というイメージもありますが、税務調査に入られることはあるのでしょうか?

 

ドクターにも税務調査は入る?

保険診療報酬を主体としている開業医・医療法人は税務調査と無縁なイメージがありますが、実は調査の対象となりやすい職種の1つにあたります。

国税庁が公開している「平成24年度 所得税及び消費税調査等の状況について」では「1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」では上位常連のキャバクラ、風俗を押さえ「産婦人科医」が1位、7位に「内科医」となっています。

同じ業種から2種がランク入りするという事は非常に大きなウエイトを占めている事になります。

なお同年の産婦人科医の一件あたりの追徴税額は1,300万円とかなりの高額となっています。近年は上位10業種入りまではしていませんが、常連職種として税務調査のターゲットとなる確率は依然としてかなり高い業種といえます。

確定申告の所得申告漏れが多い業種ランキング

引用;国税庁 平成24事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について
https://www.nta.go.jp/about/organization/kantoshinetsu/release/data/h25/shotoku_shohi_jokyo/index.htm

 

統計からみる開業医・医療法人の税務調査

国税庁が公開している統計から2004年に整形外科(2位)、2005年に病院(1位)が税務調査の主対象となっており、近年では2011年に整形外科(5位)、2012年に産婦人科医(1位)、内科医(7位)が入っています。
このことから医業に対する税務調査は7年前後の周期で集中的に行われている事が予測されます。
7年間とは最大7年遡って追徴できる重加算税の期間と同様である事から、最も効率よく課税ができる周期であるほか、2年続けて医業に集中している傾向から税務署内で調査官の医業対策の税務知識を高めたうえで行っていることも予想されます。

2018年に行われた税務調査では開業医・医療法人は主対象となってはいませんでした。
そのため2019年から2020年に医業を対象とした税務調査が増加する可能性があります。

 

開業医・医療法人に税務調査が入る頻度は?

開業医・医療法人に対する調査件数は公開されていませんが、7~10年に1度の確率で入るケースが多いようです。
全体の税務調査がはいる確率(実調率)が3%である事を考えると、入りやすい部類であることがわかります。
また、過去に税務調査で申告漏れ等の指摘があった場合には、より高い確率かつ短い期間で税務調査が入るケースが想定されます。
前回の調査で指摘を受けている開業医・医療法人は次回の調査に早期に備えるため税理士と相談しておく方がよいでしょう。

 

開業医・医療法人はなぜ狙われるのか?

保険診療報酬が主な開業医・医療法人は比較的お金の流れのわかりやすい業種です。申告漏れもあまり多くはないと思われます。
見られやすいポイントとしては自由診療にあたるものが指摘されやすい傾向があります。具体的には健康診断、美容治療、予防接種などが挙げられます。
また、医療器具やサプリメントの物販(OTC)を行っている場合も申告漏れに注意が必要です。
また、学会等への参加が多い医業では交際費の取り扱いも指摘の多い箇所となってきます。
事業に関わる飲食費等については「誰と」「なんのために」行ったものなのかを領収書等に記録しておくなど対策が必要と言えます。

医療法人はもちろん、開業医も一般の個人事業主と比較して課税所得が高い場合が多い反面、税務会計への意識が高い方が少ないため税務調査官からすれば定期的に高額の申告漏が発生する絶好のターゲットでもあります。

日頃の会計を適切に行う事が最も効果的ではありますが、準備する間もなく税務調査が入ってしまった場合には税務調査専門の税理士に相談し対策を立てることが懸命といえるでしょう。