税務調査が入りやすい時期はいつ?秋がピークの理由と頻度・確率

秋の税務調査シーズンに備えて帳簿と資料を整理する事業者のイメージ

いつ頃に税務調査が入りやすいのか、確率の高い時期とその理由について、税務署の年間スケジュールをふまえて解説します。「そろそろ来るかもしれない」と不安な方が、落ち着いて備えられるよう整理しました。

税務調査が入りやすいのは秋(9~11月)がピーク

「税務調査が入る時期があらかじめわかっていれば準備しやすいのに」と考える方は多いと思います。残念ながら、いつ調査を行うかは法律で決められているわけではなく、税務署の判断で一年を通じて実施されます。

とはいえ、実務の現場では毎年9月~11月が税務調査のピークと言われています。これは税務署側の一年の業務サイクルと深く関係しています。順を追って見ていきましょう。

税務署の年間スケジュールから見る調査の時期

税務署の繁忙期を知ると、調査が秋に集中する理由が見えてきます。なお、税務署(国税庁)の事務年度は7月1日から翌年6月30日までで、一般の会計年度(4月~3月)とずれている点も押さえておくとわかりやすいです。国税庁が毎年公表する調査事績も「令和6事務年度=2024年7月~2025年6月」という区切りで集計されています。

1月~3月:確定申告シーズンで多忙

2月16日~3月15日は個人事業主の所得税の確定申告期間です。e-Taxや還付申告は1月から受け付けているため、年明けから前半にかけて税務署は申告対応で慌ただしくなります。この時期にわざわざ調査に動くことは少なく、確率的には低いと考えてよいでしょう。

5月~6月:法人の決算事務でもっとも多忙

個人の確定申告・所得税納付が一段落すると、次は企業の決算が控えています。多くの企業が3月を会計年度末にしているため、その申告期限(原則として事業年度終了後2か月以内=5月末)に向け、税務署は5月~6月に決算処理が集中し、年間で最も忙しくなります。総力を挙げて事務に当たる時期のため、新たに調査へ動くことは考えにくい期間です。

7月:人事異動でいったん落ち着く

企業の決算対応のピークが過ぎると、税務署は6月末に事務年度末を迎え、7月に定期人事異動が行われます。新体制に切り替わり組織が落ち着くまでは、本格的な調査は始まりにくい時期です。

8月~11月:調査が本格化しピークへ

お盆休みが明けて新しい事務年度の体制が整う8月下旬ごろから、税務調査が徐々に動き出します。そして9月から年末に向かう11月ごろまでがピークになる、というわけです。調査の事前通知(電話連絡)はおおむね実施日の1~2週間前に入ることが多いため、対策や帳簿の整理をしておきたい場合は、秋を迎える前に片付けておくと安心です。

逆に、9月~11月ごろに税務署から何の連絡もなければ、その年は調査が入らずに済む可能性が高いとも言えます。ただし、これはあくまで「入りやすい時期の傾向」であり、年末以降や年明けに調査が行われるケースもゼロではありません。「この時期を過ぎれば絶対に来ない」と断定はできない点には注意してください。

税務調査の頻度・確率はどのくらい?

そもそも税務調査は、毎年すべての事業者に入るものではありません。国税庁が公表した令和6事務年度(2024年7月~2025年6月)の調査事績によると、実際に調査官が事業所などへ出向く「実地調査」の件数は次のとおりです。

区分実地調査の件数(令和6事務年度)頻度のイメージ
法人(法人税・消費税)5万4千件(前年度比▲7.4%)申告法人数に対して単純計算するとおおむね2%弱=数十年に1回程度
個人(所得税)4万7千件(同▲1.3%)申告人員に対して単純計算すると1%前後=さらに低い水準

※件数は国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(いずれも令和7年12月公表)によります。「頻度のイメージ」は公表件数から単純計算したおおよその目安であり、国税庁が公表している確定値ではありません。

実地調査の件数自体は、近年おおむね減少傾向で推移しています。ただし、これは「調査が甘くなった」という意味ではありません。同じ令和6事務年度の法人調査では、追徴税額(法人税・消費税)の総額が3,407億円と直近10年で最も高く、調査1件あたりの追徴税額も634万円と高い水準になりました。件数を絞り込み、必要度の高い先に狙いを定める傾向が数字にはっきり表れています。

「実地調査」以外の接触のほうがはるかに多い

もう一つ押さえておきたいのが、税務署からの接触は臨場する実地調査だけではないという点です。国税庁は、文書や電話による連絡・税務署への来署依頼で申告内容の見直しを促す「簡易な接触」も並行して行っています。

令和6事務年度の個人(所得税)では、実地調査が4万7千件だったのに対し、簡易な接触は68万9千件にのぼり、両者を合わせた「調査等」の合計は73万6千件でした(前事務年度は60万5千件)。つまり、「調査官が来る確率」は低くても、「税務署から何らかの連絡が来る確率」はそれより格段に高いということです。

実地調査4.7万件に対し簡易な接触が68.9万件と大幅に多いことを示す棒グラフ
調査官が臨場する実地調査より、文書・電話などによる「簡易な接触」のほうがはるかに多い(令和6事務年度=2024年7月〜2025年6月)

お尋ね文書や電話連絡が来ること自体は珍しいことではありません。慌てず、指摘された箇所の事実関係と資料を確認したうえで回答することが大切です。

なお、実際の調査対象は無作為に選ばれるわけではなく、申告内容や取引状況からリスクが高いと判断された先が優先されます。過去の調査で大きな指摘を受けた場合は最短3年程度の間隔で再び調査が入ることもあれば、特に問題がなければ5年~10年来ないことも珍しくありません。最新の件数・内訳は、国税庁が毎年公表する調査事績の資料でご確認ください。

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調査対象に選ばれやすい企業・個人の特徴

税務調査を実際に行うのは所轄の税務署で、申告状況や各種資料情報をもとに調査対象を選定しています。次のような特徴に当てはまるほど、調査対象になりやすい傾向があります。

  • 黒字が続いている:赤字企業に調査をしても追徴税額を回収しにくいため、利益が出ている先のほうが優先されやすい傾向があります(赤字でも対象にならないわけではありません)。
  • 売上や利益が急に伸びている:利益確保のために売上の計上漏れなどが起きやすいと見られ、確認の対象になりやすくなります。
  • 経費や利益率に大きな変動がある:退職金や貸倒れなど非経常的な経費が急増し、利益が不自然に少なく見えるケースはチェックされやすくなります。
  • 現金商売・申告漏れや無申告の懸念がある:取引の実態が把握しづらい業種や、申告内容に不審点がある先は注意が必要です。無申告法人への調査は近年強化されています。

こうした特徴に複数当てはまるほど、調査対象に選ばれる可能性は高まると考えておくとよいでしょう。

選定にはAIによる分析も使われている

近年の大きな変化として、選定の段階でAI(人工知能)による分析が使われていることが挙げられます。国税庁は令和6事務年度の調査事績の中で、AIを活用した予測モデルにより調査必要度の高い法人を抽出し、そのうえで申告書や保有する資料情報を調査官が分析・検討して、実地調査を行うかどうかを最終的に判断していると説明しています。所得税の調査等でも同様に、選定にAIを活用したことが明記されています。

つまり、「たまたま当たるかどうか」という運の要素は以前より小さくなっていると考えるのが現実的です。時期を気にするよりも、日々の申告と記帳の精度を高めておくほうが、備えとしてはるかに有効になります。

調査でチェックされやすいポイント

いざ調査に入ると、どこを見られるのかを知っておくと落ち着いて対応できます。代表的なのは次のような点です。

  • 売上の計上額と計上時期:金額だけでなく「いつ売上に計上したか(期ずれ)」に不審な点がないかを丁寧に確認されます。
  • 交際費・在庫・経費の処理:交際費の範囲や在庫の評価、経費の計上ミスはよく確認される項目です。
  • 人件費:実際には働いていない人への架空の給与が計上されていないかが見られます。
  • 消費税の取り扱い:課税・非課税の区分や仕入税額控除の要件(帳簿・請求書等の保存)は、法人・個人を問わず確認されやすい領域です。

大切なのは、課税対象となる取引について法律に基づいた正確な知識を持ち、正しい証拠(証ひょう類)をそろえておくことです。たとえば取引先との会食であれば、領収書に相手の会社名・氏名・人数などをメモして保管しておくと、正当な経費であることを説明しやすくなります。正当な根拠がそろっていれば、不当な疑いや追徴課税を受ける心配も小さくなります。

秋までにやっておきたい備え

ピークの時期が読めるのであれば、その前に手を打っておくのが得策です。難しいことをする必要はなく、次のような基本的な確認で十分です。

  • 直近3期分の帳簿と証ひょうの所在を確認する:調査で見られるのは通常過去3~5期分です。年度ごとに整理され、すぐ取り出せる状態になっているかを点検します。
  • 電子データの保存状況を確認する:電子取引のデータ(メール添付の請求書・Web発行の領収書など)は、法令で定められた要件に従って電子のまま保存する必要があります。保存方法に不安があれば、国税庁の電子帳簿保存法の解説や顧問税理士に確認しておきましょう。
  • 説明しにくい支出を洗い出す:金額の大きい交際費、役員への貸付金、私的な支出と紛らわしい経費などは、あらかじめ経緯を整理しておくと当日の説明がスムーズです。
  • 顧問税理士と連絡体制を確認する:事前通知は税理士に入ることも多いため、立ち会いの可否や連絡手順を決めておくと安心です。

よくある質問(FAQ)

Q. 調査の連絡はどのように来ますか?

多くの場合、実施日の1~2週間前に、税務署から会社または顧問税理士へ電話で事前通知が入ります。その際に、調査の対象となる税目(法人税・消費税など)や対象期間(通常は過去3~5期分)が伝えられます。なお、不正の疑いが強いなど国税通則法に定める一定の場合には、事前通知のない「無予告調査」が行われることもあります。

Q. 都合の悪い日に調査日を指定されたら断れますか?

事前通知のある調査であれば、業務の都合などを伝えて日程を調整してもらうことは可能です。一方的に決められるわけではないので、対応が難しい日であれば、税務署や顧問税理士に相談して現実的な日程を相談しましょう。

Q. 秋の繁忙期を過ぎれば、もう調査は来ませんか?

9月~11月がピークなのは事実ですが、「この時期を過ぎれば絶対に来ない」とは言い切れません。年末以降や翌年に調査が行われることもあります。時期にとらわれすぎず、日頃から正しい申告・記帳を続けておくことが何よりの備えです。

Q. 調査は何日くらいかかりますか?

規模や論点の多さによりますが、中小企業や個人事業主の場合、臨場(調査官が事業所に来る日)は2日程度で終わることが多いとされています。国税庁の資料では、令和6事務年度の所得税の実地調査1件あたりの平均日数は8.8日と示されていますが、これは事前の準備や事後の確認を含めた事務量ベースの日数で、臨場が連日8日以上続くという意味ではありません。臨場後も追加資料の提出ややり取りが続き、最終的な結論が出るまで1~2か月かかることもあります。

Q. 秋に連絡が来なければ、その年は安心してよいですか?

可能性としては低くなりますが、断定はできません。前述のとおり、税務署からの接触には実地調査だけでなく文書や電話による「簡易な接触」もあり、こちらは件数がはるかに多くなっています。連絡が来た場合に落ち着いて資料を示せる状態を保っておくことが、時期を読むことよりも確実な備えです。

まとめ:時期を気にするより、日頃の備えを

税務調査は秋(9~11月)に集中しやすいものの、その時期は税務署の業務サイクルから生じる傾向にすぎず、ほかの時期に来る可能性も残ります。確率としては決して高くありませんが、件数を絞って必要度の高い先を選ぶ傾向が強まっており、選定にはAIによる分析も使われています。選ばれやすい特徴に当てはまる場合は油断できません。

結局のところ、毎年正しく申告し、適正な記帳・証ひょうの保管を積み重ねていれば、いつ調査が入っても落ち着いて対応できます。判断に迷う処理がある場合や、調査への備えに不安がある場合は、税務調査の対応に詳しい税理士に早めに相談しておくと安心です。

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