はじめての税務調査ガイド|流れ・事前準備・当日の対応の基本

はじめての税務調査は、税務署からの電話による事前通知で始まり、通知された税目と課税期間の帳簿・書類をそろえて、現地での調査に2日ほど対応するのが基本の流れです。

調査官の質問に事実で答えられる状態にしておけば、必要以上に身構えることはありません。逆にいえば、準備の中心は「帳簿と、その裏付けとなる書類をすぐ取り出せるようにしておくこと」で、特別なテクニックはほとんど必要ありません。

知っておくと役に立つ税務調査の基礎知識

税務調査が入るのは、法人・個人事業主全体で見ると毎年数%程度と言われ、頻繁にあるものではありません。そのため、しばらく調査がないと忘れてしまったり、これまで一度も調査を受けたことがないというケースもあるでしょう。

とはいえ「来ないから大丈夫」というものではありません。ここでは税務調査がどういうものなのかを、現行の制度と国税庁が公表している最新のデータをふまえて整理します。

実地調査は減り、1件あたりの追徴税額は増えている

国税庁は毎年、税務調査の実績を公表しています。最新は令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月に処理を終えた分。2025年12月公表)で、概要は次のとおりです。

調査の区分実地調査の件数追徴税額(1件あたり)
法人税・消費税(法人)約5万4千件(前年比▲7.4%)3,407億円(約634万円)
源泉所得税等約6万4千件(同▲6.7%)404億円(約63万円)
所得税(個人)約4万7千件1,132億円(約241万円)
消費税(個人事業者)約2万8千件355億円(約127万円)

ここで押さえておきたいのは、実地調査の件数は減っているのに、追徴税額はむしろ増えているという傾向です。法人税・消費税の追徴税額3,407億円は直近10年で最も高い水準で、調査1件あたりで見ても前年から15.4%増えました。

国税庁は、資料情報や申告書の分析にAIを活用して調査必要度の高い先を抽出していると説明しています。「広く浅く」から「絞って深く」へ調査の姿勢が変わってきていると読み取れます(出典:国税庁令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要)。

法人税等の実地調査による追徴税額の推移を示す折れ線グラフ
令和6事務年度の追徴税額(法人税・消費税)は3,407億円で直近10年の最高水準。

税務署からの連絡は、実地調査より「簡易な接触」のほうが多い

もう一つ知っておきたいのが、「簡易な接触」という手法です。調査官が事務所へ訪問するのではなく、文書での照会・電話連絡・税務署への来署依頼によって、申告内容の自発的な見直しを求めるものです。

所得税では令和6事務年度に68万9千件(前事務年度は55万8千件)と大きく増え、法人税・消費税でも8万5千件(前年比+13.4%)となりました。税務署からの連絡が必ずしも実地調査を意味するわけではなく、件数としては書面や電話による確認のほうがはるかに多いと知っておくと、最初の連絡で必要以上に動揺せずに済みます(出典:国税庁令和6事務年度における所得税及び消費税調査等の状況)。

税務調査は「任意」でも断れる調査ではない

税務調査とは、税務署や国税局などが、帳簿が正しく付けられていて申告内容に誤りがないかを確認する調査のことをいいます。強制調査と任意調査の2種類がありますが、一般的に税務調査というと、納税者の同意を得て行う任意調査を指します。申告内容にミスがあれば指摘され、修正申告を行うことになります。

ここで誤解しやすいのが「任意」という言葉です。任意調査は裁判所の令状による強制調査とは違いますが、調査官の質問検査権にもとづくものです。

正当な理由なく質問に答えなかったり、帳簿書類の提示・提出の求めに応じなかったりした場合には、罰則(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)が定められています。「任意だから断ってよい」という意味ではない点は、最初に押さえておきましょう。

>>「税務調査とは」を詳しく見る

調査の流れ=事前通知→書類の準備→臨場(2日程度)→結果の通知

税務調査が入る場合は、事前通知がされるのが基本です。通知は原則として電話で行われ、実地の調査を行う旨・調査を開始する日時と場所・対象となる税目と課税期間・調査の目的などが伝えられます。

納税者は調査日までに必要書類をそろえて準備します。現地での調査はおおむね2日間ほどかけて行われ、調査官の質問に答える形式で進みます。調査が終わると、後日その結果が知らされます。

なお、事前通知を何日前に行うかについて法令上の定めはありませんが、国税庁は「調査開始日までに準備ができるよう、相当の時間的余裕を置いて行う」としています。通知された日程にどうしても都合がつかない場合は、合理的な理由があれば日時の変更を申し出ることができます(申告や決算の繁忙期、入院、親族の葬儀など)。

申出の方法に決まった様式はなく、口頭で調査担当者に伝えれば足ります。一方で、申告内容や過去の調査結果などから、事前通知をすると正確な事実の把握が困難になると判断された場合には、通知なしで臨場することもあります。

>>「調査の流れ」を詳しく見る

事前に準備すべきこと=過去3年分の帳簿と裏付け書類をそろえる

税務調査対策で重要なのは、正しく申告し、経理処理の証拠書類をしっかり保存しておくことです。調査が決まったら、総勘定元帳・契約書・売上関連書類などを最低でも過去3年分はそろえておきます。

実務上は直近3期分を中心に確認されることが多い一方、法律上は原則5年(偽りその他不正の行為があった場合は7年)までさかのぼって課税処分を行うことができます。古い年度の資料もすぐ取り出せる状態にしておくと安心です。処理内容にミスが見つかったら、調査が入る前に修正申告をしておきましょう。

帳簿書類そのものの保存期間は、法人は原則7年(青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合などは10年)、個人事業者は帳簿が原則7年(前々年分の事業所得・不動産所得が300万円以下の方は5年、書類の種類によっても5年のものがあります)です。

消費税のインボイス(適格請求書)に関する帳簿・請求書等の保存期間は7年とされています。書類ごとの保存年数は税務調査の事前準備|必要書類・帳簿の保存期間と加算税・延滞税の割合で詳しく整理しています。

また、電子帳簿保存法により、2024年1月以降に行った電子取引のデータ(メールやWebで受領した請求書・領収書など)は、電子データのまま保存することが原則として義務づけられています。紙に印刷しただけでは要件を満たしません。

ただし2024年1月1日以後の電子取引については猶予措置があります。要件どおりに保存できなかったことに「相当の理由」があると所轄税務署長が認め、かつ調査の際にデータのダウンロードの求めと、出力した書面の提示・提出に応じられる場合には、改ざん防止や検索機能などの要件を満たさなくても単に保存しておけばよいとされています。

とはいえ猶予はあくまで例外的な取扱いですので、日頃からデータの保存方法を確認しておくと安心です。

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2026年10月から、免税事業者からの仕入れの控除割合が80%→70%に変わる

消費税の帳簿づけで、いま特に注意したいのがインボイス発行事業者以外(免税事業者など)からの仕入れに係る経過措置です。令和8年4月に消費税法等が改正され、これまでの「8割控除」が7割・5割・3割控除へ段階的に見直されました。

課税仕入れを行った時期控除できる割合備考
2023年10月〜2026年9月80%改正前からの割合
2026年10月〜2028年9月70%改正で新設
2028年10月〜2030年9月50%改正で2年延長
2030年10月〜2031年9月30%改正で新設
2031年10月以降0%経過措置の終了

あわせて控除限度額も見直され、同じ一の事業者からの課税仕入れの合計額がその年または事業年度で1億円(改正前は10億円)を超える部分には、この経過措置を適用できないこととされました。限度額の見直しは2026年10月1日以後に開始する課税期間からの適用です。

税務調査の実務で問題になりやすいのは、切替時期をまたぐ取引の判定です。どちらの割合になるかは課税仕入れを行った日で判断するため、9月と10月にまたがる請求は月ごとに割合が分かれます。

帳簿に「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を記載する際も、時期に応じた割合で残しておく必要があります(2026年9月時点。出典:国税庁消費税法改正のお知らせ(令和8年4月)/インボイス制度に関する令和8年度税制改正)。

個人事業主の方は、2割特例が令和8年9月30日までの日の属する課税期間で終わり、令和9年分・令和10年分は新設の3割特例が使える点もあわせて確認しておくとよいでしょう。

当日に質問されやすい内容

税務調査で重点的にチェックされ、質問されやすいポイントはだいたい決まっています。具体的には、売上の計上時期のずれ、交際費、在庫金額、人件費、外注費、関連会社との取引内容などです。数字の操作や公私混同など、不正が行われやすい箇所が確認されると考えておけばよいでしょう。

実際、国税庁の公表資料でも、AIが想定した不正パターン(売上・原価・経費)を手がかりに、売上伝票の破棄による現金売上の除外や、架空の外注費・人件費の計上といった手口が把握された事例が紹介されています。「よく見られる論点は、調査官もあらかじめ想定して来る」と考えて、根拠資料を説明できるようにしておくことが最大の備えです。

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調査後のやりとり=修正申告に応じるかは納税者の任意

現地での調査が終わっても、税務調査は続きます。資料を持ち帰ってチェックし、必要があれば追加資料の提出を求められます。調査結果が通知され、申告是認となればそこで終了です。否認されて指摘内容に納得する場合は修正申告を行い、納得できない場合は不服申立ての手続きに移ります。

調査の結果、誤りがあると認められた場合には、調査担当者から修正申告の勧奨を受けます。これに応じるかどうかはあくまで納税者の任意で、応じないからといって不利な取扱いを受けることは基本的にありません。

ただし注意したいのは、自ら修正申告書を提出すると、その内容についてあとから不服申立てをすることはできなくなる点です(更正の請求は法定の期間内であれば可能です)。納得できない論点が残っているなら、その場で押されて署名せず、いったん持ち帰って税理士に相談してください。

調査後に納めることになる本税以外の負担については、税務調査後の追加納税|加算税・延滞税の最新税率と不服申立てで割合と計算の考え方を整理しています。

>>「調査後のやりとり」を詳しく見る

調査の時期は秋から年末に集中しやすい

調査の時期は決まっておらず、いつでも入る可能性がありますが、一般に毎年9月〜11月が税務調査のピークと言われています。確定申告や企業の決算、税務署の人事異動などで忙しい時期を避け、業務が落ち着く秋から年末にかけて集中的に行われるためです。

国税庁が「この時期に調査を行う」と公表しているわけではありません。ただし税務署の事務年度が7月から翌年6月までである(調査事績の集計期間もこの区切りです)ことも、秋に調査が動き出しやすい背景の一つです。

>>「調査の時期」を詳しく見る

狙われやすいのは黒字企業と現金商売の業種

税金を新たに多く納めてもらえそうな会社や業種が、税務調査で狙われやすい傾向にあります。たとえば大勢の調査官で調査に行っても新たに納めてもらう税金が少なければ、調査にかかるコストのほうが高くついてしまいます。

そのため税務署は、黒字企業や、トレンドに乗って利益が伸びている企業、現金を直接扱う業種などに的を絞って調査を行うことが多いようです。

この傾向は公表データにも表れています。令和6事務年度の法人税調査で不正発見割合が高かった業種は、バー・クラブ(62.3%)、その他の飲食(45.2%)、外国料理(40.2%)、美容(34.5%)、大衆酒場・小料理(34.4%)で、現金商売の業種が上位に並びます。

個人事業者では、1件あたりの申告漏れ所得金額が高額な業種としてキャバクラ(4,164万円)、眼科医(3,894万円)、ホステス・ホスト(2,968万円)、経営コンサルタント(2,734万円)、太陽光発電(2,142万円)が挙げられています。

法人税調査で不正発見割合が高かった業種上位5を示す横棒グラフ
現金を直接扱う業種が上位に並ぶ。

ただし、これらの業種だから必ず調査が来る、載っていないから安全、という話ではありません。近年は暗号資産(仮想通貨)取引やネット通販・アフィリエイトなど、インターネットを介した取引を行う個人への調査も強化されています(暗号資産等取引を行う個人への実地調査は令和6事務年度に613件、1件あたりの追徴税額は745万円)。

業種に関係なく、売上を正しく計上し、経費の根拠を説明できる状態にしておくことが最も確実な備えです。

>>「税務調査で狙われやすい会社・業種」を詳しく見る

確定申告でありがちなミス

自営業の方は毎年確定申告をしているでしょう。事業規模が小さい場合には、自分で確定申告書を作成している人も少なくありません。しかし、確定申告のミスが税務調査で見つかるケースは多くあります。間違いによって本来より税額が少なくなっていた場合にはペナルティが課されることもあるため、注意が必要です。

>>「確定申告でありがちなミス」を詳しく見る

税務代理を依頼していれば、事前通知は税理士に届く

個人事業主や会社の経営者にとって、税務調査は気がかりなものです。「不正をしていなければ怖くない」と思っていても、税務調査で誤りを指摘されることはよくあり、高額な追徴課税につながることも少なくありません。そこで、税理士に立ち会いを依頼するケースが多くなります。

なお、税理士に税務代理を依頼して税務代理権限証書を提出しており、その旨の同意を記載している場合には、事前通知が税理士に対して行われます。調査結果の説明についても、同意があれば税理士に対してのみ行うことが可能です。日頃から顧問税理士がいる方は、この点も確認しておくとやりとりがスムーズになります。

>>「税務調査で税理士に依頼する費用」を詳しく見る

トラブルは「即答しなければならない」という思い込みから起きる

税務調査では、突然の訪問で心と現場の準備が整っていないこともあり、動揺したり、まるで犯罪者のように扱われていると感じたりして、トラブルに発展してしまうことが少なくないようです。

調査官が来たからといって、その場ですべてに即答したり、求められるまま書類を差し出したりしなければならないわけではありません。顧問税理士をつけているのであれば、まず連絡して立ち会いを求めるのが一番です。手元にない資料や記憶があいまいな点についても、無理に答えず「確認してから回答します」と伝えれば足ります。

一方で、前述のとおり調査そのものを正当な理由なく拒むことはできません。「任意調査だから協力しなくてよい」といった対応は、かえって調査の長期化や心証の悪化を招きます。冷静に、事実にもとづいて説明するという姿勢が結局はいちばんの近道です。

取引先に確認が及ぶ反面調査のように、自社だけで完結しない場面もあります。想定される展開を知っておくと、当日あわてずに済みます。

>>「税務調査で起きやすいトラブルについて解説」を詳しく見る

はじめて税務調査を受ける方からよくあるご質問

Q. 税務署から電話が来ました。その場で日程を決めないといけませんか?

A. その場で確定させる必要はありません。事前通知の際にはあらかじめ都合を尋ねることになっているため、不都合な事情があればその時点で申し出てください。通知後でも、入院・親族の葬儀・繁忙期などの理由があれば変更を協議してもらえます。まず日時を仮に聞き、顧問税理士と相談してから回答しても問題ありません。

Q. 顧問税理士がいません。今からでも税務調査の立ち会いを頼めますか?

A. 依頼できます。税務代理を引き受けた税理士が税務代理権限証書を税務署に提出することで、税理士が窓口となって対応できます。ただし調査日が迫るほど資料の確認に使える時間は短くなりますので、通知を受けたらできるだけ早く相談してください。

Q. 税務調査の当日までに何を用意すればよいですか?

A. 通知された対象税目と課税期間に対応する帳簿と、その裏付け書類(総勘定元帳、請求書・領収書、契約書、通帳、給与関係書類など)が基本です。電子取引のデータは、調査の際に画面で確認できる状態にし、出力書面を渡せるようにしておくことが求められます。置き場所を整理しておくだけでも進行が変わります。

Q. 通知された年分より前の帳簿を見せるよう言われました。範囲を超えていませんか?

A. 超えていないことがあります。たとえば通知された年度の減価償却費を確かめるために、資産を取得した年度の書類が必要になるケースです。この場合は通知された年度の調査に必要な範囲として提示を依頼されるもので、別の年度の調査を行っているわけではありません。ほかの課税期間にも非違が疑われる事実が出てきた場合は、あらためて説明を受けたうえで調査対象が追加されることもあります。

Q. 調査の連絡を受けてから自分でミスに気づきました。今から直しても意味はありますか?

A. あります。調査の通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合、過少申告加算税は課されません(延滞税は納付が必要です)。通知を受けた後でも、調査によって更正されることを予知する前に提出したものであれば、加算税は軽減された割合になります。割合は申告の種類や税額によって異なるため、具体的な計算は解説ページや税理士にご確認ください。

Q. 税務調査は何日くらいかかりますか?

A. 規模や論点によりますが、中小企業や個人事業主の場合、臨場(現地での調査)は2日程度が一つの目安です。ただしその後の資料確認や追加のやりとりに数週間から数か月かかることもあり、「当日で終わり」ではないと考えておいたほうが心構えとしては正確です。

個別の税額計算や適用できる特例の判断は、事業の内容や契約関係によって結論が変わります。最新の取扱いは必ず国税庁のホームページで確認するか、税理士にご相談ください。