税務調査で指摘されやすいポイントと備え方|慌てないために

税務調査に備えて帳簿や書類を整理するイメージ

税務調査と聞くと「何を見られるのか分からない」という不安が先に立つものです。しかし、調査官が重点的に確認するポイントは、ある程度決まっています。あらかじめ「指摘されやすいところ」を知って備えておけば、いざ調査の連絡が来ても落ち着いて対応できます。ここでは、税務調査で指摘されやすい代表的な項目と、日頃からの備え方を、現場の視点で整理します。

国税庁は、適正・公平な課税のために、提出された申告書とあらゆる資料情報を分析・検討し、調査の必要度が高いと判断した納税者に対して実地調査を行うとしています。近年はAIを活用した分析・選定が進み、消費税の還付申告や海外取引などへの監視も強化されています。 参考:国税庁「適正・公平な税務行政の推進」

所得が急に減っている、または利益が出ていそうなのに伸びていない

事業がうまくいっていそうなのに申告額が不自然に少ない、あるいは前年から急に所得が落ち込んでいる——こうした申告内容と実態のズレは、調査官が真っ先に着目するポイントです。売上の計上漏れや、資金が個人や海外へ流れていないかなども念頭に確認されます。日頃から、売上・経費の増減について自分の言葉で説明できるようにしておくことが大切です。

消費税に関することは特に重点的にチェックされる

消費税は国にとって重要な税収であり、調査も厳しくなりがちです。消費税は事業者が消費者から「預かって」国に納める性質のお金であるため、申告を偽って還付金を不正に受け取ろうとするケースが監視されます。とくに近年は消費税還付への監視が強化されています。 帳簿や請求書・インボイス(適格請求書)をきちんと保存しておかないと、仕入れの際に支払った消費税(仕入税額控除)が認められないおそれがあります。インボイス制度の開始以降は、控除の要件として適格請求書の保存がより重要になっていますので、保存ルールを確認しておきましょう。

「的確な事実認定」——支出が本当にあったかを確認する

「的確な事実認定」とは、計上された支出が実際にあったかどうかを一つひとつ確認することです。申告漏れを見つけるのが目的で、帳簿・書類・現物などを細かく突き合わせます。 実際、国税庁が公表した令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の法人税等の調査事績では、実地調査約5万4千件に対し、調査1件あたりの追徴税額(法人税・消費税の本税+加算税)は約634万円にのぼりました。追徴税額の総額は3,407億円と直近10年で最も高い水準です。AIを活用した選定で、調査の必要度が高い先に絞り込んで効率的に行われている点も特徴です。
法人税等の調査による追徴税額の推移。令和4=3,225億円、令和5=3,197億円、令和6=3,407億円
法人税・消費税の実地調査による追徴税額の総額。令和6事務年度は3,407億円で直近10年の最高水準。

領収書が出ない支出について

取引先の冠婚葬祭などで香典やご祝儀を包んだ場合、領収書は発行されません。しかし、これらは事業に関係するものであれば必要経費として処理できます。金額が大きい場合は、相手先や事実関係を確認されることがありますので、招待状や案内状、支出のメモなどを保管しておくと安心です。

パソコンの中も整理しておく

税務調査では、紙の帳簿だけでなくパソコン内のデータも確認の対象になります。重要度の低い書類をプリントアウトせずデータのまま保管している会社が増えているため、画面を見せるよう求められることがあります。狙いは、メールなどから記録に表れていない取引や収入がないかを確認することにある場合もあります。 パソコンの中身をすべて見せる義務はありません。何を確認したいのかを尋ね、必要な部分だけを表示・印刷して提示する対応で問題ありません。また、データの持ち帰りを求められた場合も、応じる法的義務はなく、お断りしても差し支えありません(任意調査の範囲での話です)。対応に迷う場合は、税理士の立ち会いを求めるのが安心です。

帳簿や机まわりも細かく見られる

帳簿に挟まれた付箋やメモ、書き込みの有無、経営者や経理担当者の机の上なども確認されることがあります。メモ用紙やカレンダーへの何気ない書き込みから取引の手がかりを得ようとする場合もあるため、日頃から整理を心がけましょう。

申告書類に誤りがないか確認される

確定申告の書類も当然チェックされます。あらかじめ自分でも見直して、誤りがないか確認しておきましょう。もし誤りに気づいたら、調査前に「修正申告」をすることで、ペナルティを軽くできます。 調査で誤りを指摘されてから修正した場合は、過少申告加算税や延滞税などがかかります。修正申告をすると「なぜ間違えたのか」を必ず聞かれます。これは、単なるうっかりミスなのか、意図的に隠したのか(その場合はより重い重加算税の対象になりえます)を確認するためです。 そのほか細かい点ですが、契約書などに収入印紙が正しく貼られているかも確認しておきましょう。貼り忘れが見つかると、納めなかった印紙税額に加えてその2倍に相当する「過怠税」(合計で印紙税額の3倍)がかかります(自主的に申し出た場合は1.1倍に軽減されます)。

指摘されやすいポイントと日頃の備え

ここまでの内容を、「見られやすい項目」と「備え方」で整理すると次のとおりです。
見られやすい項目調査官の着眼点日頃の備え
売上・所得の増減実態と申告のズレ・計上漏れ増減の理由を説明できるようにする
消費税・仕入税額控除還付の妥当性・帳簿/インボイスの保存適格請求書・帳簿を整理して保存
領収書のない支出支出の事実・金額の妥当性招待状・メモなど裏付けを残す
PC内のデータ記録外の取引・収入の有無必要な範囲だけ提示・税理士立ち会い
収入印紙契約書への貼付漏れ課税文書の印紙を事前に確認

よくある質問(FAQ)

Q. パソコンやデータの持ち帰りは断れますか?

任意調査では、パソコンの中身をすべて見せたり、データを持ち帰らせたりする法的義務はありません。確認したい内容を尋ね、該当する部分だけを提示する対応で問題ありません。判断に迷う場合は、税理士に立ち会ってもらいましょう。

Q. 悪意なく間違えていた場合も罰則がありますか?

意図的でない単純な申告漏れでも、不足していた税額に対して過少申告加算税や延滞税がかかります。一方、売上を隠すなど意図的な仮装・隠ぺいがあると、より重い重加算税の対象になります。誤りに気づいたら、調査の連絡が来る前に自主的に修正申告するのが、負担を抑える近道です。

Q. 調査の連絡が来たら、まず何をすべきですか?

慌てて資料を作り替えたりせず、帳簿・請求書・契約書などをそろえ、申告内容を自分でも見直すことが第一です。不安が大きい場合は、早めに税理士へ相談し、立ち会いを依頼すると安心です。

慌てないために、日頃の備えと専門家の活用を

税務調査では、どこでどのような申告漏れが見つかるか分かりません。悪意がなく、うっかり間違えていただけでも、ペナルティの対象になることがあります。だからこそ、日頃から帳簿・書類を整え、申告内容を説明できるようにしておくことが何よりの備えになります。 調査への対応に不安がある場合は、税務の専門家である税理士に立ち会いや事前準備を依頼することで、落ち着いて対応できます。なお、本文で示した調査事績の数値は令和6事務年度(国税庁・2025年12月公表)のもので、最新の状況は国税庁の公式サイトでご確認ください。

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