
個人事業主でも対象となることは十分あります。
「個人事業主だから税務調査が入ることはないだろう」と考えていませんか?実は、個人事業主だからといって税務調査が入らないとは限りません。ここでは、個人事業主に対する税務調査の実態と調査が入る基準、対策についてご紹介します。
法人と個人に「税務調査が入る割合」は?
法人や会社企業であろうと、個人事業主であろうと、税務調査を全く受けないということはありません。では、その割合はどれくらいなのかを具体的に見てみましょう。 国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(2024年11月公表)によると、所得税に関する実地調査は47,528件が実施されており、1件当たりの追徴税額は224万円にのぼります。申告漏れ所得金額の総額は9,964億円(過去最高)を記録しており、調査の選別精度は年々高まっています。 調査が入ると指摘を受ける割合は個人事業主で約80%と非常に高く、「入られたら何かしら指摘される」のが実態です。調査対象の選定は国税総合管理システム(KSK)によるコンピュータ分析で行われており、売上規模にかかわらず不自然な申告内容が検知されます。「自分の事業規模なら大丈夫」という思い込みは危険です。売上が1,000万円を超えると調査される?
個人事業主は、売上が年間1,000万円以上だと税務調査を受けることが多いと言われています。この根拠は1,000万円以上になると消費税が課されるためと言われていますが、これはあくまで噂であり、確実にそうであると断定はできません。 確かに、売上が1,000万円を超えた場合は初年度(=超えた年)に消費税の申告漏れが多くなる傾向があるそうです。だからといって、1,000万未満ならば税務調査が行われないとは限りません。 税務署では、国税総合管理システムによって国税局と事務所が持っているデータを一元管理しています。そこで個人の確定申告の内容とデータベースを突き合わせて、分析を行います。その際、たとえ売上が低くても不自然な申告をしていると税務調査の対象になることがあるようです。個人事業主の追徴税額は?(参考:平成26事務年度のデータ)
傾向把握のための参考データとして、平成26事務年度(2014〜2015年)の調査実績をご紹介します。個人事業主と資本金1億円以上の法人、1億円以下の法人で比較してみました。| 法人全体 | 法人 (資本金1億円以上) | 法人 (資本金1億円以下) | 個人事業主 | |
|---|---|---|---|---|
| 調査件数 | 95,000件 | 2,650件 | 92,350件 | 67,770件 |
| 指摘を受けた 所得金額 | 8,235億円 | 3,340億円 | 4,895億円 | 5,008億円 |
| 所得税 追徴税額 | 1,710億円 | 630億円 | 1080億円 | 740億円 |
| 申告漏れ 所得金額 (1件あたり) | 8,665万円 | 1億2,500万円 | 530万円 | 740万円 |
| 所得税 追徴税額 (1件あたり) | 180万円 | 2,380万円 | 115万円 | 110万円 |
| 消費税 実地調査件数 | 91,000件 | 2,920件 | 88,080件 | 35,930件 |
| 消費税 追徴税額 | 452億円 | 123億円 | 329億円 | 186億円 |
| 消費税 追徴税額 (1件あたり) | 50万円 | 420万円 | 37万円 | 52万円 |
| 調査1件あたりの 追徴税額合計 | 228万円 | 2,800万円 | 153万円 | 162万円 |
※上表は平成26事務年度(2014〜2015年)のデータです。最新の令和5事務年度(2023〜2024年)では個人の実地調査件数は47,528件、1件当たりの追徴税額は224万円です。(出典:国税庁 令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況)
税務調査が個人事業主に入りやすい時期とは?
税務調査は明確に「この時期に行う」という指標はありません。しかし、実際は税務署内部の動きにより増減がある様です。 【2月~3月】 可能性(小) 個人事業主の確定申告があり税務署内部も多忙の為、税務調査はほとんど行われません。 【5月~6月】可能性(小) 3月を会計年度末にしている企業が多く5~6月は税務署内部も決算処理が極めて多忙の為、税務調査はほとんど行われません。 【 7月 】可能性(小) 税務署では6月に年度末を迎え、7月に人事異動が行われます。新体制の整備や準備のために税務調査はほとんど行われません。 【8月~11月】可能性(大) 新年度になってお盆休みも終わり、業務が落ち着く8月末くらいから徐々に税務調査が始まり、9月から年末に向かう11月頃までがピークとなります。会計に不安がある場合は特に、秋口までに整理をしておきましょう。税務調査を受けやすい個人事業主の特徴
税務調査は、正しい税務処理をしたうえで正確な申告を行い、きちんと納税しているかを調べるものです。税務調査のターゲットになる個人事業主の傾向は、法人の場合とさほど変わりないようです。正しく申告していれば心配する必要はないため、びくびくするような場合は何か自分で思い当たる点があるときと言えます。売上の急速な伸びや下降は注意が必要
目を付けられるポイントは、売上や利益の急な伸び、または下降です。前年度と比べて著しく業績が変化した時などには、税務調査が入ることがあります。また税務署はデータベースにより、業績が伸びていても所得金額が極端に少ない、預金・在庫が少ないといった不自然な部分をチェックします。節税対策もやりすぎると危険
事業者なら、事業が軌道に乗り始めてまず行うのが節税でしょう。節税自体は悪いことではありませんが、あまりにもやりすぎると脱税と見なされることもあります。隠蔽だと疑われたり、悪質と判断されると追徴課税だけでなく、重加算税も追加されてしまいます。そうなると、本来支払う必要がない税金も納めなくてはなりません。 また、一旦不正だと判断されてしまうとその後も税務調査の対象になりやすくなります。税金逃れを考えるのではなく、納めるべき税金を支払った上で合法的な節税の仕方を考えることが大切です。事業が軌道に乗っている
利益を出している個人事業主は税務調査の対象となるケースが多いようです。事業が軌道に乗り、5年ほど経ったときに税務調査が入りやすいと言われています。税務調査では5年前までさかのぼって調査するのが可能だからです。売上の規模が大きくなるにつれて税務調査の対象になりやすいと言われています。しかも赤字の事業であっても調査対象になる可能性はあるものです。赤字でも消費税や源泉所得税は掛かりますし、不正計算で赤字になっているケースも考えられます。確定申告の数字が不自然
税務署には過去の確定申告記録が残されています。あらゆる業種において利益率や経費などのデータが揃っているのです。一元管理されているそれらのデータと確定申告の数字をコンピュータで自動的に照らし合わせます。さらに確定申告書のデータだけでなく、金融機関からの情報や法務省から不動産の登記情報を得てデータを分析。不自然な数字が出ていると調査対象の候補として選ばれ、さらに詳しい調査が進められます。業績だけが伸び、現金預金や在庫などのストックが少ない
業績が伸びると預金か在庫量が増えるのが普通です。税務署では過去のデータと照らし合わせて所得と在庫量、預金のバランスをしっかりチェックしています。売上が伸びれば経営者は納税額を抑えたいと思うようになりますし、調査により在庫漏れが発覚するケースもたくさんあるようです。所得金額が異様に少ない
所得金額が少なすぎる、または無いにもかかわらず事業を続けている場合には調査対象になる可能性があります。確定申告書にも所得別の収入金額を記入する欄があるので、それを参考に調査対象を選出するのです。所得があまりに少なすぎ、生活できないような金額であれば通常、事業を続けられません。 確定申告書の記載が間違っていることも考えられます。税理士が付いていない個人事業主は税務署の調査が入りやすいとも言われていますが、個人事業主が自分で申告書を提出している場合、申告書の記載方法が間違っているケースも考えられます。その場合、税務署も内容を確認するために調査に入らざるを得ないのです。業績が急激に変化した
業績が急激に伸びたり落ち込み方が激しく違和感があったりする場合には当然、調査対象となる確率が上がります。過去のデータと照合し、金額が大きく変化していると調査対象になりやすいでしょう。過去5年のデータと比べ、異常な数値が出ているようだと狙われやすくなります。 粗利が急激に変化している場合にも調査対象に。普段発生していない大きな経費が使われていないかがチェックされます。日ごろから気をつけておくべきこと
脱税志向は持たない
脱税は犯罪であり、悪質なケースは「重加算税」の追徴課税を受けることになります。高額な税金を追加で払わなければならないのです。売上や仕入れ、経費を偽って計上していた場合に重加算税の対象となります。次回以降の税務調査でも対象になる可能性が高くなるでしょう。脱税は発覚したときのリスクを考えると絶対に避けるべきです。脱税志向を持たないことが事業を円滑に行なうための秘訣と言えます。預金口座は公私で分ける
個人事業専用の口座とプライベートの預金口座を用意して、しっかり区別して使いましょう。プライベート用の口座を利用して所得を隠そうとしても、税務署では個人や関係者の口座をすべて把握しています。口座を分けることにより入出金が分かりやすくなり、経理処理も効率化できます。領収書は必ず整理して保存
青色申告の個人事業主であれば領収書の保存期間は7年間です。保管してある領収書は事業内容によって経費として認められるものかどうか、しっかり把握しておく必要があります。交際費や旅費交通費、消耗品費などプライベートと分別がつき難いものはとくに注意が必要です。調査が入ったときにすぐに説明できるようにしておきましょう。個人事業主は必見!税務調査の失敗・成功のケース
税務調査の失敗ケース
日ごろからの管理
- 記帳について法改正に対応していなかった
- 税理士から調査で必要な書類の説明がない
- 普段から税理士が上から目線、態度が悪い
- 税理士が専門用語ばかりで説明してくる
税務調査の通知後の事前準備
- 税理士と事前打ち合わせをせず当日を迎える
- 税務調査当日の流れがよく分からない
- 税理士の進め方が税務署寄りの対応
税務調査の本番で
- 不安を抱えたまま当日を迎える
- 調査官による質問の意図が分からない
- 税理士が調査官の言いなりで何も反論しない
- 調査官の作成した文書に署名、捺印した
結果は…
- 税理士が調査官と交渉せず、加算税が高額に
- 税理士の態度が悪く、調査が長引いた
- 意図的な脱税ではないのに重加算税が加算
- 調査官の質問に税理士が何も答えられない
税務調査の成功ケース
日ごろからの管理
- 税務調査を前提とした記帳方法へ変更
- 税理士が調査で指摘されやすい点を指導
- 税理士から同業種の傾向をアドバイス
- 税理士が帳簿や必要書類を事前にチェック
税務調査の通知後の事前準備
- 事前に税理士と何度も打ち合わせ
- 税理士が事前に資料を確認し指摘項目を予測
- 事前に法的根拠に基づいた対策をとっていた
- 事前に調査当日のシミュレーションを行なった
税務調査の本番で
- 指摘に対し法的根拠を示しながら調査官へ説明
- 税理士が租税裁判の判例を出しながら交渉
- 必要書類が準備できているので調査が短時間
結果は
- 調査官に対して主張をしっかり通してくれた
- 対応が早く、予定より早く調査が終了
- 税理士に任せっきりで何事もなく調査を終えた
- 今後の対策を考えレポートを提出してくれた
個人事業主が取るべき対処法とは
税務調査委が入ることを前提に、個人事業主がやらなければならないのは帳簿を付けることです。そのためのポイントを何点かご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。①青色申告と白色申告
知識がないので帳簿を付けない、無申告をしていたという個人事業主がたまにいます。確定申告には青色と白色があり、従来は白色では所得が300万円を下回るときに限って帳簿をつける義務が免除されていました。しかし、2014年1月からは青色・白色を問わず記帳と記録の保存が義務付けられています。青色は複式簿記、白色は単式簿記という違いがありますが、個人事業主は帳簿付けが必須なので忘れないようにしましょう。②預金通帳は個人と事業を分けておく
記帳する際には、個人用と事業用を分けておきましょう。預金口座を分けないと、個人の口座に報酬を振り込んでもらい所得隠しをしたと見なされることもあります。③書類はしっかり管理し保管しましょう
注文書、請求書、領収書などの証拠書類はしっかり管理・保存しておきましょう。数年は保管義務があります。④光熱費にも要注意
仕事場と自宅を兼ねている場合は、家賃と光熱費は100%経費として計上することはできません。このようなときは、使用割合を「按分」して正確に経費を割り出します。⑤その他
個人事業主の中には届けを出さないばかりか、そもそも自分が個人事業主だという意識を持たない人もいるのが事実です。例えばネットオークションで一時的に不用品を処分しているだけなら良いのですが、せどりのように継続的な売買を行って一定の利益がある場合は事業として見なされます。自分では個人事業だと考えていない場合、帳簿も付けておらず、確定申告も行っていないため、無申告扱いになり追徴課税が課されてしまいます。こんな場合に後で泣きを見ないためには、一度税理士に相談してみると良いでしょう。いい加減な会計処理をして後から税務調査が入ることを恐れるくらいなら、初めから税理士に依頼した方が得策でしょう。インボイス制度の導入と税務調査への影響(2023年10月〜)
2023年10月から適格請求書等保存方式(インボイス制度)が本格的にスタートしました。これにより、課税売上高1,000万円以下の免税事業者も「適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)」として登録すれば消費税の申告・納付義務が生じます。 インボイス発行事業者として登録した場合は消費税の申告義務が生じるため、消費税に関する税務調査の対象にもなり得ます。登録番号(T+13桁)は国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで誰でも検索でき、取引先からの確認も容易になっています。 インボイス登録後に税務調査で特に指摘されやすいポイントは次の通りです。- 発行したインボイスの記載不備:登録番号・税率・税額の区分を誤ると取引先が仕入税額控除を適用できなくなります。
- 受け取ったインボイスの保存漏れ:仕入税額控除には適格請求書の保存が要件です。電子データで受領した場合は電子帳簿保存法の要件に沿った保存が必要です。
- 課税方式の選択ミス:原則課税・簡易課税の選択届出を忘れたり誤ったりすると想定外の消費税額になる場合があります。
税務調査が決まったときの対策
既に調査が決まっている場合に今から行える対策は、以下の3点です。①必要資料の準備
調査を行うという連絡が来てから実際に行われるまでには、数日~数週間程度間が空きます。連絡があったからと言っていきなり問答無用で来るわけではありません。その間に必要資料を用意して見直しておきましょう。市販品でも準備すべきことをまとめた書籍があるので、購入して準備を整えておきましょう。②あらかじめ自分で間違いを探し、修正する
税務調査においては、税務署からの指摘の前に自ら間違いを見つけ出し、修正申告を行う必要があります。これは、税務署側に指摘されると過少申告加算税という罰金が待っているためです。さらに悪質だと見なされると、重加算税35%という重い罰金が課されることもあります。③税理士事務所に依頼する
税務調査の査察官はいわば脱税を見つけるプロです。見つからなければ大丈夫と甘く考えると本当に痛い目をみるので、全部発見されると思って準備を進めておくことが重要です。税の知識がなく、査察官と渡り合える交渉力がないといった場合は無理せずに税務のプロの税理士に依頼するのが最善と言えるでしょう。FAQ:個人事業主の税務調査に関するよくある質問
Q1:個人事業主は何年に一度、税務調査を受けますか?
税務調査の頻度に法的な規定はありません。国税庁のデータによると個人への実地調査は年間約47,000件規模で行われており、全個人事業主数からすれば実際に調査を受ける確率は数年に1回程度と見られます。ただし調査対象の選定はKSKシステムによるコンピュータ分析で行われるため、不自然な申告内容があれば規模を問わず選ばれます。正しい申告を続けることが最大のリスク回避策です。
Q2:税務調査の通知(連絡)は何日前に来ますか?
任意調査の場合、税務署から電話で調査日程の連絡が入り、概ね1〜2週間程度の事前準備期間があるのが一般的です(法令上の事前通知期間の定めはありません)。連絡を受けたら、顧問税理士がいる場合は必ず事前打ち合わせを行いましょう。一方、重大な脱税が疑われる強制調査(犯則調査)の場合は事前通知なく実施されます。
Q3:帳簿・領収書を紛失した場合、どうなりますか?
帳簿・証憑の紛失は経費や仕入れの根拠を証明できなくなるため、調査官による経費否認や追徴税額の増加リスクがあります。青色申告者は帳簿・領収書の保存期間7年間(一部5年)が義務で、2014年1月からは白色申告者も同様です。紛失が発覚した場合は早めに税理士に相談し、通帳・カード明細・電子記録など代替資料で証明できるか検討することが大切です。
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