海外不動産投資による節税が2021年から利用不可に/税制改正大綱

2021年分の所得税確定申告より海外不動産投資による節税スキームが利用不可となることが決まりました。

この節税スキームについては会計監査院が平成27年度に「国外に所在する中古の建物に係る所得税法上の減価償却費について」で財務省に制度改正を求めていた富裕層向けの節税スキームとなります。

今回の制度改正では、海外中古不動産については簡便法の適用できなくするのではなく、給与所得との損益通算を認めなくするものであるため、既存で物件の所有する方にも影響する大掛かりなものとなっています。

 

海外不動産投資による節税スキームとは?

中古資産の耐用年数では対応年数を経過した木造物件は4年、RC物件は9年で対象資産全額の減価償却をしてよいことになっています。欧米では、築100年を越すような住宅が一般的に流通しており、中古住宅のほうが住宅市場の主な取引物件となっています。また、土地の価格が安く建物価格の方が高いという状況が多くなっています。一方、日本では新築物件が人気で築40年、50年で建物価値はゼロになり、土地の価格が高いなど欧米とは大きく形態が異なっています。

海外不動産投資スキームではハワイ、北米、ヨーロッパなどの対応年数を越えた不動産を取得し、不動産価格の70-80%程度を占める建物価格を4年で償却し、不動産投資で大きな損失を出し、給与所得と相殺することで、給与所得にかかる所得税や住民税を大幅に節税することが可能です。

たとえば、築50年木造の1億円(建物8,000万円、土地2,000万円)の不動産に投資し場合は建物部分の8,000万円を4年で償却できるため、年間2,000万円の減価償却を発生させることは可能です。給与所得の課税所得が2,000万円であった場合には、所得税、住民税がゼロになる計算です。

 

平成27年度に「国外に所在する中古の建物に係る所得税法上の減価償却費について」によると、富裕層が多く住む、麹町、京橋、芝、麻布、四谷、目黒、雪谷、玉川、渋谷、芦屋各税務署に提出された確定申告書で平成23年度から平成25年度の3年間で述べ337人が39億8,650万円の減価償却費を計上していたとしています。

 

アベノミクスによる景気拡大前の調査であり、近年では、大手不動産仲介会社(東急リバブル、オープンハウス、エイブル)などが積極的に海外不動産の取り扱いをしていたため、もっと多くの方がこの節税スキームを利用してたと考えられます。

 

海外不動産による節税スキーム

 

税制改正大綱(令和2年度)の海外不動産節税封じの影響範囲は?

今回の改正は個人が海外不動産投資で生じた損失(減価償却費)について給与所得との通算の封じるもので、2021年以降に新規で海外不動産に投資したケースだけでなく、すでに海外不動産を所有しているケースにも適用されるもので、影響が大きくなっています。

今回の税制改正を受け、海外不動産販売に注力していたオープンハウスの株価が急落するなど影響が広がっています。

今回の改正は個人の所得税との損益通算による節税を封じるもので、法人での節税については対象外となるため、会社経営者の方は該当物件を法人に売却するなどの対応に迫られますね。

また、これから海外不動産を行う場合には、減価償却による節税をあてにすることなく、投資として価値があるかの判断が重要になりそうです。

税制改正大綱(令和2年度)

 

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