税務調査に納得できないとき|再調査の請求・審査請求の期限と流れ

税務署の処分について書類を確認し税理士に相談する事業者のイメージ

税務調査の指摘に納得できないときは、修正申告に応じずに更正処分を受け、その処分を争うのが原則の道筋です。争い方は税務署等への「再調査の請求」と、国税不服審判所への「審査請求」の2つで、どちらも期限は処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内です。

実際に主張が通るのかも気になるところでしょう。令和7年度の公表データでは、納税者の主張が何らかの形で認められた割合は再調査の請求で8.0%、審査請求で7.2%。決して高くはありませんが、認められている事案には共通点があります。

修正申告に応じるか、争うかの分かれ道

税務調査での指摘に納得したときは、修正申告をして不足分の税金を納めます。ただし修正申告は「自分で申告内容を訂正した」という扱いになるため、その内容について後から不服を申し立てることはできません。

どうしても納得できない場合は、修正申告をしないという選択になります。応じなければ税務署は職権で税額を確定する「更正処分」を行い、その通知書が届きます。この更正処分が、不服申立ての対象になります。

国税庁は、修正申告の勧奨に応じるかどうかは納税者の任意の判断であり、応じなかったからといって応じた場合と比べて不利な取扱いを受けることは基本的にないと明記しています(国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問25)。

「断ると心証が悪くなるのでは」と不安に感じる方は多いのですが、まずはこの前提を押さえてください。調査当日までの準備と受け答えの基本は税務調査の対応|やってはいけないことと準備する帳簿・書類で整理しています。

修正申告をした後で「やはり税額が多すぎた」と気づいた場合は、不服申立てではなく更正の請求という別の手続きがあります。請求できる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。

請求にあたっては「更正の請求書」に正しいと考える税額や請求の理由を記載し、理由の基礎となる「事実を証明する書類」を併せて提出する必要があります(同FAQ 問26)。この書類を用意できるかが、実務上の最初の関門になります。

なお加算税の重さは「いつ気づいて直したか」で変わります。調査による更正を予知した後の修正申告や更正では、新たに納める税金に10%(当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%)の過少申告加算税がかかります。

調査の事前通知後で更正を予知する前なら5%(超過部分は10%)、事前通知の前に自主的に修正申告をすれば過少申告加算税はかかりません。早く気づいて自主的に直すほど負担が軽くなる仕組みです。

※修正申告を「する/しない」の判断は、加算税・延滞税の負担や、争点の見込みを踏まえた総合判断になります。ひとりで決めず、税理士に相談してから結論を出してください。

争う道は2つ、その先に訴訟|期限は「通知の翌日」から数える

平成28年(2016年)4月1日施行の行政不服審査法・国税通則法の改正により、手続きの名称と仕組みが変わりました。現在の選択肢は次の2つです。

  • 再調査の請求(旧・異議申立て)を経てから審査請求へ:まず処分をした税務署長等に見直しを求め、その結果になお不服があれば国税不服審判所へ審査請求する。
  • 直接審査請求:再調査の請求を経ずに、はじめから国税不服審判所長へ審査請求する。

令和7年度は、審査請求3,159件のうち2,522件(79.8%)が直接審査請求でした。再調査の請求を挟まず、最初から第三者機関に判断を求める納税者が大多数を占めています。

再調査の請求と審査請求は行政上の手続きで、あわせて「不服申立て」と呼ばれます。訴訟は司法手続きで、裁判所で審理されます。

再調査の請求(旧・異議申立て)

更正処分などを行った税務署長等に対して、その処分の取消しや変更を求める手続きです。期限は処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内(平成28年4月の改正で、旧・異議申立ての「2か月」から延長されました)。

税務署等は改めて見直しを行い、却下・棄却・取消し(変更)のいずれかの結果を「再調査決定書」で通知します。標準審理期間は3か月と定められています。

審査請求

国税庁の特別の機関である国税不服審判所に対して、処分の取消しや変更を求める手続きです。期限は、再調査の請求を経た場合は再調査決定書謄本の送達を受けた日の翌日から1か月以内、経ずに直接行う場合は処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内です(国税庁タックスアンサー No.7200)。

見落としやすいのが、もう一つの上限です。処分があったことを知った日から3か月以内であっても、処分のあった日の翌日から1年を超えると申し立てられません(正当な理由がある場合を除く)。通知が手元に届いていなかったケースでは、この1年が壁になります。

審判所は、納税者と課税庁の間に立つ公正な第三者的立場で裁決を行い、審判官には税理士・弁護士・公認会計士など民間出身者も登用されています。審査請求に国へ納める手数料はかかりません。標準審理期間は1年で、令和7年度は98.8%が1年以内に処理されています。

税務訴訟

審査請求の裁決になお不服がある場合は、裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内に、裁判所へ処分の取消しを求める訴えを提起できます。

また、審査請求をした日の翌日から3か月を経過しても裁決がないときは、裁決を待たずに訴えを起こすこともできます。この場合、訴訟とは別に引き続き裁決を求めることも可能です。行政を相手取る裁判となるため、弁護士が訴訟代理人となり、相当の時間と費用がかかります。

手続き申立先期限(原則)代理人・費用の目安
再調査の請求処分をした税務署長・国税局長処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内税理士が代理可/手数料なし
審査請求(直接)国税不服審判所長処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内税理士が代理可/手数料なし
審査請求(再調査を経る場合)国税不服審判所長再調査決定書謄本の送達を受けた日の翌日から1か月以内税理士が代理可/手数料なし
訴訟裁判所裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内弁護士が代理/印紙代・弁護士費用が必要

期限を1日でも過ぎると原則として「却下」となり、内容の審理をしてもらえません。いずれの期限も「通知を受けた日」ではなくその翌日から数える点に注意してください。

通知書が届いたら、まず封筒と通知書の日付を確認し、期限をカレンダーに書き込むことをおすすめします。

そもそも不服申立ての対象にならないもの

争えるのは「処分」に限られます。調査の進め方への不満がすべて不服申立てになるわけではない点は、あらかじめ知っておくと無用な期待をせずに済みます。国税庁のFAQでは、次のように整理されています。

  • 事前通知をしないこと自体は処分に当たらず、不服申立てはできません(問21)。
  • 調査を行うこと・調査対象が拡大すること自体も処分に当たらず、不服申立てはできません(問32)。
  • 一方、提出した帳簿書類等の留置き(預かり)について返還を求めたのに返還されない場合は、税務署長への再調査の請求または国税不服審判所長への審査請求ができます(問11)。

調査手続そのものへの不満は、争うのではなくその場で調査担当者や税理士を通じて確認・協議するのが基本です。

数字で見る「争って認められる可能性」(令和7年度)

不服申立てや訴訟で本当に主張が通るのかは、誰もが気になるところです。国税庁と国税不服審判所は毎年その実績を公表しており、令和8年6月に公表された令和7年度の結果は次のとおりです。

手続き発生件数処理(終結)件数納税者の主張が認められた件数・割合
再調査の請求1,713件(前年度比+20.3%)1,448件116件(一部96・全部20)=8.0%
審査請求3,159件(同▲10.7%)3,128件226件(一部146・全部80)=7.2%
訴訟202件(同+3.1%)201件国側敗訴8件(一部2・全部6)=4.0%
令和7年度の認容割合を示す棒グラフ。再調査の請求8.0%、審査請求7.2%、訴訟4.0%
いずれの手続きも、認められるのは主張と証拠がそろった事案に限られます(令和7年度)。

前年度(令和6年度)は審査請求の認容割合が17.9%と高い水準でしたが、令和7年度は7.2%へ低下しています。年度によって大型事案の有無で割合は動くため、「○%だから勝てる/勝てない」と単純に読むのは適切ではありません。

数字が示しているのは、どの手続きでも認められるのは主張と証拠が十分にそろった事案に限られるという現実です。

「却下」と「取下げ」は別物|内訳の正しい読み方

認容割合と同じくらい見ておきたいのが、認容以外の終わり方です。令和7年度の処理(終結)件数の内訳は次のようになっています。

令和7年度の審査請求3,128件の処理内訳を示す棒グラフ。棄却69.5%、却下12.1%、取下げ11.1%、認容7.2%
1割強は「却下」=期限切れなどで中身を審理してもらえずに終わっています。
手続き棄却取下げ等却下認容
再調査の請求64.4%18.2%9.4%8.0%
審査請求69.5%11.1%12.1%7.2%
訴訟84.1%4.5%7.5%4.0%

※国税庁「令和7年度における再調査の請求の概要」「令和7年度における訴訟の概要」、国税不服審判所「令和7年度における審査請求の概要」(いずれも令和8年6月公表)の処理(終結)件数に占める割合。訴訟の「認容」は国側敗訴の割合、「取下げ等」は取下げ及び移送の件数です。

目を引くのは再調査の請求の「取下げ等」18.2%です。これは単に取りやめた件数だけではありません。国税庁の注記によれば、取下げ・みなす取下げのほかに「みなす審査請求」=再調査の請求が審査請求として扱われたものも含まれます。

再調査の請求をした日の翌日から3か月たっても決定がないときは、決定を待たずに審査請求へ進めます。つまりこの18.2%には、入口で終わったのではなく審判所へ舞台を移した件数が相当含まれるということです。

いっぽう、内容を審理してもらえずに終わる「却下」は、再調査の請求で9.4%、審査請求で12.1%、訴訟で7.5%。いずれも1割前後で、無視できない水準です。

却下される典型的なケース

国税不服審判所は、審査請求が却下される場合を具体的に挙げています(国税不服審判所「審理と裁決」)。期限切れだけではない点に注意してください。

  • 審査請求の対象が処分でないとき(例:延滞税のお知らせなど、処分に該当しないものを対象とした)
  • 対象となった処分がはじめから存在しない、または裁決前に消滅したとき
  • 権利や法律上の利益を侵害しない処分を対象としたとき(例:納税額を減らす更正処分)
  • 先に行った再調査の請求が、期限切れなどを理由に却下されていたとき
  • 正当な理由なく、法定の審査請求期間を過ぎて申し立てたとき
  • 記載不備の補正を求められたのに、指定された期間内に補正しなかったとき

「主張が弱くて負けた」のではなく、入口で終わってしまう事案が一定数あるということです。裏を返せば、期限・対象・書き方を外さなければ、少なくとも中身を見てもらう土俵には立てます。

一方で、手続きの迅速化は進んでいます。再調査の請求は3か月以内の処理が99.8%、審査請求は1年以内の処理が98.8%。以前より「結論が出るまで長く待たされる」負担は小さくなっています。

審査請求で納税者が使える3つの権利

審査請求は、書面のやり取りだけで淡々と進むわけではありません。国税通則法は審査請求人に具体的な手続上の権利を与えており、使うかどうかで審理の見え方が変わります。

1. 口頭意見陳述|課税庁の担当者に質問できる

書面の提出に加えて、口頭で意見を述べる申立てができます。申立てがあれば、担当審判官は原則としてその機会を与えなければなりません。

期日には原処分庁の担当者にも原則として出席が求められ、審査請求人は担当審判官の許可を得て、その担当者に質問できます。税理士などの補佐人を帯同することも可能です(こちらも許可が必要)。

2. 証拠書類等の閲覧・写しの交付

原処分庁が提出した「処分の理由となった証拠書類等」や、担当審判官が調査で集めた資料について、閲覧と写しの交付を求められます。担当審判官は、第三者の利益を害するおそれなど正当な理由がなければ拒否できません。

写しの交付には用紙1枚10円の手数料(収入印紙で納付)がかかりますが、持参したカメラで撮影する方法なら手数料はかかりません(庁舎管理上の理由で認められない場合もあります)。

3. 質問・検査等の申立て

審理に必要なときは、担当審判官が関係人への質問、帳簿書類の検査、鑑定人による鑑定などを行います。これは職権だけでなく、審査請求人の申立てによっても行われます。

注意したいのは締切りです。担当審判官が「審理手続の終結」を通知した後は、反論書の提出・口頭意見陳述の申立て・証拠書類等の提出・主張の追加や変更ができなくなります。出すべきものは終結前に出し切る必要があります。

争っても「原処分より不利」にはならない

「争ったら、かえって重く課税されるのでは」という不安は少なくありません。ここは制度上はっきりしています。審判所は、原処分以上に審査請求人に不利益となる裁決をすることができません。

さらに裁決は関係行政庁を拘束するため、原処分庁は裁決に不服があっても訴えを提起できません。納税者側の主張が認められれば、その結論はそこで確定します。裁決は、担当審判官1名と参加審判官2名以上で構成する合議体の議決に基づいて行われます。

納税資金の不安は「猶予」の申請で和らげられる

争っている間も納税義務は止まりません。ただし手当てはあります。再調査の請求人は、再調査決定の時までに「徴収の猶予」を申請できます(国税通則法105条2項)。

一時に納付すると事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがあるときは、「換価の猶予」も選べます。主な要件は、①一時の納付により事業の継続または生活の維持が困難になるおそれがあること、②納税について誠実な意思があることです。

あわせて、③その国税以外の国税の滞納がないこと、④納期限から6か月以内に申請書を提出すること、⑤原則として担保を提供することが求められます。担保は、猶予を受ける金額が100万円以下・期間が3か月以内・提供できる財産がないといった場合には不要です。

認められれば財産の換価(売却)が猶予され、延滞税の一部が免除される場合もあります。申請は国税庁「換価の猶予の申請手続」のとおりe-Taxでも可能で、不許可処分に不服があれば、それ自体も不服申立ての対象になります。

注意点は時期です。延滞税は納期限の翌日から発生するため、申請が遅れるとその分は軽減されません。早めに税務署へ相談してください。

争うかどうかを決める前に確認したいこと

  • 争点は「事実」か「法解釈」か:帳簿や契約書などの証拠で覆せる事実認定の争いなのか、法律の解釈の相違なのかで、通る見込みは大きく変わります。
  • 手元の証拠でどこまで説明できるか:主張を裏づける資料(契約書・議事録・作業日報・メールの記録など)が残っているかが決定的です。
  • 時間とコストに見合うか:訴訟は弁護士費用と年単位の時間がかかります。争う税額との見合いも冷静に検討してください。
  • 誰に代理してもらうか:再調査の請求と審査請求は税理士が代理人になれます。訴訟は弁護士が代理人となります。
  • 納付の資金繰りをどうするか:争っている間も納税義務は止まりません。前述の猶予制度の利用も含めて検討します。

不服申立てをすべきかどうかは、税務調査の対応に慣れた税理士とよく相談したうえで判断することをおすすめします。交渉・加算税・不服申立てまで含めた実務の全体像は税務調査の対策【応用編】|交渉・不服申立て・加算税の実務にまとめています。

調査の段階で論点を整理し、証拠を残しておくことが、結局は最も有効な備えになります。

>>税務調査に強いおすすめ税理士事務所を見る

よくある質問

Q. 修正申告をしてしまった後でも、不服を申し立てられますか?

A. 修正申告の内容そのものについて不服申立てはできません。ただし計算違いなどで納める税金が多すぎた場合は、原則として法定申告期限から5年以内であれば「更正の請求」ができます。請求には事実を証明する書類の提出が必要です。

Q. 再調査の請求と直接審査請求は、どちらを選ぶべきですか?

A. 一概には言えません。処分をした税務署等に見直してもらうのが再調査の請求、第三者機関に判断してもらうのが審査請求です。令和7年度は約8割が直接審査請求でしたが、事実関係の追加説明で解決が見込める事案では再調査の請求が有効なこともあります。

Q. 争っている間、税金は納めなくてよいのですか?

A. いいえ。不服申立てをしても納税義務は止まりません。ただし再調査の請求人は再調査決定の時までに「徴収の猶予」を申請でき(国税通則法105条2項)、一時の納付で事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがあるときは「換価の猶予」も申請できます。

Q. 期限を過ぎてしまったら、どうなりますか?

A. 原則として「却下」となり、中身の審理はされません。令和7年度は審査請求の12.1%、再調査の請求の9.4%が却下で終わっています。天災など正当な理由がある場合の例外は極めて限定的です。通知書を受け取ったら、まず期限を確認してください。

Q. 税理士に代理を頼めますか。費用はどれくらいかかりますか?

A. 再調査の請求と審査請求は税理士が代理人になれ、国に納める手数料はかかりません(証拠書類等の写しの交付を求める場合の実費を除く)。税理士報酬は別途必要です。訴訟は弁護士が代理人となり、印紙代と弁護士費用が発生します。

まとめ

税務調査の指摘に納得できないとき、納税者には再調査の請求・審査請求・訴訟という3つの道が用意されています。いずれも期限が厳格で、通知の翌日から数えて3か月・1か月・6か月。過ぎれば内容を見てもらえません。

令和7年度に納税者の主張が認められた割合は、再調査の請求8.0%、審査請求7.2%、訴訟4.0%でした。却下はいずれも1割前後。再調査の請求の「取下げ等」18.2%には、審査請求へ移った件数も含まれます。

数字だけを見れば認められる割合は高いとはいえませんが、証拠と論理がそろった事案は現に認められています。口頭意見陳述や証拠書類等の閲覧といった権利も、使えば審理の見通しが変わります。

感情ではなく、証拠で語ること。そのためにも、調査の段階から税理士と連携し、記録を残しておくことが何よりの備えになります。調査の全体像は税務調査の流れ|事前通知から当日・修正申告・不服申立てまでで確認できます。

※本記事の統計は、国税庁「令和7年度における再調査の請求の概要」「令和7年度における訴訟の概要」、国税不服審判所「令和7年度における審査請求の概要」(いずれも令和8年6月公表)にもとづきます。制度・期限・手数料は改正されることがあるため、手続きの詳細と最新の取扱いは国税庁・国税不服審判所の公式サイトでご確認ください。

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*