重加算税とは|税率35〜50%・7年さかのぼりの仕組みと対策

帳簿と領収書を確認しながら税務調査に備える事業者と税理士のイメージ

重加算税は、売上や経費について「隠ぺい」または「仮装」があったと判断されたときにだけ課される加算税です。税率は不足税額の35%(無申告だった場合は40%)で、過去5年以内に同じ処分を受けていれば45〜50%まで重くなります。裏を返せば、単純な計上ミスや期ずれで課されることはありません。実務で本当に怖いのは、故意ではない誤りを「故意だった」と判断されてしまう場面です。以下の数値は国税庁・財務省の公表資料で2026年9月に確認しています。

重加算税は「仮装・隠ぺい」があったときだけ課される

重加算税は、事実の仮装や隠ぺいが確認された場合に、ほかの加算税(過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税)に代えて課されるペナルティです。税率が高いだけでなく、その後しばらく税務調査の対象としてマークされやすくなるなど、事業への影響も小さくありません。

重加算税の疑いがあると、税務調査では売上・在庫・領収書が一つひとつ細かく確認されます。意図的に税を免れていた場合、重加算税を避けることはできません。

隠ぺい=記録を隠すこと、仮装=事実を装うこと

重加算税の対象になるのは、所得税・法人税・消費税などについて次のいずれかが確認された場合です。

  • 隠ぺい:本来計上すべき売上や在庫などを隠すこと。
  • 仮装:請求書の数字を書き換える、ありもしない取引をねつ造するなど、事実を装うこと。

注意したいのは、意図しない経理ミスでも「仮装」「隠ぺい」を疑われることがある点です。入力ミスや申告漏れが故意でないことを税務調査で説明・証明できなければ、不正とみなされてしまうおそれがあります。行き過ぎた節税も、調査で徹底的に確認されます。

実際に不正と判断された手口の例

抽象的な説明だけではイメージしにくいので、国税庁が令和6事務年度の法人税等の調査事績で公表した実際の不正の手口を挙げます。いずれもAI・データ分析で「調査必要度が高い」と抽出された法人で、調査によって把握されたものです。

  • 売上伝票を破棄することにより、破棄した分の現金売上を除外していた
  • 売上代金を代表者の個人口座に入金させることにより、売上を除外していた
  • 偽りの請求書を作成し、金銭の貸付けを原価(外注費)に仮装して計上していた
  • 偽りの出勤表等を作成し、架空の人件費を計上していた

共通しているのは、本来あるはずの記録を消す・実態のない書類を作るという点です。逆にいえば、日々の記録が残っていて、そこに矛盾がなければ、単なるミスを「仮装・隠ぺい」と判断される余地は小さくなります。

加算税は4種類、重加算税だけが突出して重い

税務調査で課される加算税は主に4種類です。重加算税はそのなかで突出して重くなっています。

加算税の種類税率の目安課されるケース
過少申告加算税10%(一部15%)期限内に申告したが、税額が本来より少なかった
無申告加算税15〜30%
(自主申告は5%)
期限内に申告しなかった
不納付加算税10%(自主的なら5%)源泉徴収した所得税を期限までに納めなかった
重加算税35〜40%
(繰り返しは+10%)
仮装・隠ぺいがあった(最も重い)

過少申告加算税は、追加で納める税額の10%(期限内に申告した税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)。過少申告加算税の詳しい仕組みは別記事でも解説しています。

無申告加算税は、納める税額のうち50万円以下の部分が15%、50万円超300万円以下が20%、300万円を超える部分は30%です(300万円超30%は令和6年〔2024年〕1月1日以後に申告期限が到来する分から)。さらに、前年分・前々年分の国税について無申告加算税や重加算税を課されたことがある人が再び無申告だった場合は10%が加算されます(連年無申告加重)。詳しくは無申告加算税の記事もあわせてご覧ください。

不納付加算税は、源泉所得税の納付が遅れた場合に課され、原則10%(自主的に納付した場合は5%)です。

気づいた時期で税率が3段階に変わる

見落とされがちですが、過少申告加算税と無申告加算税は「いつ気づいて申告したか」で税率が3段階に変わります。ここを知っているかどうかで、負担は大きく変わります。

申告したタイミング過少申告加算税無申告加算税
調査の通知を受ける前に自主的に修正・期限後申告課されない5%
調査の通知後・更正等を予知する前5%
(50万円超の部分は10%)
10%
(50万円超15%/300万円超25%)
調査で指摘されてから(更正等を予知した後)10%
(50万円超の部分は15%)
15%
(50万円超20%/300万円超30%)

無申告加算税の段階別の割合は、国税庁のタックスアンサー No.2024(確定申告を忘れたとき)で確認できます。つまり、誤りに気づいたら「調査の通知が来る前」に自主的に申告するのが、金銭面でも最も有利です。通知が来てしまった後でも、調査官に指摘される前に自分から修正すれば軽減されます。「どうせ同じ」と考えて放置するのは損です。

重加算税の税率は35%・40%、繰り返すと45%・50%

重加算税は、どの加算税に代えて課されるかで税率が変わります。

ケース重加算税の税率過去5年以内に無申告加算税・重加算税ありの場合
過少申告(期限内に申告あり)に代えて35%45%
無申告(期限後・無申告)に代えて40%50%
不納付(源泉所得税)に代えて35%45%

つまり、期限内に申告していた場合は不足税額の35%、無申告だった場合は40%。さらに過去5年以内に無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合は、それぞれ+10%(45%・50%)に重くなります(短期累犯加重)。加算税の全体像は財務省「加算税制度の概要」に一覧でまとまっています。

また、電子帳簿保存法の対象となるスキャナ保存された書類のデータや電子取引の取引データを改ざん・隠ぺいして申告漏れがあった場合は、重加算税がさらに10%加重されます(令和4年〔2022年〕1月以降)。請求書PDFの差し替えや電子データの意図的な削除は、紙の書類の場合より重いペナルティにつながり得るということです。

この10%加重には、令和7年度税制改正で除外措置が設けられました。国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使い、一定の要件を満たして電子取引データを送受信・保存し、あらかじめ届出をしている場合は加重の対象から外れます。ただし適用されるのは令和9年(2027年)1月1日以後に法定申告期限が到来する国税からで、現時点ではまだ先の話です。「電子データはシステムを入れれば安心」と早合点せず、当面は改ざんの痕跡を残さない運用そのものを守ってください。

帳簿を出せないと、重加算税でなくても税率が上がる

もう一つ、実務で影響が大きいのに知られていないのが「不記帳加重」です。税務調査で一定の売上(営業収入)に係る帳簿の提出等を求められたときに、次のような状態だと、過少申告加算税・無申告加算税が加重されます(所得税・法人税・消費税が対象)。

  • 帳簿を提出しなかった、または記載が著しく不十分(売上の2分の1以上が記載されていない)……+10%
  • 記載が不十分(売上の3分の1以上2分の1未満が記載されていない)……+5%

逆に、電子帳簿保存法上の要件を満たす「優良な電子帳簿」について、あらかじめ届出をしたうえで申告漏れがあった場合は、過少申告加算税が5%軽減されます(ただし仮装・隠ぺいがある場合は適用されません)。きちんと帳簿をつけて出せる状態にしておくこと自体が、そのままペナルティを軽くするという構造になっています。

延滞税は令和8年から年2.8%・9.1%に上がっている

加算税とは別に延滞税もかかります。延滞税は法定納期限の翌日から実際に納付する日までの日数に応じて計算され、割合は年ごとに見直されます。令和8年(2026年)1月1日から令和8年12月31日までの割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以降が年9.1%です(令和8年の延滞税特例基準割合は年1.8%)。令和4年から令和7年までの年2.4%・年8.7%から引き上げられているため、以前の記事や資料の数値をそのまま使わないよう注意してください。割合の推移は国税庁「延滞税の割合」に、計算方法は延滞税の計算と軽減策の記事にまとめています。

さらに重要なのが、重加算税が課されるケースでは延滞税の「1年ルール」が使えないという点です。通常は、期限内申告書の提出後1年以上たってから修正申告や更正があった場合、延滞税の計算期間の一部が除外されます(除算期間)。ところがこの取扱いは、重加算税が課された場合には適用されません。本税+重加算税+長期間分の延滞税が積み上がり、合計は非常に大きな金額になりがちです。

調査を受けた法人の4件に1件で不正計算が見つかっている

国税庁が公表した令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の法人税等の調査事績によると、法人への実地調査は約5万4千件行われ、そのうち約1万3千件で仮装・隠ぺいなどの不正計算が見つかりました。不正発見割合は23.5%で、調査を受けた法人のおよそ4件に1件の計算です。実地調査による追徴税額(法人税・消費税)の総額は3,407億円と直近10年で最高、調査1件当たりの追徴税額も634万2千円(前年比+15.4%)と高水準になりました。国税庁はAIを活用して調査必要度の高い法人を抽出しており、決して他人事ではありません。なお、これは2025年12月に公表された最新の集計で、令和7事務年度分は本記事の更新時点(2026年9月)ではまだ公表されていません。

不正発見割合は業種によって差があります。令和6事務年度に割合が高かったのは、現金取引の比率が高い業種でした。

令和6事務年度の法人税の不正発見割合。バー・クラブ62.3%、その他の飲食45.2%、外国料理40.2%、美容34.5%、大衆酒場・小料理34.4%、法人全体23.5%
現金取引の比率が高い業種は不正発見割合が高い傾向。法人全体の不正発見割合は23.5%。

ただしこれは「その業種だから不正をしている」という話ではなく、現金商売は記録が残りにくく、売上の把握が論点になりやすいということです。該当する業種の方は、日々の売上記録と現金管理をより丁寧に残しておくと、調査での説明がしやすくなります。

個人の税でも同様です。相続税では、令和6事務年度の実地調査9,512件のうち申告漏れ等の非違が7,826件見つかり、そのうち1,065件(13.6%)に重加算税が課されています。公表された事例には、相続開始前に引き出した現金を自宅金庫で保管して税理士にも伝えなかったケースや、基礎控除以下になるよう家族名義口座へ預金を移したケースが挙げられています。

重加算税が絡むと調査は最大7年さかのぼる

税務調査は通常、過去3年分を確認します。大きな誤りが見つかれば過去5年分へ、さらに仮装・隠ぺいなど不正の疑いがあれば過去7年分までさかのぼって調査されます。「重加算税は7年」と言われるのはこのためです。7年分の本税に重加算税と延滞税が重なれば、数百万〜数千万円規模の負担になることもあります。いったん重加算税を課されると税務署からの信用も下がり、その後の調査対象になりやすくなります。調査後の納税の流れは税務調査後の追加納税の記事で整理しています。

重加算税の対象にならないミスもある

すべての誤りが重加算税になるわけではありません。たとえば、売上や経費を実際と異なる日付で計上してしまった(期ずれ)、経費にならない費用を計上してしまったといった単純なミスは、仮装・隠ぺいではないため重加算税の対象にはなりません(修正申告は必要です)。重加算税は、あくまで「故意に事実を仮装・隠ぺいした」場合に課されるものです。

調査官から重加算税を示唆されても、仮装・隠ぺいの事実がないと考えるなら、その場で安易に認めず、事実関係を整理して主張することが大切です。処分に納得できない場合は、再調査の請求や審査請求という手続きも用意されています。

重加算税を課されないための対策

最大の対策は、当然ながら仮装・隠ぺいをしないことです。ただし、実際には不正の意図がなくても疑われてしまうことがあります。たとえば請求書を誤って二度入力(二重計上)したまま申告すると、それが故意と判断されれば重加算税の対象になりかねません。

高性能な会計ソフトを使っても、人為的な二重計上は完全には防げません。伝票に管理番号を付ける、入力・確認のルールを整えるなど、経理体制を見直すことでミスは大きく減らせます。日々の記帳と証憑(領収書・請求書)の保存を徹底しておくことが、いざというときに「故意ではない」と説明する材料になります。電子データで受け取った請求書・領収書は、電子帳簿保存法のルールに沿ってそのまま保存し、後から編集・削除した形跡を残さないことも大切です。

整理すると、備えは次の3点に集約されます。

  • 記録を消さない・作らない……売上伝票や取引データを破棄しない、実態のない書類を作らない。
  • 帳簿を「出せる状態」にしておく……不記帳加重を避けられるうえ、優良な電子帳簿なら軽減も受けられます。
  • 誤りに気づいたら通知前に自主的に申告する……加算税が不課税または軽減されます。

税務調査の対象になった場合は、事前に税理士と打ち合わせをして入念に準備することが大切です。調査官の質問にあいまいに答えてしまうと、不利に働くことがあります。あやふやな知識で対応せず、税務調査に強い税理士に任せると安心です。

よくある質問(FAQ)

Q. ミスをしただけで重加算税になりますか?

A. なりません。仮装・隠ぺいがなければ重加算税の対象にはならず、過少申告加算税や無申告加算税で済みます。単純な期ずれや計上誤りは修正申告で対応します。

Q. 調査の通知が来る前に自分で気づいたらどうなりますか?

A. 通知前に自主的に修正申告・期限後申告をすれば、過少申告加算税は課されず、無申告加算税は5%まで軽減されます。通知後でも、調査官に指摘される前なら税率は下がります。

Q. 重加算税は何年さかのぼって課されますか?

A. 仮装・隠ぺいがある場合は最大7年分です。通常の調査は過去3年分、誤りが大きければ5年分、不正の疑いがあれば7年分までさかのぼります。

Q. 帳簿を紛失していると重加算税になりますか?

A. 紛失そのものが直ちに仮装・隠ぺいと判断されるわけではありません。ただし帳簿を提出できない場合、過少申告加算税・無申告加算税が最大10%加重されます(不記帳加重)。故意に破棄したと判断されれば重加算税の対象になり得ます。

Q. 重加算税は経費(損金)にできますか?

A. できません。重加算税・延滞税などのペナルティは損金に算入できず、法人税の計算上は差し引けません。

まとめ

重加算税は税率35〜50%と重く、延滞税も令和8年から年2.8%・年9.1%へ引き上げられました。さらに重加算税が課されると延滞税の1年ルールが使えず、最大7年分がまとめて課税されることもあります。金額が大きくなる仕組みが何重にも用意されている、というのが実像です。

一方で、重加算税は「うっかりミス」では課されません。課されるのは仮装・隠ぺいがあったときだけです。記録を残し、帳簿を出せる状態にしておき、誤りに気づいたら早めに自主申告する——この3点を守っていれば、過度に恐れる必要はありません。判断に迷う場面が出てきたら、税務調査に強い税理士に相談しましょう。なお税率や制度は改正されることがあるため、最新の内容は国税庁の公式サイトでご確認ください。

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