税務調査対策

税務調査で指摘される?延滞税の対策法とは?

税務調査で指摘される可能性がある延滞税について、注意点や計算方法、課税されないための対策などを説明します。

知られざる延滞税のすべてに迫る

税務調査で課される罰金の1つである延滞税。課税されるケースや算出方法、注意点などを把握している人は意外に少ないのではないでしょうか?いい加減な申告をしたばっかりに納税額が元の倍近くになってしまうこともあるので要注意。延滞税の概要から最小限に抑えるポイント、課税されないための対策方法を一緒に確認していきましょう。

延滞税とは?

延滞税とは税金の納付が遅れたり、期限までに申告をしなかったりした場合や、過少申告・脱税など申告に問題があった場合に課される税金のことです。

納付期限の翌日から日数に応じて課税されます。延滞日数が2カ月を超えるか超えないかで加算される税率が異なるのが特徴。延滞すればするほど額が大きくなっていきます。納付が遅れると理由に関わらず延滞税が課されてしまい、支払う税金額が大きくなってしまうので、延滞に気づいたらなるべく早く納付することが大切です。

課税されるケースは?

延滞税が課税されるケースは以下のような場合です。

  • 申告などで確定した税額を法定期限までに納付しなかった場合
  • 期限後申告書または修正申告書を提出していて、納付しなければならない税額がある場合
  • 税務署から更正や決定の処分を受けて、納付しなければならない税額がある場合

いずれの場合も、法定期限の翌日から納付するまでの日数に応じた延滞税が発生します。本税だけに課される税金なので、加算税に対しては課されません。

特例が適用されるケースもあります。例えば期限内申告をした場合においては、法定申告期限後1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日までの期間は、延滞税の計算除外期間となります。

また、期限後申告であった場合も、期限後申告から1年以上経過して修正申告や更正があったときには、期限後申告を1年経過する日の翌日から修正申告書を提出した日までの期間は延滞税の計算除外期間となります。

延滞税の計算方法は?

延滞税は次のように計算できます。

延滞税=(納付すべき本税の額×2.9%×2カ月分の延滞日数÷365)+(納付すべき本税の額×9.2%×2カ月を超過した分の延滞日数÷365)

延滞税は、納付期限より2カ月以内に納める場合と納期限より2カ月以上経過してから納める場合によって税率が変わります。

  • 納付期限より2ヶ月以内に納付する場合…2.9%
  • 納付期限より2ヶ月以上経過して納付する場合…9.2%

上記にあげた計算式は、2カ月以上延滞している場合の計算式も含まれています。延滞日数が2カ月以内であれば「納付すべき本税の額×2.9%×2カ月分の延滞日数÷365」で計算可能です。

例えば、納税額が100万円、納付期限より30日延滞して納付した場合を見てみましょう。

(100万×0.029×30÷365)=2,383円

納税額は同じ100万円でも、納付期限より70日(2カ月+8日)延滞してしまった場合…

(100万×0.029×62÷365)+(100万×0.092×8÷365)=4,926+2,016=6,942円

となります。

延滞税を最小限に抑えるポイントは?

延滞税を最小限に抑えるには、以下の4つのポイントをチェックしてみてください。

延滞期間が2カ月以内かどうか

延滞税は納付期限から経過した日数に応じて課税されます。2カ月以内の延滞期間であれば、低い税率になるので延滞に気づいたら2カ月以内に納付できるように計画を立てましょう。

税金が控除される特例を確認

申告期限から1年以上経過していて、自主的に修正申告をする場合は申告期限の1年後から修正申告を提出した日までの延滞税が計算から控除されます。焦って間違った申告をしてしまうと損をしてしまうことがあるので気をつけましょう。ただし、納税額を故意に隠ぺいしたり嘘の申告をしていたなど、重加算税の対象となる場合は認められません。

延滞税とともに発生する可能性のある加算税を把握

場合によっては延滞税と同時に加算税の支払いが発生することがあります。5%~40%の税金が発生するので、あらかじめ把握しておきましょう。

  • 無申告加算税…正当な理由なく申告期限までに申告しなかった場合に課される税金
  • 過少申告加算税…納める税金が少なかったりして、税務署より申告税額の更正を受けた場合に課される税金
  • 重加算税…隠ぺい・仮装により、故意に実際よりも少ない納税額を申告した場合に課される税金

延滞税を支払える場所をチェック

納税の延滞に気づいたらなるべく早く納め直すのが大切。納税は税務署だけでなく、金融機関や郵便局の窓口でも対応してもらえることがあります。対応窓口を確認して、素早く対応しましょう。

課税されないための対策

延滞税は、期限内に正しい額の税金を納められていないことが原因で課される税金です。

申告漏れや過少申告をしないように努めれば、課されることは少ないでしょう。申告のタイミングがわからなかったり、適切な納税額の算出が難しかったりするのであれば、税理士に管理を依頼するのがおすすめ。税金によっては複雑で細かい法律が関わってくるため、自分だけで申告を行なうのが難しいケースもあるでしょう。

しかし、税理士とうまく意思疎通ができないと余計に税金がかかってしまうことになるので、信頼できる税理士事務所にお願いするのが大切です。本来の納税額の倍近い税金を課されてしまったというケースが発生するのは、以下のケースです。

  • 税理士に相談してもきちんと対応してくれず、経営者自身の浅知恵で判断した結果申告ミスを起こしてしまった場合
  • 納めるべき税金を税理士に隠していて、後から発覚してしまった場合
  • そもそも税理士に依頼せず誤った解釈をしてしまった場合
  • 悪徳税理士が関与していた場合

このようなケースを避けるためにも、きちんと法に基づいた提案をしてくれる税理士に依頼するようにしてください。専門性が高くキャリアの長い税理士が在籍しているかをチェックすると良いでしょう。

もし納付期限に合わせて納税する金銭的余裕がなかった場合、税務署へ延納を申し出ることができます。分割払いも認められているので、納税が難しいと感じるときにもまずは税務署や税理士事務所へ相談するのがベストです。

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税務調査の対象になりやすい事業について解説

どのような会社が税務調査の対象になりやすいのか特に事業を運営している人の中には知りたい人は多いです。影響が大きい要素の一つは売上規模になります。基本的に売上が大きい会社は税務調査に入られやすいです。売上規模とは事業で年間どのぐらいの利益を出したのかを示す具体的な数字です。例えばお店の中には売上が5000万円を超える店舗は年間売上が500万円のところよりも税務調査対象になりやすいです。

 

そのため、事業をしている方の中には自社は売上が小さいので対象にはなりにくいと考える方も多いです。これはあくまで影響を受けやすいということです。例えば売上規模が小さい会社においても疑わしい時は対象になり得ます。売上規模が小さい会社だけでなく、赤字経営の会社も同様です。赤字経営をしているのにどうして役員や社員は生活できているのか税務署は疑います。この疑わしい、疑わしくないという判断は誰が行っているのか知っている方も多いです。それはKSKシステムです。KSKシステムは国税総合管理システムのことを指す略称で、このシステムの基準を元に調査対象を決めています。

調査対象になりやすい業種も存在します。その業種は申告漏れの多い業種です。平成26年に申告漏れの調査をした結果、一番申告漏れの多い業種は風俗業です。申告漏れの割合は88パーセントです。次にキャバレーでその割合は77.70パーセント、次いでバーが71パーセントとなります。必ず申告漏れの割合が多い業種が税務調査対象になりやすいということではありません。しかし、実際に申告漏れが多いのでマークしている可能性があります。基本的な傾向としては水商売のお店は基本的に個人に対してサービスをし、それと引き換えに代金を頂きます。その代金が売上になります。会社相手に事業を行っているところではその会社も申告をするため、お金の流れが明確になり申告漏れをする人は減ります。

が、個人相手の商売であれば誤魔化しやすく実際に水商売として知られるキャバレーの申告漏れの割合は全体の業種に比べて高くなります。建築関係の業種を営む会社では一人親方として仕事をしている方もいます。そのため、申告をしていない方も多いです。また、IT関係や運送業においては実際に物を販売しているケースは少ないです。例えばシステムの受注やそのシステムをユーザーに提供して広告等で利益を得ている企業もあり、実態がわかりづらい点から税務調査対象になりやすいです。このように税務調査対象になりやすい、その可能性がある業種は確かに存在し、税務署ではKSKシステムの他にもインターネットで調べて情報を収集し調査対象を選ぶケースもあります。

個人への税務調査も行われます。これまでは個人事業主が税務調査対象でしたが、個人事業主の数も多い個人の富裕層に調査対象の矛先を向けています。日本の税制度においては所得が多いほど、当然支払う税金の額が大きくなるため、もし何か申告漏れなどが見つかった時に一般的な方よりも追加徴税を徴収できる可能性があります。そのため、追加徴税の徴収効率が上がり富裕層は対象となりやすいです。確かに今では富裕層へ調査対象の矛先を向けています。

が、当然個人事業主が調査対象になることもあります。個人事業主の中には確定申告をする時に税理士に依頼するケースも多いですが、個人事業主が自ら申告をすることもできます。税理士に依頼していないところが調査対象になりやすいと考える人もいますが、実際にはそのような事実はありません。しかし、申告の内容が間違っていたり、脱税をしていると当然個人も税務調査の対象になる可能性があります。しかし、会社よりも対象先になる可能性は低いです。

調査されやすい業種は?

税務調査に入られやすい業種と会社のパターン、その理由について解説しています。

税務署が調査に入る会社のパターン

税務署はやみくもに調査を行うわけではありません。調査が行われる会社にはある一定の傾向があります。

代表的な特徴をご紹介しますので、当てはまっていないかどうか確認してみましょう。

設立して3期程度の確定申告を終了した会社

税務調査は設立してすぐの会社には税務調査は基本的に入りません。だいたい設立3年以降の会社が税務調査の対象になりやすくなります。

また大体の企業は設立してから10年以内には一度は税務調査が入りますが、これは税務調査により、その会社がどのような事業をしているのかを把握するためで、脱税を疑って税務調査に入るわけではありません。

前回調査から5年以上経過している会社

確定申告で特に異常な計数もなく、資料などにも瑕疵が見られない会社は通常税務調査から外れますが、前回調査から5年以上経過し、売上金額や申告所得がある程度ある会社に関しては、定期調査の意味で税務調査の対象になる場合があります。

以前の調査で大きな追徴課税を受けた会社

前回の調査で脱税行為を行い、大きな追徴課税を受けた会社は是正状況を確認する必要があり、以後も税務調査の対象になります。

また一度脱税行為をした会社は再び脱税行為をすることもあるので、再チェックを受ける意味合いもあります。

売上や粗利益率などが大きく変化している会社

売上が前期に比べて大きく増加しているのに対し、営業利益や申告所得が減少していたり、経費が例年よりも多い会社は税務調査の対象になる可能性があります。

売上の計上時期を変更している会社

売上を計上する時期が不自然に変更されている場合は、利益を上げた時期をずらすことで税務調査の対象となりやすくなります。

過度に経費が計上されている会社

過度に経費が計上されていると税務調査が入りやすくなります。

特に突然経費計上が多くなったり、同業他社よりも経費が多い場合は要注意です。納税を低く抑えようとしていると見なされることがあります。

大きな利益を出している会社

大きな利益を出している会社は、税金を取りやすいので、それだけで税務調査の対象となりやすい傾向にあります。

これは税務署には「どれだけ追徴課税を取るか」といった使命があるためなので、大きな利益を出している会社は、大きな利益を出しているからこそ、会計処理の際に細心の注意が必要です。

急激に事業規模が拡大している会社

急激に事業を拡大している会社は納税漏れが起きやすいので税務調査に入られやすい傾向にあります。

赤字の場合でも税務調査の対象となる場合もありますので、会計処理には最新の注意が必要です。

現金収入の多い会社

現金収入の多い会社は売り上げの不正計上がしやすく、不正な領収書の利用もしやすいので、税務調査のターゲットになりやすいといえます。

売り上げの小さなお店でも証拠があれば追徴課税されます。

内部告発があった会社

内部告発をする人はさまざまで経営者の身内や社員などからの内部告発が起こることもあるようです。内部告発は税務署が最も欲しがる情報で、内部告発から税務調査に発展するケースがよくあります。

内部告発により税務調査をされないよう経営者は親族から嫉妬を受けない、社員の恨みを買わないなど注意する必要があります。なによりも税理士の指導の下、正しい経理処理を心掛けることです。

テレビ、新聞、雑誌、ネットなどメディアに取り上げられた会社

テレビ、新聞、雑誌、ネットなどメディアに取り上げられ、世間で有名になった会社は売り上げが急激に伸びるケースが多く、税務調査の対象となりやすいです。

急に有名になった会社は、よく目立ち、税務調査に入りやすいという側面もあります。

実体のない関連会社がある会社

脱税をしている会社には、利益をプールするためにコンサル会社などの関連会社を立ち上げるケースは少なくありません。

こうした会社は実質的に活動していないにもかかわらず、多くの利益が出ているので追徴課税を取りやすく、税務調査の対象になりやすいです。

取引先が税務調査された会社

取引先が税務調査された場合に税務調査に入られることも少なくありません。その際は取引先の売り上げに対して経費、数量、単価などが一致しているか調べられます。

税理士を通さず確定申告をしている個人事業者

株式会社などの法人では稀ですが、個人事業主の場合は売り上げが1,000万円を超えていても確定申告の際、税理士を通さず自分で行う人が多くいます。

こうした場合、節税行為も稚拙で書類にも不備が多いなど、税務調査の対象となりがちです。

ある特定の経費が突出して多い事業者

個人事業者によるあるケースですが、年間の売り上げに対し、交通費や接待交際費などが突出して多いことがよくあります。

特に個人事業者の場合は接待交際費が全額経費に入れることができるので、税務調査のきっかけとなりやすいといえます。

不正発見割合が高い業種は要注意

税務調査はどのような会社でも入る可能性がありますが、すべての会社を調査することは不可能なので、ある程度ターゲットを絞り込みます。

例えば、過去に不正のあった会社は調査の間隔が短くなるという傾向が見られます。ということは不正が多い業種は税務調査の対象になりやすいと考えられます。

注意すべき10業種

国税庁が発行している「平成26事務年度 法人税等の調査事績の概要」のデータによれば、不正発見割合高い10業種は以下のような結果になっています。

  • バー・クラブ…57.1%
  • パチンコ…29.6%
  • ホテル、普通旅館…28.2%
  • 廃棄物処理…27.3%
  • 一般土木建築工事… 27.2%
  • 職別土木建築工事…26.4%
  • 土木工事…26.2%
  • 自動車修理…25.6%
  • 貨物自動車運送…25.1%
  • 管工事…24.1%

これを見ると不特定多数の個人を相手に現金商売をしている業種が多いことがわかります。会社同士の取引と違って、注文書や請求書を発行するわけではないので容易に売上の操作ができてしまうからです。

また土木・建築関係は日雇い労働で現金で報酬を支払っていて管理していなかったり、そもそも申告をしていないといったケースもあります。

この表に中に入っていなくても現金取引が多い業種は税務調査のターゲットになりやすく、事前通知無しで調査に入ることもあるので要注意です。

景気がよい業種や実態の掴みづらい業種は狙われやすい

税務署では、毎年どの業種を重点的に調査するかを決めています。不正発見割合が多い業種以外で対象となりやすいのは、景気がよく売上・利益が伸びている業種です。調査側からすれば、いかに効率よく税金を徴収するかを考えますので、赤字続きの業種より時代の波に乗って儲かっている業種の方を選びます。

特需が見込まれる業種は狙われやすい?

景気は変動しますし、毎年儲かっている業種も異なりますので、特定の業種をピックアップすることはできませんが、今後は2020年に向けてオリンピック特需が期待できる業種は狙われやすいと考えられます。

副業・小遣い稼ぎも対象になる

また、インターネット通販やアフィリエイト広告による売上など実態が掴みにくい業種に関しては国税局でも専門調査チームを組んで税務調査を強化しています。副業としてお小遣い稼ぎ程度に考えていたものも、軌道に乗ってある程度売上が見込めるようになった場合は、しっかり帳簿を付けて確定申告をしておくことが必要です。

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まとめ

税務調査に入られる会社には、それなりの傾向があることが良くわかりましたが、税務調査が入っても脱税行為をしていなければ何の問題もありません。税理士の指導の下、適正な会計処理をし正しく帳簿を作成していれば、何の不安もないのです。

調査に入られない方法はある?

税務調査が入りにくくなるとされる書類添付制度の概要について解説しています。

税務調査が入る確率を低くする方法とは?

税務調査を完全に止めることはできませんが、入りにくくする方法があることはご存じでしょうか。

書面添付制度を利用しよう

書面添付制度と言って、税理士が適正な会計帳簿に基づいて決算を行い、申告書を作成したという書面を申告書に添付して提出する方法です。

税務調査は、事前通知を行ってから現地調査に入るというのが通常の流れになります。ところが、書面添付がある場合は事前通知の前に税理士に対して意見聴取を行うことになります。この意見聴取により、税理士は資料に基づいて申告内容の説明をすることになります。税務署の調査官の疑問がそこで解決されれば、現地調査は必要ないという主旨の通知が税理士に届きます。

つまり会社に税務調査が入る前に調査を終えてしまうということです。仮に調査が入ったとしても、意見聴取により一部の問題点が解決できているので、調査期間の短縮につながります。税務調査官としては税務調査の前に意見聴取を行うという手間がかかり、申告内容の信憑性も高いと予想されることから、書面添付を行っている会社に対する税務調査の確率は低くなると考えられます。

書面添付制度のメリット・デメリット

書面添付制度には良い面もありますが、マイナス面が全く無いわけではありません。そこでメリットとデメリットについて整理してみました。

メリット

  • 質の高い決算と申告が実現できる
  • 銀行などの金融機関からの信頼性が高くなる
  • 現地調査が無くなったり調査期間の短縮につながる

デメリット

  • 毎月帳簿の作成について税理士から監査を受ける必要がある
  • 税理士顧問料とは別に特別料金がかかる
  • 意見聴取は無予告の税務調査は対象外となっている

書面添付制度は納税者に対する税理士の責任範囲が明確になり、税理士の力量が問われる制度とも言えますので、利用する場合はできるだけ信頼できる税理士にお願いすることが重要です。

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調査が入る基準は?

税務調査が入るきっかけや基準を説明。また日頃行っていた方がよい準備についても解説しています。

税務調査をする会社を決める基準はある?

税務署が税務調査に入るのは法人全体の5%と言われていますが、対象となる会社をどのように決めているのでしょうか。

対象となる基準

基準としては売上や利益が急激に変化していたり、多額の特別損失・利益を計上したりすると税務調査対象にピックアップされます。また過去に不正があったり、取引先に不正をしている会社があると税務調査が入りやすいとされています。

どのようにして情報を収集しているかというと当然ながら申告の内容は照会しますが、その他に国税総合管理(KSK)システムというものがあり、金融機関の情報や法務局の登記情報なども分析した上で判断しています。

税務署が個人事業に税務調査をするまでにはいくつかの基準があります。まずは、確定申告書が決められた期日までに提出してあるかどうかといことです。また、提出だけではなく、納税されていくかということも確認されています。次にその提出された物が正しく書かれているかどうかなどの基本的なことや、数値に異常な部分が無いかどうかなどを判断します。もしも大きな動きがあったり、他の会社との比較で気になる点があったりした場合は、調査される可能性が高まります。また、これまでの税歴も重要になってきます。今までに隠蔽などの良くないことをしたことがある場合は、調査されやすいと考えられます。

個人事業で売り上げが800万円あたりから900万円代あたりをキープしている場合も、税務調査されやすくなるかもしれません。というのも、売り上げの金額が1000万円以上になった場合は、2年後から消費税を納めることになります。そこで、何とかして消費税を支払わなくて良いようにするために売上金を1000万円以下にとどめながら確定申告するという事業主がいます。このような脱税をしている者を見つけるためにも、1000万円以下の売上金をちょうどよくキープしていると調査されやすくなってしまうと言えます。もちろん、その売上金が正当であるならば大丈夫です。

また、一般的に売上金を多くても所得があまりにも少ない場合は、生活の費用をどのように工面しているのかというような疑問が浮かびます。売り上げはそれなりにあるのに、所得がとても低い場合、税務署の方に怪しまれてしまうかもしれません。そうなると税務調査が入りやすくなります。

提出した確定申告書は、どの会社の者も税務署に情報が行きます。個人事業主といっても個人だけで成り立っているというわけではありません。もしも他の会社と取引をしたりしているのであれば、税務署には他の会社との取引内容も把握されている可能性が高いと考えられます。他の会社の情報と、提出した確定申告書に何かしらの違いが見つかった場合はその部分を指摘されることもあるかもしれませんので、申告書を書く際に注意しておきましょう。

とはいえ、どのような会社であっても、必ず税務調査をされないということはありません。簡易的といわれている白色申告であっても、しっかりとした明細を記して一緒に提出する青色申告であっても、調査対象になる可能性はゼロではありません。はじめからしっかりとした申告をして、納税をしておけば調査された場合も安心できるので、自前に準備をしておきましょう。

売上規模の基準

売上規模は大きい方が税務調査が入りやく、1,000万円以上が基準と言われていますが、最近ではFXやアフィリエイト、ネットオークション等で収入を得る個人が多くなっているため、売上は低くてもそれらを重点的に調査することもあるようです。

業界全体として儲かっていると税務調査の対象になりやすいので、売上が低いからといって安心せずに日頃から準備をしておくことが重要です。

日常の会計処理で注意したいこと

税務調査が入ると決まってから準備をすると言っても、おそらく必要書類を揃えて簡単にチェックする程度が精一杯でしょう。日頃から準備しておくのが一番なのですが、どのような点に注意したらよいのでしょうか。基本的には帳簿を正しくつける、書類をしっかり管理すること、できるだけ後になってわかるようにメモを残すことです。

現金出納帳・預金通帳の管理

例えば現金出納帳なら金額だけでなく相手先や内容をきちんと記録しておき、領収書などと照合しやすくすることです。預金通帳はそのまま証拠書類になりますので、預金取引照合表や計算書と合わせて保管しておきます。

その他注意すること

また処理の積み残しを作らないことも重要です。会計処理が複雑で後回しにするということもあるかもしれませんが、忘れないうちに解決しておきましょう。会議の議事録も記憶が新しいその日のうちに作成するといったことを心がけましょう。

こうした細かな積み重ねが強固な税務調査対策になります。日常からしっかりとした処理と証拠書類の保存ができているとわかれば、調査官から突っ込まれて質問されることはありません。

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税務調査について詳しく解説!

 

税務調査について詳しく知りたいと思っている方もいるかと思います。実際に税務署はやみくもに調査する対象者を決めているのではないかと思っている人もいるかもしれませんが、基本的にはやみくもに決めることはありません。効率的に行うためにもしっかりと計画を立てて調査する会社や個人を選んでいます。では実際に調査対象の決め方や目をつけられる会社はどこかについて詳しく知りたい方もいるので説明します。

 

まず税務調査の対象となる会社をどういった基準を基に決めているのか解説したいと思います。税務署が管轄している法人は全国で270万社ほどあると言われており、その中でも調査を行うのは約6パーセントです。税務署では国税総合管理システムが存在しており別名KSKシステムと言われていますが、これを使用して申告書の異常値を見つけてどこの会社に調査を行うのか選定します。例えば具体的に説明をすると、多額の特別損失がある場合や特別利益がある場合、売上が急増したり急落したりすると怪しいと判断され、調査の対象になる可能性もあります。

 

税務署は様々な区分に分けて調査対象を選んでいます。主に3つ存在しており、1つ目は第1グループでこれは申告良好法人と言われています。基本的に第1グループに分けられていればよっぽどのことがない限り調査は入らないでしょう。続いて2つ目は第2グループですが、これは申告良好法人や要調査法人以外の法人でほとんどの会社は第2グループに分けられることが多いと言われています。最後に第3グループですが、これは過去に不正があった会社など要調査法人と呼ばれているグループです。第3グループになってしまうと調査が入ることがあり、他のグループと比べても確率は高くなると言われています。このように、それぞれ区分に分けて税務署では調査対象を決めています。

続いて調査基準についてですが、大まかに説明をすると儲かっている業界や流行りの業界には調査が入りやすく、逆にそれほど儲かっていない職種や人気がないところには入りづらいというのが現状です。また、税務署は法人だけとは限らず、個人への調査も行うことがあります。例えばFXやアフィリエイト、インターネットオークションなどこういった分野への調査も行っています。様々な分野への調査を行うので、基本的には申告をしっかりと行い納税をしましょう。

会社を運営している方の中には売上規模が小さい会社には税務調査が行われないと考える方は少なくありません。確かに小規模な企業においてはその分、売上規模が少ないです。しかし、実際に税務調査は大企業でなくても当然行われます。何故なら売上規模が小さい小規模の会社でも脱税をしないという保証はないからです。会社は申告をするのが一般的ですが、その申告に対してKSKシステムの基準とは異なった数値が算出されれば、調査対象になります。企業の中にはなかなか軌道に乗らずに赤字が続いた小さい会社もあります。赤字続きの会社は良好な経営をしている小規模な会社に比べて脱税等の可能性が低いため調査対象から外れると考える人もいます。

しかし、赤字続きの会社でも税務調査対象になります。その理由は何故生活ができているのか分からないからです。赤字続きの会社の中には社長の給与報酬が少ないところもあります。税務署は何故少ない給与で生活ができているのか疑う可能性があります。税務調査は事前に電話等で連絡があると思われる人が多いです。確かに事前に連絡をしてくれる時は多いですが、事前通告なしに調査官が訪れることがあります。例えば飲食店などの現金商売などです。もし事前通告なしに調査官が来た時も慌てることなく冷静に対処をします。

基本的に税務署は目視で申告や企業の経営状態を確認して調査先を決定している可能性もありますが、一般的にはKSKシステムを利用しています。KSKシステムを利用すれば申告漏れの可能性がある企業を自動で選択することができます。KSKは起業家や税務調査を受けた方の多くが把握しているように驚く程精度の高いシステムで企業の売上規模に関わらず、申告漏れや帳簿の誤魔化しができないようになっています。KSKシステムで異常値が検出されれば当然調査先の候補として選ばれます。疑いの目を向けられないためにも税務署の目を欺くような行動は慎むのが一般的です。

指摘に納得できない時は?

税務調査の指摘に対し修正申告をせずに不服申立て、訴訟を起こすまでの流れについて解説します。

納得がいかない場合の手続きの流れ

税務調査での指摘に納得した場合は、修正申告をして追加納税をします。修正申告をすることは間違いを認めたということになりますので、提出後は税務署に対し異議申立てはできません。

したがって指摘にどうしても納得できない場合は、修正申告をしないことです。修正申告を拒否すると税務署は追加納税額の更正処分通知を送付してきます。さらに更正処分の内容に納得しない場合は、租税訴訟手続に入ります。租税訴訟手続とは異議申立て、審査請求、税務訴訟のことで、この順序で進めていくことになります。

異議申立てと審査請求は行政手続で、2つを合わせて不服申立て手続きと言います。税務訴訟は司法手続で裁判所で審理されることになります。

異議申立て

税務署が行なった更正処分に対して不服として処分の取消しや変更を求めます。更正処分通知を受けた日の翌日から2カ月以内に行わなければなりません。税務署は再調査を行い、却下、棄却、取消し・変更いずれかの結果を出します。

審査請求

異議申立てが却下または棄却された場合は、国税不服審判所という国税庁の付属機関に審査請求を行います。異議申立ての結果が出た翌日から1ヶ月以内に行う必要があります。税務署だけでなく税理士、弁護士など第三者も判断に加わります。

税務訴訟

国税不服審判所の審査請求で却下された場合、その結果を知った日から6ヶ月以内に裁判所での訴訟手続きを行います。行政を相手取った通常裁判になりますので、弁護士が訴訟代理人となり、相当の時間と費用がかかります。

不服申立てや訴訟を起こして勝てるのか?

税務署の指摘に納得せずに不服申立てや訴訟を提起して勝てるのかどうかは気になるところです。国税庁では毎年「国税庁レポート」という資料の中でそのデータを公開していますので見ていきましょう。2016年度の課税関係資料では以下の結果となっています。

処理済件数 請求認容件数
(全部または一部)
割合
異議申立て  2,427件  255件  10.5%
審査請求  2,793件  236件  8.4%
終結件数 敗訴件数
(全部または一部)
割合
訴訟事件 216件  17件  7.9%

すべてが通るわけではありませんが、しっかりとした根拠を示すことができれば、可能性は十分にあるということはできます。

裁判となると弁護士が必要になりますが、異議申立てと審査請求は税理士が納税者の代理人となることができますので、不服申立てをすべきかどうかは税理士とよく相談して決めることをおすすめします。

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交渉で金額は変わるのか?

ここでは交渉により税務調査の結果がどのように変わるのか、またそのやり方について解説しています。

税務調査で交渉をしないとどうなるのか

税務調査では様々な経理処理上の問題点が指摘されます。しかし指摘された事項についてすべて受け入れて修正申告をする必要はありません。なぜならその中には経費を二重に計上していたというような明らかなミスの他に、根拠があまり明確ではない指摘も含まれているからです。

例えば社用車が高級外車で個人的趣味が入っているため会社の資産計上は認められないであるとか、接待交際費が高すぎるのではないかといった指摘です。高級外車であっても、業務以外に使用していないという証拠を揃えれば認められますし、接待交際費に関しては設定されている上限額を超えず、事業を進める上で必要だったと証明できれば否認されることはありません。

調査官側としては、納得して修正申告してもらえるに越したことはないという考え方ですので、納得が行かない場合は交渉の余地があるということです。国税庁の資料によれば平成26事務年度の追徴課税額は670億円、1件あたりに換算すると540万円になります。この中には交渉を全くせずにそのまま修正申告をして、本来納めなくてもよいものも含まれているのです。

税務調査の交渉は税理士に任せるのが得策

税務調査での交渉の必要性が理解できたとしても、税務や法律知識が全くない状態で行うことは極めて難しいと言えるでしょう。

高級外車を業務用と認めてもらうためには運行記録や使用者名簿の有無が重要になりますし、以前は大企業で一切経費として認められていなかった接待交際費は、平成26年4月以降について飲食費の50%を計上できるようになりました。

こうした専門的知識を持って税務調査官に対応するためには、やはり税理士の力が必要になります。各種の税法に精通した税理士であれば判例を用いて交渉したり、必要経費であることを証明するために何が必要であるかアドバイスできるからです。

専門家と同席することで調査官の指摘に対してスピーディに対応できますし、事前準備やシミュレーションを行うことで心理的負担が軽減し、不当な追徴課税を回避することができます。交渉により百万単位以上の納税額の差が出るのであれば、税務調査サポート費用がかかっても税理士に依頼する方が得策と言えるでしょう。

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不用意な対応では大損する?

ここでは税務調査の対応方法によって結果にどのような違いが出るのかを説明しています。

税務調査対応でやってはいけないこと

税務調査は申告内容が事実に基いてきちんと経理処理されているか、税務の基本から外れていないかを明らかにするために行われます。したがって経理処理が正当なものであることを証明する請求書や契約書などの資料を用意して、質問に対して説明できれば何の問題もありません。

税務調査対応の基本は余計なことは話さないことです。質問されたことに対して素直に答えるだけでよいのですが、自信がなかったり何かを誤魔化そうとすると人はつい喋りすぎてしまいます。相手は税務調査のプロですからそのような態度を見逃しません。不正をしていなくても、不正を疑われて調査が長引くことになりますので注意が必要です。

その場を取り繕って曖昧な回答するのは絶対にやってはいけません。わからない点は正直にわからないと認め、事実関係を調べてから後で答える旨を伝えることです。

グレーゾーンへの対応が税務調査の結果を左右する

税務調査では明らかに誤っているもの(クロ)と明らかに正しいもの(シロ)の他に、どちらの可能性も考えられるグレーゾーンというものが存在します。調査官は税金を徴収する側ですのでグレーゾーンに関しては申告漏れやミスがあるのではないかと疑います。例えば役員報酬や退職金が多すぎるのではないか、出張旅費や慶弔費などが高すぎないかといった具合です。

こうしたグレーゾーンを事実に照らし合わせて、正当なものと証明できるか否かが税務調査の結果を左右すると考えてもよいでしょう。申告ミスと判断されれば、最大14.6%の延滞税や場合によっては最大40%の重加算税が課せられますので、結果次第で数百万から数千万という単位の納税額の差が出てきます。

グレーゾーンの折衝は、余程の税務の知識と交渉力が無いと勝ち目はありません。できれば税務調査対応の実績が豊富な税理士に立ち会いをお願いすることをおすすめします。納税者の代理人として税務関連の主張ができるのは税理士のみですし、不用意な回答を避けるためにも有効だからです。

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