
意外と知られていない過少申告加算税を解説
所得税や法人税、消費税などの申告漏れ・計算誤りがあった場合に課せられるのが過少申告加算税です。税務調査で指摘される可能性がもっとも高い加算税のひとつですが、調査の連絡が来る前に自分で気づいて修正すれば税率を0%にできるなど、知っておくと差がつくポイントがあります。日ごろの備えで未然に防ぐこともできます。過少申告加算税とは?
過少申告加算税とは、期限内に申告した法人税や所得税・消費税などの税額が本来より少なかった場合に、不足していた税金に加えてペナルティとして追加で支払う税金です。 課されるのは、(1) 申告した本人が誤りに気づいて自主的に修正申告をした場合(ただし調査通知後)、(2) 税務調査で申告漏れを指摘された場合、(3) 税務署から更正処分を受けた場合です。義務違反の度合いに応じて税率が変わる、制裁的な性格を持つ制度です。 なお、申告が少なかったことに「正当な理由」があると認められる場合には課されません(国税通則法65条5項)。ただしこれは、うっかり見落とした・忘れていたといった事情では認められにくい、例外的な取扱いです。課税されるケースは?
過少申告加算税は、期限内に提出した所得税・法人税・消費税などに申告漏れがあった場合、追加で納める税金(増差税額)に上乗せして支払うことになります。 申告漏れが見つかるきっかけでもっとも多いのは、やはり税務調査です。経理の入力ミスや、計上を忘れていた売上が見つかる、というケースが典型です。 申告漏れの所得を意図的に隠そうとしたと判断されれば、より重い重加算税が課されますが、そうでないと認められれば税率の低い過少申告加算税が適用されます。なお、「税務調査の連絡があり、心配になって自分で確認したら漏れが見つかった」という場合も、調査通知後の修正にあたるため過少申告加算税の対象になります。過少申告加算税の税率は?
税率は「いつ修正したか」で大きく変わります。現行の区分は次のとおりです。
| 修正のタイミング | 原則の税率 | 一定額を超える部分※ |
|---|---|---|
| 調査の通知前に自主的に修正申告 | 課されない(0%) | |
| 調査の事前通知後〜更正を予知する前に修正申告 | 5% | 10% |
| 税務調査で発覚(更正を予知した後)・税務署の更正 | 10% | 15% |
※「一定額」とは、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額です。これを超える部分には、原則より5%高い税率が適用されます。出典:国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」(2026年8月時点で確認)。
最大のポイントは、税務調査の通知を受ける前に、自分から修正申告をすれば過少申告加算税は課されない(0%)という点です。誤りに気づいたら、調査の連絡が来る前に動くことが何より有利に働きます。実際にいくら増える?タイミング別の試算
税率だけを見てもピンとこないという方のために、同じ申告漏れでもタイミングによって負担がどれだけ変わるかを具体的に計算してみます。前提:期限内申告で納めた税額(期限内申告税額)が80万円。その後、売上の計上漏れが見つかり、追加で納める税金(増差税額)が200万円になったケース。
「期限内申告税額(80万円)と50万円のいずれか多い金額」は80万円なので、増差税額200万円のうち80万円までが原則の税率、超える120万円が高いほうの税率で計算されます。- 調査の通知前に自主的に修正:加算税は0円
- 通知後〜更正を予知する前に修正:80万円×5%+120万円×10%=16万円
- 調査で指摘されてから修正・更正:80万円×10%+120万円×15%=26万円

かつての改正で「通知後の自主修正」も対象に
平成29年(2017年)1月以後、ルールが厳しくなりました。それ以前は、税務調査の事前通知を受けた後でも、更正を予知せずに自主的に修正すれば加算税はかかりませんでした。しかし現在は、調査の通知を受けた後に自分で修正申告をしても、5%(超過部分10%)の加算税が課されます。「連絡が来てから慌てて直す」では遅い、というわけです。帳簿の提示がないと加重されることも
令和6年(2024年)1月1日以後に法定申告期限が到来する国税(所得税なら令和5年分以降)から、帳簿に関する加重措置が適用されています。税務調査で売上に関する帳簿の提示・提出を求められたときに、- 提示・提出をしなかった場合、または帳簿の売上金額の記載が本来記載すべき金額の2分の1未満だった場合 … +10%
- 帳簿の売上金額の記載が本来記載すべき金額の3分の2未満だった場合 … +5%
「優良な電子帳簿」なら逆に5%軽減される
あまり知られていませんが、加重措置とは反対に軽減措置もあります。電子帳簿保存法上の一定の要件を満たす「優良な電子帳簿」で記帳し、あらかじめ軽減措置の適用を受ける旨を届け出ている場合、その電子帳簿に記載された事項に係る申告漏れについては、過少申告加算税が5%軽減されます(所得税・法人税・消費税が対象。仮装隠蔽があった場合は適用されません)。会計ソフトの導入を検討している方は、この届出の有無まで含めて設計しておくと無駄がありません。重加算税に切り替わるケースに注意
申告漏れが「うっかり」ではなく、売上除外・架空経費・二重帳簿・資料の改ざんなど、隠ぺい・仮装によるものと判断されると、過少申告加算税に代えて重加算税(35%)が課されます。前掲の試算でいえば、加算税だけで26万円が70万円に跳ね上がる計算です。税務調査では「故意ではないこと」を客観的な資料で示せるかどうかも大切になります。逆に払いすぎていたときは「更正の請求」
申告の誤りは、税金が足りない方向とは限りません。納める税金が多すぎた・還付される税金が少なすぎた場合は「更正の請求」という手続で取り戻せます。請求ができる期間は原則として法定申告期限から5年以内です。調査の過程で自社に不利な指摘だけに気を取られがちですが、有利な誤りが見つかることもありますので、修正申告と合わせて確認しておきましょう。課されないための対策は?
過少申告加算税の原因の多くは、悪意のない「ついうっかり」のミスです。防ぐためのポイントは次のとおりです。- 申告書を提出する前に税理士のチェックを受ける(誤りを未然に防ぐ)
- 日ごろから会計処理・帳簿付けを徹底し、売上計上漏れや入力ミスを減らす
- 売上に関する帳簿を、求められたらすぐ提示できる状態で保存しておく(加重措置を避ける)
- 誤りに気づいたら、調査の通知が来る前に自主的に修正申告する
よくある質問(FAQ)
Q. 申告後に自分で間違いに気づきました。今すぐ修正すれば加算税はかかりませんか? A. 税務調査の通知を受ける前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税は課されません(延滞税は別途かかる場合があります)。気づいたら早めに修正するのが得策です。 Q. 調査の連絡が来てから修正したら、税率はどうなりますか? A. 更正を予知する前の修正なら5%(超過部分10%)、調査で指摘されて発覚した場合は10%(超過部分15%)です。通知後は「自主的に直しても0%」にはなりません。 Q. 過去にも加算税を課されています。繰り返すと重くなりますか? A. 過去5年以内に課されたことによる10%の加重(短期累犯加重)や、連年の加重は、無申告加算税・重加算税が対象で、過少申告加算税には適用されません。ただし、同じ誤りを繰り返している状況そのものは調査での見られ方に影響しますので、原因の是正が大切です。 Q. 少額の申告漏れでも課されますか? A. 加算税には少額不徴収のルールがあり、計算結果が一定額に満たない場合は徴収されないことがあります。具体的な基準は国税庁の情報や税理士に確認してください。 Q. 加算税と延滞税は、どちらも払うのですか? A. 性格が違うため両方かかります。加算税は申告義務違反に対する制裁、延滞税は納付が遅れたことに対する利息にあたるものです。修正申告で新たに納める税金は、修正申告書を提出する日が納期限になりますので、提出したその日に納めるのが基本です。まとめ
過少申告加算税は、「調査の通知前に、自分から直す」ことで0%にできる加算税です。通知後は税率が発生し、帳簿を提示できなければさらに加重、隠ぺい・仮装と判断されれば重加算税に切り替わります。日ごろの正確な会計処理と帳簿の保存、そして申告前の税理士チェックが最大の予防策です。すでに調査の連絡を受けている場合は、対応を誤らないよう税務調査に強い税理士へ早めに相談しましょう。なお、税制は改正が多い分野です。最新の取扱いは必ず国税庁のホームページでご確認ください。>>税務調査に強いおすすめ税理士事務所を見る
