確定申告でありがちなミス|税務調査で指摘されやすい間違いと対策

確定申告書の数字を領収書と照らし合わせて見直す個人事業主のイメージ

自営業の方必見!確定申告でありがちなミスとは

確定申告でよくあるミスは、決算書の「一致するはずの数字」の不一致、現金主義での記帳や経費の二重計上、備品の経費と減価償却の区分違い、医療費控除や副業の申告基準の思い違いの4つにほぼ集約されます。どれも税務署からの問い合わせや税務調査で見つかりやすい誤りです。

一方で、調査の事前通知より前に自分で気づいて修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません。ご自身で申告書を作っている自営業の方に向けて、ミスの見つけ方と、気づいたときの直し方を順に整理します。

必ず数字が一致しているべき箇所がある

自営業者の方には青色申告をしている人が多いでしょう。青色申告では帳簿を付け、貸借対照表や損益計算書を作成します。そのため事業の財務内容や業績が明確になります。

その反面、確定申告書や青色申告決算書の中には「必ず数字が一致するはずの箇所」がいくつかあり、一致していなければどこかに誤りがあるということになります。一致しないまま提出すると、税務署から問い合わせの連絡が来ることもあります。

  • 貸借対照表の期首残高は、前期の期末残高と一致します。一致しない場合は、前期からの繰り越し処理にもれがある可能性があります。
  • 貸借対照表の借方合計と貸方合計は一致しなければなりません。一致しない場合は、仕訳入力のミスや必要な処理のもれが疑われます。

特に、一通り作り終えてから一部を訂正したときは要注意です。1か所を直すと、連動して直すべき箇所が出てくることがあります。

また、社会保険料控除では、領収書や控除証明書の金額と確定申告書に記載した金額が一致しているかを確認しましょう。生命保険料控除では、支払った保険料の全額が控除されるわけではなく、控除区分(一般・介護医療・個人年金)と上限額の確認が必要です。1つの保険が複数の控除区分にまたがる場合もあります。

処理方法でよくあるミス

売上や仕入れなどは、発生主義で計上するのが原則です。規模の小さい個人事業主の場合、年明けにまとめて1年分を処理するため「発生主義でも現金主義でも大きく変わらない」と思いがちです。

しかし発生主義なら、期末に売掛金や買掛金の残高が出ます。現金主義で記帳するとあるはずの残高がゼロになり、処理方法の誤りを疑われるうえ、所得金額もずれてしまいます(現金主義による記帳は、事前に届出をした一定の小規模事業者に限って認められる特例です)。

そのほか、個人事業主の確定申告でよく見られるのが経費の二重計上です。特に経費をカードと現金の両方で支払っている場合は重複しやすいので注意しましょう。普段の年より経費が多いときは、二重計上がないか見直すことをおすすめします。

消耗品と固定資産(減価償却)の区分に注意

取得価額によって経費にできる方法が変わります。区分を誤ると、本来は数年に分けて費用化すべきものを一度に経費にしてしまうなどのミスにつながります。

令和8年度(2026年度)税制改正で、青色申告の中小企業者等が使える「少額減価償却資産の特例」の上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限も令和11年(2029年)3月31日まで延長されました。新しい基準は2026年4月1日以後に取得した資産から使えます。

取得価額主な取り扱い備考
10万円未満全額をその年の経費(消耗品費 等)白色・青色とも可
10万円以上20万円未満一括償却資産として3年均等償却/または通常の減価償却白色・青色とも可・償却資産税の申告対象外
10万円以上40万円未満
(2026年3月31日までの取得は30万円未満)
少額減価償却資産の特例で全額をその年の経費青色申告の中小企業者等のみ・年間合計300万円まで・償却資産税の申告対象
上記を使わない場合通常の減価償却(法定耐用年数で按分)白色・青色とも

※白色申告の方は少額減価償却資産の特例(措法28の2)を使えません。10万円以上の備品などは、一括償却資産(20万円未満)か通常の減価償却で処理します。金額は経理方式(税込・税抜)によって判定が変わる点にも注意してください。

この特例は常時使用する従業員数が400人以下の中小企業者等が対象で、青色申告決算書の「減価償却費の計算」の「摘要」欄に「措法28の2」と記載することが適用の条件です。記載もれがあると特例を使えませんので、忘れずに確認しましょう。

2026年分の申告は「取得した月」で基準が分かれる

来年2〜3月に行う2026年(令和8年)分の確定申告では、同じ年の中で基準が切り替わる点が新しいミスの種になります。1月〜3月に取得した資産は30万円未満、4月以後に取得した資産は40万円未満で判定します。

たとえば、同じ35万円のパソコンでも、2026年2月に買って使い始めたものは特例の対象外で、通常の減価償却になります。5月に買ったものなら特例で全額をその年の経費にできます。固定資産台帳には、取得日と事業に使い始めた日を正確に残しておきましょう。

また見落とされやすいのが、少額減価償却資産の特例で経費にした資産は、市区町村(東京23区は都)に申告する固定資産税(償却資産)の対象になる点です。一括償却資産(3年均等償却)を選んだ資産は申告の対象外です(東京都主税局「固定資産税(償却資産)申告の手引き」)。所得税の申告だけで終わらせず、毎年1月末の償却資産申告にも反映させる必要があります。

チェック項目

  • 期首残高が前期末残高と一致しているか
  • 貸借対照表の借方合計と貸方合計が一致しているか
  • 社会保険料控除の金額が領収書・控除証明書の合計と一致しているか
  • 生命保険料控除の控除区分・上限額が正しいか
  • 発生主義で記帳しているか(現金主義は届出をした小規模事業者の特例)
  • 経費の二重計上はないか
  • 消耗品・固定資産の区分は適切か(白色申告は少額減価償却資産の特例を使えない)
  • 少額減価償却資産の特例を使う場合、取得日で30万円・40万円の基準を正しく使い分け、決算書の「摘要」欄に「措法28の2」と書いたか
  • 特例で経費にした資産を、償却資産の申告にも載せたか

会社員(給与所得者)でも確定申告が必要な場合

会社員の方でも、医療費控除を受ける際は確定申告が必要です。普段は申告をしないため、間違いも起こりがちです。よくあるのが、1年間にかかった医療費の全額を控除対象にしてしまうケースです。

正しくは、まず支払った医療費から保険金などで補填される金額(高額療養費・入院給付金・出産育児一時金など)を差し引き、そこから10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の方は総所得金額等の5%)を差し引いた額が医療費控除額になります(最高200万円)。全額を控除対象にすると控除額が過大になり、過少申告となってしまうので注意しましょう。

市販薬の「セルフメディケーション税制」は医療費控除との選択制

ドラッグストアで対象の市販薬を購入したときに使えるセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)も、間違いが起こりやすい制度です。控除額は、対象医薬品の年間購入費(保険金などで補填される部分を除く)から1万2,000円を差し引いた金額(最高8万8,000円)です。健康診断や予防接種など、健康の保持増進・疾病予防のための一定の取組を行っていることが前提となります。

ここで多いのが、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制を両方使ってしまうミスです。この2つはどちらか一方を選ぶ「選択適用」で、併用はできません。医療費が多かった年は通常の医療費控除、医療機関にはあまりかからず市販薬の購入が多かった年はセルフメディケーション税制、というように有利なほうを選びます。

なお、令和8年度税制改正で、スイッチOTC医薬品の部分は適用期限が撤廃され、それ以外の医薬品の部分は5年延長されました。あわせて胃腸薬などの消化器官用薬、一定の検査薬などが対象に加わる見直しが2027年(令和9年)分から適用されます(厚生労働省「セルフメディケーション税制について」)。2026年分の申告は、これまでの対象品目で判定するため、レシートの「控除対象」の表示で確かめてから集計しましょう。

副業をしている会社員は「所得20万円」が基準

副業をしている会社員の方は要注意です。給与・退職所得以外の所得(収入から必要経費を差し引いた金額)の合計が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要です(多くは雑所得として給与所得と合算します)。

「収入が20万円」ではなく「所得が20万円」が基準である点に注意してください。最近はインターネットでの副業をする人も増えており、対象になる方が広がっています。所得が20万円を超えるのに申告せず放置していると、ある日突然、税務署から問い合わせが来ることもあります。

ミスに気づいた「タイミング」でペナルティは変わる

申告内容の誤りで納める税金が少なすぎた場合は、修正申告で訂正します。このとき課される過少申告加算税の割合は、いつ修正したかによって変わります。ここが、税務調査の現場でもっとも差がつくポイントです。

修正申告のタイミング別の過少申告加算税の割合を示す棒グラフ
新たに納める税金が「当初の申告納税額」と50万円のいずれか多い金額を超える部分は、それぞれ10%・15%になります。
修正申告のタイミング過少申告加算税備考
調査の事前通知より前に自主的に修正申告かからない自分で気づいて直せば加算税なし
事前通知の後、調査で更正を予知する前5%新たに納める税金が「当初の申告納税額」と50万円のいずれか多い金額を超える部分は10%
調査で更正を予知した後の修正申告・税務署の更正10%同じ基準を超える部分は15%

※出典:国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき(2026年9月時点)

さらに、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する年分(令和5年分以降)については、帳簿に関する加重措置があります。調査で帳簿の提示・提出を求められたのに応じなかった場合や、帳簿への売上金額の記載が本来記載すべき金額の2分の1未満だった場合は加算税が10%上乗せ、3分の2未満だった場合は5%上乗せされます。

日々の帳簿づけを整えておくこと自体が、ペナルティを軽くする備えになります。加算税の計算例は過少申告加算税の0%・5%・10%の分かれ目と計算例で詳しく解説しています。

なお、修正申告で新たに納める税金には、納付の日までの延滞税も別途かかります。2026年(令和8年)1月1日〜12月31日の延滞税の割合は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、2か月を過ぎると年9.1%です(国税庁「延滞税の割合」)。期間が延びるほど増えるため、気づいたら早めに納めるのが得策です。計算方法は延滞税の税率と計算方法・軽減策にまとめています。

また、そもそも期限内に申告していなかった場合は、過少申告加算税ではなく無申告加算税の対象となり、負担はさらに重くなります。

まとめ

確定申告では、一致するはずの数字が一致していなければ、明らかに誤りがあるということです。税理士に依頼せずご自身で作成する場合は、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーを使うのがおすすめです。一致すべき箇所が一致しないと先に進めない仕組みになっており、ミスに気づきやすくなっています。

提出後に誤りに気づいた場合は、税務調査が入る前に自主的に修正申告をしておきましょう。上の表のとおり、調査の事前通知より前に自主的に修正申告をすれば過少申告加算税はかかりません。調査で実際に指摘が多い項目は税務調査で指摘されやすいポイントと加算税の早見表も参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 少額減価償却資産の特例は誰でも使えますか?

A. 青色申告をしている中小企業者等(常時使用する従業員数400人以下)が対象で、白色申告の方は使えません。対象は取得価額40万円未満(2026年3月31日までの取得は30万円未満)の資産で、年間合計300万円までという上限があります。

Q. 2026年2月に買った35万円のパソコンは一括で経費にできますか?

A. できません。40万円未満の基準は2026年4月1日以後に取得した資産が対象で、それより前の取得は30万円未満で判定します。2月取得の35万円の資産は、通常の減価償却で耐用年数に応じて経費にします。

Q. 医療費控除とセルフメディケーション税制は両方使えますか?

A. 使えません。どちらか一方を選ぶ選択適用です。両方を合算して申告すると控除額が過大になり、過少申告として指摘される原因になります。医療費の領収書と市販薬のレシートを分けて集計し、有利なほうを選びましょう。

Q. 副業の確定申告は「収入20万円」「所得20万円」どちらが基準ですか?

A. 所得(収入から必要経費を引いた金額)が20万円を超えるかが基準です。会社員で、給与・退職所得以外の所得の合計が年20万円を超える場合に確定申告が必要です。

Q. 税務署から調査の連絡が来た後に気づいた場合はどうなりますか?

A. 事前通知の後でも、調査で更正を予知する前に修正申告をすれば過少申告加算税は5%(一定額を超える部分は10%)にとどまります。調査で指摘されてからの修正は10%(同15%)になるため、連絡を受けた段階で申告内容を早急に見直すことが負担を抑えるうえで有効です。

※本記事は一般的な解説で、内容は2026年9月時点のものです。控除額・特例の要件・適用期限などの最新の取り扱いは、国税庁の公式サイトでご確認ください。

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