税務調査の基本

税務調査とは?目的・種類・対象の選ばれ方と担当組織を解説

税務調査で帳簿や書類が確認される様子をイメージしたイラスト
税務調査とはどのようなものを指すのか、その目的や種類、調査対象の選ばれ方、担当する組織について解説しています。

税務調査とはなにか?

税務調査のイメージ

税務調査とは、税務署や国税局などの行政機関が、納税者の申告内容が正しいかどうかを、帳簿や領収書などをチェックして確認する調査のことをいいます。申告額に誤りがあった場合は正しい計算方法を指導され、納税者は修正申告を行ったうえで追加の納税をすることになります。 税務調査の頻度は決まっておらず、数年に一度調査される会社もあれば、10年以上まったく調査が行われない会社もあります。一般的には、売上や利益が急激に増えている場合や、大きな設備投資を行ったなど、決算の数字に大きな変化があった場合に税務調査が入りやすいといわれています。 また、黒字の会社のほうが税金を徴収できるため税務調査の対象となりやすいといわれますが、赤字の会社でも消費税などは発生するので、調査が来ないということはありません。 なお、実務上は直近3年分を中心に確認されることが多いものの、これはあくまで運用上の目安です。法律上、税務署が申告内容を是正できる期間(更正・決定の期間制限)は原則5年で、偽りその他不正の行為により税を免れた場合は最長7年までさかのぼることができます。「3年で終わるとは限らない」という点は押さえておきましょう。

税務調査には強制調査(マルサ)と任意調査がある

税務調査には、マルサで有名な「強制調査」と、「任意調査」があります。一般的に「税務調査」と呼ばれる調査は「任意調査」で、査察とも呼ばれる特殊な税務調査である「強制調査」とは異なります。税務調査を怖がる前に、それぞれの概要を理解しておくことが重要です。

一般的な税務調査は任意調査

一般的な税務調査は、納税者の協力を前提とする任意調査です。一方、強制調査は、裁判所の令状にもとづき、犯罪捜査に近い方法で行われる調査です。一般的な企業や個人が強制調査を受けることは、ほとんどありません。

強制調査

不当な手段で故意に税を免れた場合には、正当な税を課すほか、刑罰を科すことが税法で定められています。強制調査は、悪質で多額の脱税が疑われる納税者に対し、裁判所の令状にもとづいて強制的に行われる調査のことで、納税者はこれを拒否することはできません。 任意調査だけでは実態が把握できないため、強制的な権限で犯罪捜査のような方法で調査します。結果次第では検察官に告発します。かつてこうした犯則調査の手続は「国税犯則取締法」に定められていましたが、同法は2018年(平成30年)4月1日に廃止され、その内容は国税通則法(第11章 犯則事件の調査及び処分)に編入されています。現在は、この国税通則法の規定にもとづき、裁判所の許可(許可状)を得て、臨検・捜索・差押えなどが行われます。

任意調査

納税者の協力のもとで行われる調査で、通常は納税者または顧問税理士宛てに、あらかじめ通知があります。事前通知では、実地の調査を行う旨のほか、調査を開始する日時・場所、調査の対象となる税目・課税期間、調査の目的、対象となる帳簿書類などが伝えられます。調査に応じなかったり妨害したりすれば罰則がありますが、犯罪を前提とした調査ではないので、日程については都合が悪ければ調整することができます。 ただし、申告内容や過去の調査結果、事業内容などから「事前に知らせると正確な事実の把握が困難になるおそれがある」と判断される場合には、事前通知なしで調査が行われることもあります(この場合も、臨場後すみやかに税目・課税期間・目的などが説明されます)。 調査は、管轄する税務署や、大きな会社では国税局の調査部の調査官が担当します。通常、「税務調査」といわれるのは、この任意調査のことを指します。 テレビや映画の影響で、税務調査というと強制調査をイメージする方がいるかもしれませんが、一般的な税務調査のほとんどは任意調査です。きちんと帳簿をつけている会社であれば、過度に恐れる必要はありません。

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数字で見る税務調査の実態(最新の公表資料から)

「実際どのくらいの会社に調査が入っているのか」を知っておくと、漠然とした不安を具体的な備えに変えられます。国税庁が令和7年12月に公表した令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月に処理を終了した分)の集計では、法人に対する調査の状況は次のとおりでした。
バー・クラブ62.3%、その他の飲食45.2%、外国料理40.2%、美容34.5%、大衆酒場・小料理34.4%を示す横棒グラフ
現金取引の比率が高く売上の把握が難しい業種が上位に並びます。業種そのものが疑われているという意味ではなく、記帳と証拠書類の管理がより重要になる目安として捉えてください。
項目令和6事務年度備考
法人税等の実地調査件数5万4千件前年比▲7.4%
申告漏れ所得金額8,198億円前年比▲15.8%
追徴税額(法人税・消費税)3,407億円前年比+6.6%。直近10年で最高
調査1件当たりの追徴税額約634万円直近10年で2番目の高水準
簡易な接触の件数8万5千件前年比+13.4%
実地調査の件数は減っている一方で、1件当たりの追徴税額は増えています。これは、限られた人員を「調査が必要と見込まれる先」に集中させていることの表れといえます。

「実地調査」だけでなく「簡易な接触」もある

税務署の接触は、調査官が事業所へ出向く実地調査だけではありません。申告内容に簡易な誤りが想定される場合には、書面照会・電話連絡・来署依頼による面接といった「簡易な接触」によって、申告書の自発的な見直し・提出が要請されます。令和6事務年度の法人税・消費税の簡易な接触は8万5千件で、実地調査(5万4千件)を上回っています。 税務署から届いた「お尋ね」の書面を放置すると、実地調査へ移行することがあります。心当たりがなくても、まずは内容を確認して期限内に回答することが大切です。

調査対象はどのように選ばれる?チェックされやすいポイント

税務調査に不安を抱える経営者のイメージ

企業経営を行っている経営者の方の中には、税務調査に対して不安を抱いている方も少なくないと思います。税務調査は、その企業や団体が納めるべき税金を適正に納めているかをチェックするために行われるもので、いつ自分の会社が調査対象となるかはわかりません。明日電話がかかってくる可能性もありますし、逆に10年ほど音沙汰がないこともあり得ます。企業ごとに税務調査が入る頻度はさまざまですが、調査に入る時期やターゲットはどのように決めているのでしょうか。

いまはAI・データ分析でも絞り込まれている

調査対象を選定するイメージ

実際に調査を行う国の機関は税務署であり、ここで具体的な調査対象を選定しています。近年大きく変わったのが、その選び方です。国税庁は公表資料の中で、AIを活用した予測モデルにより調査必要度の高い法人を抽出し、想定される不正のパターン(売上・原価・経費のどこに問題が出やすいか)まで判定したうえで、調査官が申告書や各種資料情報と併せて分析し、最終的に調査実施の要否を判断していると説明しています。 つまり、「たまたま当たる」のではなく、申告書の数字の動きや外部から集めた資料情報と照らして、不自然さが目立つ先が機械的に浮かび上がる仕組みになっています。決算書の数字が前年と大きく動いたときほど、その理由を説明できる資料をそろえておく意味は大きいといえます。 企業はその特徴ごとに区分けされ、多額の不正経理が疑われる企業や、不正に関わっている可能性が高い企業などが要チェックとされます。このような企業に対しては、比較的高い頻度で調査が行われることが多いです。一方、経営陣が大幅に変わったり事業規模が大きく変化したなど、申告内容をあらためて確認する必要がある企業は、長期的に見ていく必要があるため、しばらく経過してはじめて調査が入るということもあります。 税務署が調査を行うか否かを判断する際には、企業の申告状況を確認することになります。ターゲットになりやすい特徴としては、まず黒字が続いている企業が挙げられます。赤字企業に調査を行っても、不足している税金を納められずに倒産してしまう可能性もあります。これでは調査に入った意味が薄いため、黒字続きで納税余力のある企業のほうが調査対象に選ばれやすくなります。もちろん、赤字だからといって必ずしも調査対象にならないわけではないので、油断は禁物です。 また、近年急激に売上や収益が伸びている企業も、売上の申告漏れなどが起きやすいため、調査対象とされる確率が高まります。この他、退職金の支払いが多額にのぼったり、貸倒れによって経費計上が増加するなど、非経常的な経費が大きく発生している企業もチェックされやすくなります。他にもさまざまなポイントがあり、該当する項目が多ければ多いほど、調査対象になる可能性が高いといえます。

不正が見つかりやすい業種もある

国税庁は毎年、法人税の調査で不正計算が見つかった割合の高い業種を公表しています。令和6事務年度は、バー・クラブ(62.3%)、その他の飲食(45.2%)、外国料理(40.2%)、美容(34.5%)、大衆酒場・小料理(34.4%)が上位でした。現金取引の比率が高く、売上の把握が難しい業種が並んでいるのが特徴です。 この順位は「その業種が疑われている」という意味ではなく、記帳と証拠書類の管理がより重要になる業種を示すものと受け止めてください。該当する業種であれば、日々の売上記録・レジ精算・現金出納帳の整合を、より丁寧に残しておくことが有効です。

帳簿を確認するイメージ

いざ調査が入ると、どんなポイントを調べられるのかも知っておくことが大切です。最初にチェックされるのは、売上計上の金額はもちろん、その計上「時期」に不審な点がないかという点です。交際費や在庫、売上の計上ミスもよく見られるので入念に調べられますし、実際には働いていない架空の人件費を計上していないかも確認されます。故意に不正を働いたとあらぬ疑いをかけられないためにも、日ごろから適正な処理をしていくことが重要です。そのためにも、税務処理は社内の担当者だけで行うのではなく、経験豊富な税理士などの専門家に依頼して、普段から間違いがないかチェックしてもらうようにしましょう。 税務調査対策として最も大切なことは、課税対象となる内容について、法律に基づいた正確な知識と正しい証拠を揃えておくことです。たとえば、取引先と食事をしたのであれば、領収書に相手の企業名や氏名などをメモ書きしておいたり、なくさないようにしっかり保管しておくなどの心がけが欠かせません。正当な証拠があれば、不当な追徴課税を課せられる心配も少なくなるので、社内でこうした意識を周知徹底させておきましょう。

取引先や銀行への「反面調査」への対処のポイント

「反面調査」とはどんな調査?

税務調査にはいくつかの種類がありますが、ここでご紹介するのは「反面調査」です。反面調査とは、対象となる企業の金銭の流れなどを把握するために、取引先企業や銀行などに対して行う調査です。 税務調査において必要となった場合には、調査官が反面調査を行うことが法律で認められています。とはいえ、こうした調査をされると取引先との関係が気になるところです。

反面調査が行われる要件とは

国税庁は、取引先など納税者以外への調査を実施しなければ申告内容に関する正確な事実の把握が困難と認められる場合に反面調査を行うとしています。事務運営指針では、実施にあたってその必要性と反面調査先への事前連絡の適否を十分に検討すること反面調査である旨を取引先等に明示して行うことが定められています。反面調査には事前通知に関する法令上の規定はありませんが、運用上は原則としてあらかじめ対象者へ連絡が行われます。 実務上は、帳簿の内容に明らかな不審点があり本人からの説明だけでは確認できないケースのほか、自然災害や火災などで税務調査に必要な書類が消失してしまった場合のように、不可抗力によって取引先に確認せざるを得ないケースもあります。「悪いことをしたから反面調査になる」とは限らない、という点は知っておくとよいでしょう。

反面調査に冷静に対処するポイント

反面調査で調査官が訪れた際は、まず来社理由(要件)を必ず確認し、できれば名刺を受け取っておきましょう。反面調査が実行されることになったら、速やかに取引先に連絡をし、事情を説明しておくことも大切です。その際は、調査官の耳に入らない場所で連絡を入れるとよいでしょう。 また、反面調査の内容については細かく控えておき、法的に問題がなかったかを後から確認できる状態にしておくと安心です。日ごろから、取引先との間でも隠蔽工作に加担せず、お互いにクリーンな状態を保っておくことが、反面調査の際に慌てず対処できる大きな要素になります。 ここからは、あらかじめ知っておきたい国税局の部門や、国税庁・国税局・税務署の違いについてご紹介します。それぞれの組織の管轄やどのような調査が入るのかを事前に知っておくことで、いざというときにも余裕を持って対応できます。

国税局には3つの部門がある

国税局は、税務署では対応できない大口の法人や個人の税務調査を取り扱う機関です。その国税局の中で調査を担当する部門には、査察部・調査部・課税部の3つがあり、それぞれが性質の異なる役割を担っています。

査察部とは?

査察部は、税務署では取り扱うことができない悪質な脱税の調査を行う部門です。国税査察官が、個人事業者や会社単位での組織的な脱税などの情報を収集し、脱税の可能性が高いと判断した場合には、裁判所の許可状にもとづいて会社や自宅などの強制調査を行う権限を持ちます(この犯則調査の手続は、現在は国税通則法に定められています)。 捜査のうえで実際に脱税の事実があると判断した場合には、脱税の被疑者として裁判所に告発します。通称「マルサ」と呼ばれることもある査察部は、尾行や張り込みなど、体を張った調査を行うことでも知られています。なお、多くの国税局で「査察部」の名称が使われていますが、国税局によっては別の名称が用いられている場合もあります。

調査部とは?

調査部は、資本金1億円以上の大規模な法人を対象に税務調査を行う部門です。法人が行った税務処理が税法に沿った適正なものかどうかを重点的に調査します。金融取引や国際税務などについての高度な税務知識や、周到な事前準備が必要とされる案件を取り扱うことが多いのが特徴です。 大規模な法人の多くは全国各地に支店を持ちますが、税務調査については、その法人の本社または本店が置かれる地域の国税局が調査を担当します。強制調査を行う査察部とは異なり、調査部が行うのは任意調査で、その多くは事前に通知があります。

課税部とは?

課税部は、個人または資本金1億円未満の法人を対象に税務調査を行う部門です。通常は税務署の管轄となる個人や法人が対象になるため、課税部と税務署の特別調査担当者が協力しながら調査にあたります。調査対象が多いことから、国税局によっては複数の部署に分けられている場合もあります。

国税組織が持つ「質問検査権」とは?

質問検査権とは、税務調査において、国税庁や国税局、税務署の調査官が、納税者に対して質問を行い、帳簿や書類などを検査できる権限のことです。この権限は、国税通則法第74条の2から第74条の6に規定されています(平成23年12月の税制改正で、それまで所得税法・法人税法などに個別に定められていた質問検査権の規定が国税通則法に整理・統合されました)。 質問検査は、申告内容などを客観的にみて必要がある場合に行使されるもので、脱税などの犯罪を捜査するものではありません。あくまで適切な納税義務の履行を確認するための権限であり、納税者の権利を侵すような物理的な強制の権限などはありません。 ただし、正当な理由なく質問に答えなかったり、虚偽の答弁をしたり、検査を拒んだりした場合には、国税通則法第128条により、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。また、正当な理由なく帳簿書類などの提示・提出の求めに応じない場合や、偽りの記載をした帳簿書類を提示・提出した場合も同じ罰則の対象です。

※かつては「1年以下の懲役」と規定されていましたが、懲役と禁錮を「拘禁刑」に一本化する改正刑法が2025年(令和7年)6月1日に施行されたことに伴い、現在の条文は「拘禁刑」となっています。古い解説記事では「懲役」と書かれていることがあるため、あわせて押さえておきましょう。

調査が終わるときの手続き

調査の結果、申告内容に誤りが見つからなかった場合は、「更正決定等をすべきと認められない旨」の通知書が書面で交付されます。いわゆる「是認」で、この場合は原則として同じ税目・課税期間について再調査が行われることはありません(新たに得られた情報に照らして非違があると認められる場合を除きます)。 一方、誤りが見つかった場合は、その内容・金額・理由の説明を受けたうえで、修正申告(または期限後申告)が勧奨されます。修正申告に応じるかどうかは納税者の任意の判断であり、応じないからといって不利な取扱いを受けることは基本的にありません。ただし、修正申告をすると、その内容について不服申立てはできなくなります(更正の請求は可能です)。納得できない点があれば、その場で確認してから判断しましょう。

国税庁・国税局・税務署の違いとは?

国税に関する業務を行う国税庁・国税局・税務署は、それぞれ異なる役割を持っています。ここでは、その違いについて紹介します。

国税庁とは?

財務省の外局にあたる国税庁は、所得税や法人税、相続税などの直接税や、酒税・消費税など間接税といった内国税の課税と徴収を担う機関です。税務行政の執行や、国税局・税務署への指導監督、各官庁との折衝なども担当します。

国税局とは?

国税局は、管轄区域内の税務署の指導監督を行うとともに、税務署では対応が難しい大口の法人や、大口の滞納・脱税の賦課・徴収を行う機関です。全国に11の国税局があり、これに沖縄国税事務所を加えた計12の局・事務所が置かれています(沖縄のみ「国税事務所」の名称が使われています)。

税務署とは?

税務署は、それぞれの管轄区域の内国税の賦課・徴収を行う、納税者に最も身近な第一線の機関です。申告などの受理を行う部署と、税務調査を行う部署が設置されています。全国には524の税務署が置かれています(国税庁「国税庁の概要」より)。 ※本記事は2026年8月時点の公表資料・法令にもとづいて作成しています。調査事績の数値は毎年更新されるため、最新の情報は国税庁のサイトでご確認ください。

税務調査の事前準備|必要書類と帳簿の保存期間・当日までの流れ

税務調査に備えて帳簿や領収書などの書類を整理した事務所の机のイメージ

税務調査の連絡が来てから慌てないために、日頃の備えと、調査前に用意しておきたい書類を整理しました。事前通知で何が伝えられるのか、帳簿・書類の保存期間はどうなっているのか、準備を怠るとどのようなペナルティにつながるのかまで、2026年8月時点の制度にもとづいて解説します。

何よりの対策は「日頃から正しい経理処理」

税務調査はある日突然やってきます。最大の対策は、普段から正しく申告し、取引の証拠となる書類をきちんと保存しておくことです。通知が来てから準備を始めるのではなく、領収書や契約書をわかりやすく保管し、後で曖昧になりそうな点はこまめにメモしておきましょう。

実務では、直近3年分の帳簿・契約書類などを中心に確認されることが多くみられます。ただしこれはあくまで運用上の目安で、法律上、税務署が申告内容を是正できる期間(更正・決定の期間制限)は原則5年、偽りその他不正の行為があったと認められる場合は最長7年です。事前通知があっても、そこからすべての資料を一から点検するのは時間的に限界があります。月次でこまめに処理し、疑問点を残さず税理士のチェックを受けておくと、調査が決まってから慌てずに済みます。

事前通知では何が伝えられるのか

個人・法人を問わず、実地の調査を行う場合は原則として事前通知が行われます。国税庁は、調査開始前に相当の時間的余裕を置いて、電話などにより次の内容を納税者(税務代理権限証書を提出した税理士がいる場合はその税理士)へ通知するとしています。

  • 実地の調査を行う旨
  • 調査を開始する日時・場所
  • 調査の対象となる税目・課税期間
  • 調査の目的
  • 調査の対象となる帳簿書類その他の物件 など

つまり、通知の時点で「どの税目の、いつの期間を、何を見て確認されるのか」がわかります。まずはこの内容を正確にメモし、税理士と共有することが準備の第一歩です。

なお、申告内容や過去の調査結果、事業内容などから「事前に知らせると正確な事実の把握が困難になるおそれがある」と判断される場合には、事前通知なしで調査が行われることもあります(この場合も、臨場後すみやかに税目・課税期間・目的などが説明されます)。飲食業・小売業など現金商売で無予告調査が行われやすいと言われるのはこのためです。

日程の変更は申し出ることができる

通知された日程がどうしても都合の悪い場合、合理的な理由があれば日程変更を申し出ることができます。申出の方法は法令で定められておらず、電話などの口頭で構いません。国税庁も、納税者・税理士の業務の繁閑に配慮して調査開始日時を調整するとしています。無理に予定を詰め込んで準備不足のまま迎えるより、率直に相談したほうが結果的にスムーズです。

調査の前に用意しておきたい必要書類

事前通知が来て日程が決まったら、まず次のような書類をそろえます。

  • 総勘定元帳
  • 現金出納帳
  • 売上関連書類(見積書、納品書、請求書、領収書、売買契約書)
  • 仕入れ等関連書類(請求書、領収書、在庫表)
  • 株主総会・取締役会の議事録
  • 銀行通帳
  • 借入の契約書・覚書
  • 登記を変更した場合の履歴事項全部証明書
  • 雇用関係書類(賃金台帳、源泉徴収簿)

書類がそろったら、請求書・領収書・契約書を整理し、未処理のものがないか、売上が正しく計上されているかを確認します。データがパソコンにしかない場合は必要に応じて出力できるようにし、取引先発行の請求書や領収書が見つからないものは再発行を依頼してそろえておきましょう。最初に会社や事業の概況を聞かれることが多いので、会社案内や商品パンフレットを用意し、業務内容を説明できるようにしておくとスムーズです。

また、通知された年分以外の帳簿書類の提示を求められることもあります。たとえば「その年の減価償却費が正しいかを確認するために、資産を取得した年度の書類を見たい」といったケースです。これは通知された年分の調査に必要な範囲での確認であり、調査対象が勝手に広がったわけではありません。落ち着いて対応しましょう。

書類の改ざんは絶対にNG

準備で絶対にやってはいけないのが、ミスを隠すための書類の改ざんです。仮装・隠ぺい行為とみなされると、通常の加算税よりはるかに重い重加算税が課されます。誤りを見つけたら隠すのではなく、指摘される前に自主的に修正申告をしておきましょう。調査の通知前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税は課されません(調査通知の後・更正を予知する前の修正申告なら5%に軽減されます)。

準備不足がそのままペナルティになるケースがある

令和5年分以後の申告について、税務調査で帳簿の提示・提出を求められたのに応じなかった場合や、帳簿への売上金額の記載等が不十分だった場合には、通常の加算税割合に上乗せがされます。上乗せ幅は、本来記載すべき金額の3分の2未満だった場合が5%、2分の1未満だった場合や提示等をしなかった場合が10%です。

「帳簿を出さなければ調査が進まない」のではなく、出さないこと自体が金銭的な不利益に直結する制度になっている点に注意してください。日頃の記帳と保存が、そのまま防御になります。

加算税・過怠税の早見表(正確な数値で把握する)

ペナルティの重さを正しく知っておくと、「隠さず、早めに直す」という判断がしやすくなります。主な加算税の割合は次のとおりです(令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税の場合)。

過少申告加算税10〜15%、無申告加算税15〜30%、重加算税35〜40%を比較した横棒グラフ
無申告加算税は調査を受けた後に期限後申告をした場合の割合。過去5年以内に無申告加算税・重加算税を課されたことがある場合などはさらに10%加重されます。
種類割合備考
過少申告加算税10%(一定部分は15%)期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分が15%。調査通知前の自主的な修正申告なら課されない
無申告加算税15%/20%/30%50万円までの部分15%、50万円超300万円までの部分20%、300万円を超える部分30%(調査を受けた後の期限後申告等)
無申告加算税(自主的な期限後申告)5%調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合
重加算税35%/40%仮装・隠ぺいがあった場合。過少申告加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%
重加算税の加重+10%過去5年以内に無申告加算税・重加算税を課されたことがある場合など(45%・50%になる)
印紙税の過怠税本来の印紙税額の3倍自主的に「印紙税不納付事実申出書」を提出した場合は1.1倍に軽減

このほか、納付が遅れた期間に応じて延滞税もかかります。延滞税の割合は年ごとに変わるため、実際の金額は国税庁が公表する当年の割合でご確認ください。

帳簿・書類の保存期間(最新の制度を確認)

税法は、お金の収支を説明できる帳簿・書類を一定期間保存することを義務づけています。期間は区分によって異なります。

区分対象保存期間
法人帳簿・取引に関して作成/受領した書類原則7年(欠損金額が生じた事業年度は10年)
個人(青色申告)帳簿・決算関係書類など原則7年(請求書・見積書・納品書・送り状などは5年)
個人(白色申告)収入金額や必要経費を記載した法定帳簿7年(任意帳簿・その他の書類は5年)
消費税の課税事業者適格請求書(インボイス)の写し・受領したインボイス等7年(6年目・7年目は帳簿か請求書等のいずれか一方でよい)

起算日は区分ごとに異なります。法人はその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から、個人は確定申告期限の翌日から数えます。消費税のインボイス等は課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日が起算日です。

なお、会社法では総勘定元帳や計算書類などを10年間保存することが求められているため、法人は会計関係書類をまとめて10年保存しておくと確実です。

電子取引データは「印刷して保存」だけでは足りない

請求書や領収書をメール・クラウドなど電子データでやりとりした場合は、そのデータのまま保存する必要があります(2024年1月以降)。原則として、改ざん防止措置・「日付・金額・取引先」での検索機能・ディスプレイやプリンタの備付けといった要件を満たす必要があります。

ただし、要件どおりに保存できなかったことについて所轄税務署長が「相当の理由」があると認める場合の猶予措置が、恒久的な措置として設けられています。この猶予措置に事前申請は不要で、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられることと、そのデータを出力した書面を提示・提出できることが要件です。一方、システムが整っていて原則どおり保存できるのに、資金繰りや人手不足といった特段の事情なく保存していない場合は「相当の理由」に当たらないとされています。詳細は国税庁の公表資料でご確認ください。

とくに気をつけたい収入印紙

契約書や領収書など、課税文書に必要な収入印紙の貼り忘れ・消印漏れは調査で指摘されやすいポイントです。貼り忘れが見つかると、本来の印紙税額とその2倍に相当する金額の合計(=本来の3倍)の過怠税が課されます。ただし、調査で指摘される前に自ら「印紙税不納付事実申出書」を所轄税務署長に提出した場合は、1.1倍に軽減されます。また、貼り付けた印紙を所定の方法で消印しなかった場合は、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されます。日頃から、貼付と消印を念入りにチェックしておきましょう。

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当日に向けた「事前準備」のポイント

多くの企業は、万全の体制で調査を迎えるために事前準備を行います。代表的なものを整理すると、次のようになります。

申告内容・帳簿の見直し

過去の申告書(おおむね5年分)を見直し、売上や利益率に異常な数値(異常計数)がないかを確認します。気になる点があれば、その理由を説明できるよう根拠資料を整理しておきます。代表者個人の申告(所得税など)も確認の対象になりやすいため、あわせて点検しておくと安心です。

説明の準備(事業概要)

調査では事業の概況を説明する場面があります。製造業なら製造の流れ、卸売業なら扱う商品の概要や取引の流れなど、普段の業務をわかりやすく説明できるよう準備しておきましょう。回答が曖昧だったり誤解を招いたりすると、確認に時間がかかり、取引先への反面調査に発展することもあります。

現金・現物のチェック

現金商売では、調査当日に実際の現金残高と現金出納帳の残高が一致しているかをあらかじめ合わせておきます。差異があると不要な誤解を招きかねません。金庫やデスクの引き出しの中身が確認される場合に備え、私物と業務用のものを区別しておくのも有効です。

売上計上の根拠を整える

帳簿調査では、売上などの期末の計上時期がとくに重視されます。受注から売上計上までの流れ、値引きの計算根拠、外注費の正当性などを、数字だけでなく経緯まで説明できるよう、証ひょう類をそろえておきましょう。グレーな処理を残さないことが、余計な追徴を避ける一番の予防策です。

提出・預かりのルールを知っておく

調査の過程で、帳簿書類の提示・提出を求められたり、いったん税務署で預かる(留置き)ことを求められたりする場合があります。留置きは納税者の理解と協力のうえで行われるもので、一方的に留め置かれるものではありません。預けた書類は、留め置く必要がなくなれば遅滞なく返還されます。業務で使う必要があるものは、その旨を伝えて相談してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 調査は何年分さかのぼりますか?

実務では直近3年分が中心になることが多いですが、法律上の期間制限は原則5年、偽りその他不正の行為があったと認められる場合は最長7年です。日頃から保存義務のある年数分(原則7年)の書類を整理しておけば、慌てずに対応できます。

Q. 事前通知された日程は変更してもらえますか?

合理的な理由があれば変更を申し出ることができます。申出の方法に決まりはなく、調査担当者へ電話などで伝えれば足ります。一時的な多忙、親族の不幸、業務上やむを得ない事情などが理由として挙げられています。無理に日程を合わせて準備不足のまま迎えるより、早めに相談しましょう。

Q. 書類が見つからない・紛失してしまったら?

取引先に再発行を依頼できるもの(請求書・領収書など)は早めに手配しましょう。どうしても用意できない場合でも、改ざんやでっち上げは厳禁です。事実を整理し、説明できる範囲を準備したうえで、対応に迷う点は税理士に相談してください。

Q. メールで届いた請求書は、印刷して紙で保管しておけばよいですか?

紙に出力しただけでは足りず、電子データそのものを保存しておく必要があります。要件どおりの保存が難しい場合でも、上記の猶予措置により、データを保存したうえで「ダウンロードの求め」と出力書面の提示に応じられる状態にしておけば対応できます。事前の申請は不要です。

Q. 顧問税理士がいなくても対応できますか?

対応自体は可能ですが、前回調査以降のすべての取引を通常業務と並行して見直すのは大きな負担です。証拠書類が整っていないと追徴につながりやすいため、不安がある場合は税務調査の対応に詳しい税理士に立ち会いを依頼すると安心です。

まとめ

税務調査の準備で大切なのは、特別なテクニックではなく「日頃の正しい経理」と「必要書類をきちんとそろえておくこと」です。事前通知では税目・課税期間・目的まで伝えられるので、まずはその内容を正確に押さえましょう。帳簿・書類は原則7年(法人で欠損金額が生じた事業年度は10年)の保存義務があり、電子取引データはデータのまま保存する必要があります。帳簿を出せないこと自体が加算税の上乗せにつながる制度になっている以上、日頃の記帳と保存がいちばんの備えです。誤りに気づいたら隠さず自主的に修正し、説明の準備を整えておけば、調査は過度に恐れるものではありません。準備や当日の対応に不安があれば、早めに専門家へ相談しておきましょう。

※本記事は2026年8月時点の制度にもとづいて作成しています。加算税の割合や保存要件は改正されることがあるため、最新の情報は国税庁のサイト等でご確認ください。

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税務調査が入りやすい時期はいつ?秋がピークの理由と頻度・確率

秋の税務調査シーズンに備えて帳簿と資料を整理する事業者のイメージ

いつ頃に税務調査が入りやすいのか、確率の高い時期とその理由について、税務署の年間スケジュールをふまえて解説します。「そろそろ来るかもしれない」と不安な方が、落ち着いて備えられるよう整理しました。

税務調査が入りやすいのは秋(9~11月)がピーク

「税務調査が入る時期があらかじめわかっていれば準備しやすいのに」と考える方は多いと思います。残念ながら、いつ調査を行うかは法律で決められているわけではなく、税務署の判断で一年を通じて実施されます。

とはいえ、実務の現場では毎年9月~11月が税務調査のピークと言われています。これは税務署側の一年の業務サイクルと深く関係しています。順を追って見ていきましょう。

税務署の年間スケジュールから見る調査の時期

税務署の繁忙期を知ると、調査が秋に集中する理由が見えてきます。なお、税務署(国税庁)の事務年度は7月1日から翌年6月30日までで、一般の会計年度(4月~3月)とずれている点も押さえておくとわかりやすいです。国税庁が毎年公表する調査事績も「令和6事務年度=2024年7月~2025年6月」という区切りで集計されています。

1月~3月:確定申告シーズンで多忙

2月16日~3月15日は個人事業主の所得税の確定申告期間です。e-Taxや還付申告は1月から受け付けているため、年明けから前半にかけて税務署は申告対応で慌ただしくなります。この時期にわざわざ調査に動くことは少なく、確率的には低いと考えてよいでしょう。

5月~6月:法人の決算事務でもっとも多忙

個人の確定申告・所得税納付が一段落すると、次は企業の決算が控えています。多くの企業が3月を会計年度末にしているため、その申告期限(原則として事業年度終了後2か月以内=5月末)に向け、税務署は5月~6月に決算処理が集中し、年間で最も忙しくなります。総力を挙げて事務に当たる時期のため、新たに調査へ動くことは考えにくい期間です。

7月:人事異動でいったん落ち着く

企業の決算対応のピークが過ぎると、税務署は6月末に事務年度末を迎え、7月に定期人事異動が行われます。新体制に切り替わり組織が落ち着くまでは、本格的な調査は始まりにくい時期です。

8月~11月:調査が本格化しピークへ

お盆休みが明けて新しい事務年度の体制が整う8月下旬ごろから、税務調査が徐々に動き出します。そして9月から年末に向かう11月ごろまでがピークになる、というわけです。調査の事前通知(電話連絡)はおおむね実施日の1~2週間前に入ることが多いため、対策や帳簿の整理をしておきたい場合は、秋を迎える前に片付けておくと安心です。

逆に、9月~11月ごろに税務署から何の連絡もなければ、その年は調査が入らずに済む可能性が高いとも言えます。ただし、これはあくまで「入りやすい時期の傾向」であり、年末以降や年明けに調査が行われるケースもゼロではありません。「この時期を過ぎれば絶対に来ない」と断定はできない点には注意してください。

税務調査の頻度・確率はどのくらい?

そもそも税務調査は、毎年すべての事業者に入るものではありません。国税庁が公表した令和6事務年度(2024年7月~2025年6月)の調査事績によると、実際に調査官が事業所などへ出向く「実地調査」の件数は次のとおりです。

区分実地調査の件数(令和6事務年度)頻度のイメージ
法人(法人税・消費税)5万4千件(前年度比▲7.4%)申告法人数に対して単純計算するとおおむね2%弱=数十年に1回程度
個人(所得税)4万7千件(同▲1.3%)申告人員に対して単純計算すると1%前後=さらに低い水準

※件数は国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(いずれも令和7年12月公表)によります。「頻度のイメージ」は公表件数から単純計算したおおよその目安であり、国税庁が公表している確定値ではありません。

実地調査の件数自体は、近年おおむね減少傾向で推移しています。ただし、これは「調査が甘くなった」という意味ではありません。同じ令和6事務年度の法人調査では、追徴税額(法人税・消費税)の総額が3,407億円と直近10年で最も高く、調査1件あたりの追徴税額も634万円と高い水準になりました。件数を絞り込み、必要度の高い先に狙いを定める傾向が数字にはっきり表れています。

「実地調査」以外の接触のほうがはるかに多い

もう一つ押さえておきたいのが、税務署からの接触は臨場する実地調査だけではないという点です。国税庁は、文書や電話による連絡・税務署への来署依頼で申告内容の見直しを促す「簡易な接触」も並行して行っています。

令和6事務年度の個人(所得税)では、実地調査が4万7千件だったのに対し、簡易な接触は68万9千件にのぼり、両者を合わせた「調査等」の合計は73万6千件でした(前事務年度は60万5千件)。つまり、「調査官が来る確率」は低くても、「税務署から何らかの連絡が来る確率」はそれより格段に高いということです。

実地調査4.7万件に対し簡易な接触が68.9万件と大幅に多いことを示す棒グラフ
調査官が臨場する実地調査より、文書・電話などによる「簡易な接触」のほうがはるかに多い(令和6事務年度=2024年7月〜2025年6月)

お尋ね文書や電話連絡が来ること自体は珍しいことではありません。慌てず、指摘された箇所の事実関係と資料を確認したうえで回答することが大切です。

なお、実際の調査対象は無作為に選ばれるわけではなく、申告内容や取引状況からリスクが高いと判断された先が優先されます。過去の調査で大きな指摘を受けた場合は最短3年程度の間隔で再び調査が入ることもあれば、特に問題がなければ5年~10年来ないことも珍しくありません。最新の件数・内訳は、国税庁が毎年公表する調査事績の資料でご確認ください。

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調査対象に選ばれやすい企業・個人の特徴

税務調査を実際に行うのは所轄の税務署で、申告状況や各種資料情報をもとに調査対象を選定しています。次のような特徴に当てはまるほど、調査対象になりやすい傾向があります。

  • 黒字が続いている:赤字企業に調査をしても追徴税額を回収しにくいため、利益が出ている先のほうが優先されやすい傾向があります(赤字でも対象にならないわけではありません)。
  • 売上や利益が急に伸びている:利益確保のために売上の計上漏れなどが起きやすいと見られ、確認の対象になりやすくなります。
  • 経費や利益率に大きな変動がある:退職金や貸倒れなど非経常的な経費が急増し、利益が不自然に少なく見えるケースはチェックされやすくなります。
  • 現金商売・申告漏れや無申告の懸念がある:取引の実態が把握しづらい業種や、申告内容に不審点がある先は注意が必要です。無申告法人への調査は近年強化されています。

こうした特徴に複数当てはまるほど、調査対象に選ばれる可能性は高まると考えておくとよいでしょう。

選定にはAIによる分析も使われている

近年の大きな変化として、選定の段階でAI(人工知能)による分析が使われていることが挙げられます。国税庁は令和6事務年度の調査事績の中で、AIを活用した予測モデルにより調査必要度の高い法人を抽出し、そのうえで申告書や保有する資料情報を調査官が分析・検討して、実地調査を行うかどうかを最終的に判断していると説明しています。所得税の調査等でも同様に、選定にAIを活用したことが明記されています。

つまり、「たまたま当たるかどうか」という運の要素は以前より小さくなっていると考えるのが現実的です。時期を気にするよりも、日々の申告と記帳の精度を高めておくほうが、備えとしてはるかに有効になります。

調査でチェックされやすいポイント

いざ調査に入ると、どこを見られるのかを知っておくと落ち着いて対応できます。代表的なのは次のような点です。

  • 売上の計上額と計上時期:金額だけでなく「いつ売上に計上したか(期ずれ)」に不審な点がないかを丁寧に確認されます。
  • 交際費・在庫・経費の処理:交際費の範囲や在庫の評価、経費の計上ミスはよく確認される項目です。
  • 人件費:実際には働いていない人への架空の給与が計上されていないかが見られます。
  • 消費税の取り扱い:課税・非課税の区分や仕入税額控除の要件(帳簿・請求書等の保存)は、法人・個人を問わず確認されやすい領域です。

大切なのは、課税対象となる取引について法律に基づいた正確な知識を持ち、正しい証拠(証ひょう類)をそろえておくことです。たとえば取引先との会食であれば、領収書に相手の会社名・氏名・人数などをメモして保管しておくと、正当な経費であることを説明しやすくなります。正当な根拠がそろっていれば、不当な疑いや追徴課税を受ける心配も小さくなります。

秋までにやっておきたい備え

ピークの時期が読めるのであれば、その前に手を打っておくのが得策です。難しいことをする必要はなく、次のような基本的な確認で十分です。

  • 直近3期分の帳簿と証ひょうの所在を確認する:調査で見られるのは通常過去3~5期分です。年度ごとに整理され、すぐ取り出せる状態になっているかを点検します。
  • 電子データの保存状況を確認する:電子取引のデータ(メール添付の請求書・Web発行の領収書など)は、法令で定められた要件に従って電子のまま保存する必要があります。保存方法に不安があれば、国税庁の電子帳簿保存法の解説や顧問税理士に確認しておきましょう。
  • 説明しにくい支出を洗い出す:金額の大きい交際費、役員への貸付金、私的な支出と紛らわしい経費などは、あらかじめ経緯を整理しておくと当日の説明がスムーズです。
  • 顧問税理士と連絡体制を確認する:事前通知は税理士に入ることも多いため、立ち会いの可否や連絡手順を決めておくと安心です。

よくある質問(FAQ)

Q. 調査の連絡はどのように来ますか?

多くの場合、実施日の1~2週間前に、税務署から会社または顧問税理士へ電話で事前通知が入ります。その際に、調査の対象となる税目(法人税・消費税など)や対象期間(通常は過去3~5期分)が伝えられます。なお、不正の疑いが強いなど国税通則法に定める一定の場合には、事前通知のない「無予告調査」が行われることもあります。

Q. 都合の悪い日に調査日を指定されたら断れますか?

事前通知のある調査であれば、業務の都合などを伝えて日程を調整してもらうことは可能です。一方的に決められるわけではないので、対応が難しい日であれば、税務署や顧問税理士に相談して現実的な日程を相談しましょう。

Q. 秋の繁忙期を過ぎれば、もう調査は来ませんか?

9月~11月がピークなのは事実ですが、「この時期を過ぎれば絶対に来ない」とは言い切れません。年末以降や翌年に調査が行われることもあります。時期にとらわれすぎず、日頃から正しい申告・記帳を続けておくことが何よりの備えです。

Q. 調査は何日くらいかかりますか?

規模や論点の多さによりますが、中小企業や個人事業主の場合、臨場(調査官が事業所に来る日)は2日程度で終わることが多いとされています。国税庁の資料では、令和6事務年度の所得税の実地調査1件あたりの平均日数は8.8日と示されていますが、これは事前の準備や事後の確認を含めた事務量ベースの日数で、臨場が連日8日以上続くという意味ではありません。臨場後も追加資料の提出ややり取りが続き、最終的な結論が出るまで1~2か月かかることもあります。

Q. 秋に連絡が来なければ、その年は安心してよいですか?

可能性としては低くなりますが、断定はできません。前述のとおり、税務署からの接触には実地調査だけでなく文書や電話による「簡易な接触」もあり、こちらは件数がはるかに多くなっています。連絡が来た場合に落ち着いて資料を示せる状態を保っておくことが、時期を読むことよりも確実な備えです。

まとめ:時期を気にするより、日頃の備えを

税務調査は秋(9~11月)に集中しやすいものの、その時期は税務署の業務サイクルから生じる傾向にすぎず、ほかの時期に来る可能性も残ります。確率としては決して高くありませんが、件数を絞って必要度の高い先を選ぶ傾向が強まっており、選定にはAIによる分析も使われています。選ばれやすい特徴に当てはまる場合は油断できません。

結局のところ、毎年正しく申告し、適正な記帳・証ひょうの保管を積み重ねていれば、いつ調査が入っても落ち着いて対応できます。判断に迷う処理がある場合や、調査への備えに不安がある場合は、税務調査の対応に詳しい税理士に早めに相談しておくと安心です。

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税務調査で狙われやすい会社・業種とは|特徴・備え・ペナルティを解説

帳簿や領収書を整えて税務調査に備える中小企業のイメージ

「うちの会社は税務調査の対象になりやすいのだろうか」——経営者であれば、一度は気になるテーマではないでしょうか。税務調査は、すべての会社に同じ確率で入るわけではありません。税務署は限られた人員で効率よく確認を行うため、一定の傾向にもとづいて調査先を選んでいます。ここでは、狙われやすいとされる会社・業種の特徴と、いざというときに慌てないための備え、そして指摘を受けたときのペナルティの目安まで、現場の視点から整理します。

税務調査で狙われやすい会社・業種とは?

税務署も限られた人員と時間で調査を行っています。そのため、「新たに納めてもらえる税額が見込める先」に的を絞る傾向があります。大勢で調査に行っても追徴がわずかでは、調査にかかるコストのほうが上回ってしまうからです。こうした事情から、ポイントになりやすいのが「黒字企業」「トレンドに乗った業種」「現金を直接扱う業種」の3つです。

① 黒字企業(とくに業績が変化した会社)

黒字企業のなかでも注意したいのが、業績が急上昇している会社赤字続きから黒字へ転換した会社です。所得が増えている局面では申告内容にズレが生じやすく、税務署も「会社の変化」を確認したいと考えます。なお、赤字企業が必ず対象外になるわけではありません。油断は禁物です。

② トレンドに乗った業種

その時々の経済の動きで業績が伸びた業種も、注目されやすくなります。たとえば、需要が高まった「建設業」や「中古車販売業」「産業廃棄物処理業」などは、黒字化している可能性が高く、調査の候補に挙がりやすい傾向です。また、お金の流れを追いにくい「海外取引を行う会社・個人」や「電子商取引(ネット販売)を行う会社・個人」も、所得の申告漏れや資産の把握強化のため、調査が入りやすいとされます。近年は国税庁も、海外取引・インターネット取引(ネット通販、シェアリングエコノミー、暗号資産など)や無申告への対応を重点分野として掲げています。

③ 現金を直接扱う業種

飲食業、理容・美容業、小売店など、現金商売の業種は、売上の管理が個々の現場に委ねられやすいため、昔から確認の目が向けられやすい分野です。場合によっては予告なしで調査が行われることもあり、職員が一般客のように来店して状況をさりげなく確認しているケースもあります。とくにレジまわりの現金管理は、日頃から整えておきたいポイントです。

税務署はどのように調査先を選んでいる?

実際に調査を行うのは税務署で、ここで具体的な対象が選定されます。企業はその特徴ごとに区分けされ、たとえば不正経理が疑われる企業や、不正に関わっている可能性が高い企業は「要チェック」とされ、比較的高い頻度(数年に一度)で調査が行われることがあります。一方、経営陣の交代や事業規模の大きな変化など、申告内容を時間をかけて見極める必要がある企業は、長期的に経過を見たうえで調査に入ることもあります。同じ会社でも、状況によって調査の頻度は大きく変わるのです。

最終的に調査を行うかどうかは、申告状況を確認したうえで判断されます。前述のとおり、黒字が続いている企業や、近年急に売上・利益が伸びている企業はターゲットになりやすい傾向です。また、退職金の支払いや貸倒れなど、非経常的な経費が大きく計上され、利益が小さく見えているようなケースも確認の対象になりやすいといえます。該当する特徴が多いほど、調査対象になる可能性は高まります。

調査で実際にチェックされやすいポイント

いざ調査が入ると、どこを見られるのかを知っておくと安心です。とくに確認されやすいのは次のような点です。

チェックされやすい項目主な確認ポイント
売上の計上計上の金額・時期(期ずれ)に不審な点がないか
交際費・経費業務との関連性、私的支出が混じっていないか
在庫(棚卸資産)期末在庫の計上漏れ・評価に誤りがないか
人件費実態のない(架空の)人件費が計上されていないか

これらは、故意でなくても処理を誤りやすい項目です。あらぬ疑いをかけられないためにも、取引の事実を裏づける証拠を残し、適正に処理しておくことが何より重要になります。

指摘を受けるとどうなる? 加算税・延滞税の早見

調査で申告のもれや誤りが見つかると、不足していた本税に加えて、加算税延滞税が上乗せされることがあります。金額の目安を知っておくと、いたずらに不安になりすぎず、正しく備えられます。現行の割合は次のとおりです。

種類割合の目安備考
過少申告加算税10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)調査の通知前に自主的に修正申告すれば課されません
無申告加算税15%(50万円超300万円以下の部分は20%、300万円超の部分は30%)令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する分に適用
重加算税過少申告に代えて35%/無申告に代えて40%売上除外や架空経費など「仮装・隠蔽」があった場合
延滞税納期限の翌日から2か月以内は年2.8%、2か月経過後は年9.1%令和8年(2026年)分。割合は毎年見直されます

さらに、前年・前々年にも無申告加算税などを課されていた場合は、短期間に繰り返した無申告・仮装隠蔽に対して10%が加重される仕組みもあります(令和6年1月以降)。負担が大きいのは、やはり仮装・隠蔽をともなう重加算税です。誤りに気づいたら、調査の通知が来る前にできるだけ早く自主的に修正申告することが、ペナルティを抑える最も確実な方法だといえます。最新の割合や細かな要件は、国税庁のサイト等で必ずご確認ください

初めての税務調査、やっておくべきこと

税務調査は、いつ自社が対象になるかを正確に予測することはできません。明日連絡が来る可能性もあれば、長く音沙汰がないこともあります。だからこそ、日頃の備えが効いてきます。最も大切なのは、課税対象となる内容について正確な知識を持ち、正しい証拠をそろえておくことです。

たとえば、取引先と会食をしたなら、領収書に相手の会社名・氏名・人数などをメモしておき、紛失しないよう保管しておく——こうした小さな積み重ねが、いざというときに「正当な経費である」と説明する根拠になります。正当な証拠があれば、不当な追徴を心配する必要もありません。社内でこうした意識を共有しておきましょう。

とはいえ、税務の判断は専門的で、自社だけで完璧に備えるのは簡単ではありません。経験豊富な税理士に普段からチェックしてもらうことで、誤りを未然に防ぎ、調査時にも落ち着いて対応できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 黒字でなければ税務調査は来ませんか?

そうとは限りません。黒字企業が選ばれやすい傾向はありますが、赤字でも申告内容に不審な点があれば対象になり得ます。「赤字だから安心」と考えるのは禁物です。

Q. 開業して間もない会社にも調査は入りますか?

入ることがあります。とくに急成長している事業や現金商売では、規模や年数にかかわらず確認の対象になり得ます。最初の数年から正確な記帳を心がけておきましょう。

Q. 狙われやすい業種だと分かったら、どう備えればよいですか?

売上・現金管理を厳密にし、経費の根拠資料を整えることが基本です。心配な場合は、税務調査対応の実績がある税理士に相談しておくと安心です。

Q. 税務署から調査の連絡が来たら、どう対応すればよいですか?

まず、調査の日程は原則として事前に通知されるため、慌てて即答する必要はありません。顧問税理士がいれば必ず立ち会いを依頼し、通知された対象期間の帳簿・請求書・領収書・契約書などを落ち着いて準備します。日程は業務の都合を伝えて調整できる場合もあります。

Q. 過去の申告に誤りが見つかったら、どうすればよいですか?

気づいた時点で、調査の通知が来る前に自主的に修正申告するのが原則です。上の早見表のとおり、通知前の自主的な修正であれば過少申告加算税が課されないなど、負担を軽くできます。判断に迷う場合は税理士に相談しましょう。

まとめ

税務調査で狙われやすいのは、おおまかに「黒字企業」「トレンド業種」「現金商売」という特徴を持つ会社です。ただし、これらに当てはまっても正確に申告し、根拠資料を整えていれば恐れることはありません。逆に、当てはまらなくても油断は禁物です。日頃の正しい処理と、誤りに気づいたときの早めの自主的な対応こそが、最も確実な税務調査対策になります。

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税務調査で狙われる理由とは?対象になりやすい会社・業種と備え方

帳簿や書類を確認して税務調査に備えるイメージ

税務調査とは?

税務調査とは、国税局や税務署などの行政機関が、納税者の申告内容が正しいかどうかを確認する調査です。帳簿や領収書などをチェックし、申告額に誤りがあれば是正を求められます。指摘内容に沿って修正申告を行い、不足分を追加で納税することになります。

調査の頻度に厳密な決まりはなく、数年に一度の会社もあれば、しばらく入らない会社もあります。傾向としては、売上や利益が急に増えた場合や、大きな設備投資を行った場合に入りやすいと言われます。黒字の会社に限らず、赤字の会社でも消費税は発生するため、調査の対象になることがあります。

調査の対象期間は、法律上は原則として過去5年分です(国税通則法第70条の更正・決定の除斥期間)。実務では、まず直近3年分を中心に確認し、問題があればさらにさかのぼるという進め方が多く、偽りその他不正の行為(仮装・隠蔽など)があると判断された場合は、最長7年分まで対象になります。

税務調査の流れ

税務調査の流れを確認するイメージ

実際の税務調査は、おおむね次のような流れで進みます。

① 事前通知・日程調整……任意調査では、原則として事前に通知が行われ(多くは電話)、日時・場所・調査の対象税目・課税期間などが知らされます。指定日に都合がつかなければ、合理的な理由があれば変更を相談できます。なお、売上除外などが疑われる現金商売などでは、まれに事前通知のない無予告調査が行われることもあります。

② 事前準備……通知された対象に合わせて、請求書・総勘定元帳・領収書・預金通帳・契約書などをそろえます。不安な場合は顧問税理士に相談しておくと安心です。

③ 実地調査……規模により異なりますが、中小企業では2日間程度行われることが多いです。初日は会社の業務内容や取引先などの概況のヒアリングから始まり、その後、帳簿の確認に入ります。資料が足りない場合は後日提出となり、確認が終わらない場合は書類を預かる(留め置く)こともあります。

④ 結果説明……調査が終わると結果の説明があります。指摘がなければ「申告是認」で終了です。指摘があれば修正申告を求められます。

⑤ 修正申告・追加納税(または不服申立て)……指摘に納得できれば修正申告書を提出します。納得できない場合は修正申告をせず、税務署からの「更正」処分を待ち、その内容にも不服があれば、再調査の請求や審査請求などの不服申立てを行うことになります。

税務に詳しくなく不安な場合は、税務調査に対応した経験のある税理士に立会いを依頼しておくと、指摘事項への説明や折衝を任せられるため心強いでしょう。

税務調査で狙われやすい会社

税務調査で対象になりやすいのは、ひと言でいえば「申告内容に不自然さがある会社」「是正効果が大きい会社」です。具体的には次のような特徴があります。

  • 黒字で業績が伸びている会社・赤字から急に黒字転換した会社……所得の増加は、税務署が会社の変化を確認するきっかけになります。
  • お金の流れが見えにくい事業……海外投資、電子商取引(ネット通販・コンテンツ配信など)は、所得の申告もれや財産の把握が論点になりやすい分野です。
  • 現金を直接扱う業種……飲食業、理容・美容業、小売店などは、売上を除外しやすい環境にあるため注意が必要とされます。普段からレジまわりの現金管理を正確にしておくことが大切です。

国税庁の「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月公表)によると、事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な業種は、1位がキャバクラ(4,164万円)、2位が今回初めて上位に入った眼科医(3,894万円)、3位がホステス・ホスト(2,968万円)で、前年1位の経営コンサルタントは4位でした。現金商売に加えて、医療系や経営コンサルタント・システムエンジニアといった高所得の専門職が上位に並ぶのが近年の特徴です。同事務年度の所得税の調査等による追徴税額の総額は1,431億円と4年連続で増加しており、AIを活用した調査先の選定も進んでいます。ネット通販・シェアリングビジネス・暗号資産(仮想通貨)取引など、新しいビジネスモデルへの調査も強化されています。これらの業種だから必ず調査されるわけではありませんが、該当する場合はより丁寧な申告を心がけたいところです。

税務調査の対象になりやすいケース

調査の選定では売上規模も一つの目安になります。一般に、売上が大きいほど調査の対象になりやすい傾向がありますが、売上が小さくても、申告内容に疑いがあれば対象になり得ます。たとえば、赤字経営なのに役員や従業員が明らかに高い生活水準にある場合などは、申告との整合性が問われます。

また、税務署は売上だけでなく、所得・現金預金の動きまで確認しています。確定申告のデータに不自然な点がある、前年と比べて大きな変化があると、調査されやすくなります。たとえば、売上が多いのに経費が大きく所得が極端に少ない申告は、経費の妥当性を確かめるために調査対象になりやすいといえます。業績が良くなった場合も悪くなった場合も、前年以前との比較で大きな変化があれば注目されます。とはいえ、これらはあくまで目安であり、どの事業者が対象になるかを断言できるものではありません。

税務調査の前に準備しておくこと

事前通知が届き日程が決まったら、次のような書類をそろえておきましょう。

  • 現金出納帳・総勘定元帳・見積書や納品書などの売上関連書類
  • 請求書や領収書などの仕入れ等関連書類
  • 株主総会または取締役会の議事録
  • 借入の契約書
  • 銀行通帳
  • 登記を変更した場合の履歴事項全部証明書
  • 賃金台帳などの雇用関係書類

書類がそろったら、未処理のもの(請求書・領収書・契約書)がないか、売上が正しく計上されているかを確認します。データでしか残っていない場合は、必要に応じてプリントアウトしておきましょう。自社の書類だけでなく、取引先発行の請求書・領収書が見当たらない場合は、取引先に再発行を依頼します。

不備を見つけても、隠そうとしてはいけません。不備を隠すために書類を改ざんすると、仮装・隠蔽行為とみなされ、最も重い重加算税の対象になります。不備があれば、調査で指摘される前に自主的に修正申告をしておきましょう。これなら隠蔽行為にはあたりません。

日頃からの備えも重要です。領収書・請求書・契約書をわかりやすく整理・保管し、判断に迷ったことはメモに残しておきましょう。月次処理で税理士にチェックしてもらい、経理に問題がない状態を保っておけば、いざ調査が入っても落ち着いて対応できます。

もし指摘されたら?加算税の早見表

申告に誤りがあると、本来の税額(本税)に加えて加算税延滞税が課されることがあります。税率は次のとおりです(国税通則法・国税庁/2026年7月時点)。

種類原則の税率軽減・加重
過少申告加算税10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)調査の事前通知前に自主修正すれば課されません(0%)。通知後〜調査による更正の予知前は5%(超過部分10%)
無申告加算税15%(50万円超〜300万円以下の部分は20%、300万円超の部分は30%※令和6年1月以降に期限が到来する分)事前通知前に自主的に期限後申告すれば5%
重加算税仮装・隠蔽があった場合、過少申告分は35%/無申告分は40%過去の無申告・重加算税の繰り返しには加重あり
延滞税法定納期限の翌日から、年ごとに定められた割合で日割り計算割合は年により変動(最新は国税庁で確認)

ポイントは、誤りに気づいたら、調査の連絡が来る前に自主的に修正申告すること。早く動くほどペナルティの負担が軽くなります。

よくある質問(FAQ)

Q. 税務調査は何年分さかのぼられますか?

A. 法律上は原則5年分です。実務ではまず直近3年分を中心に確認し、必要に応じて5年、仮装・隠蔽など不正があれば最長7年分まで対象になります。

Q. 黒字でないと税務調査は来ませんか?

A. そんなことはありません。赤字でも消費税の申告内容や、所得と生活実態の不一致など、不自然な点があれば対象になり得ます。

Q. ミスに気づいたら、すぐ修正したほうが得ですか?

A. はい。調査の事前通知前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税は課されません。判断に迷う場合は早めに税理士へ相談しましょう。

まとめ

税金は社会に欠かせないものですが、申告に誤りがあると本来より多くの負担が生じてしまいます。ここでは税務調査で狙われやすい理由をさまざまな角度から見てきました。自分の会社や事業が調査の対象になりやすいかを事前に把握しておけば、いざというときも慌てずに対応できます。

税理士ほど詳しく知る必要はありませんが、基本的な仕組みと備えを押さえておくことが、何よりの安心につながります。不安な場合は、税務調査に対応した経験のある税理士に相談しておくとよいでしょう。

※本記事は一般的な解説です。加算税・延滞税の割合や対象期間などの最新の取り扱いは、国税庁の公式サイトでご確認ください。

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税務調査の当日に質問されやすい内容|聞かれること・答え方

税務調査の質問に落ち着いて対応する経営者のイメージ

税務調査の際によく質問されることや、チェックされやすいポイントを解説します。「調査当日に何を聞かれるのか」は、初めて調査を受ける方なら誰もが気になるところです。あらかじめ流れを知っておけば、必要以上に緊張せず落ち着いて対応できます。

調査は「会社の概況を把握する質問」から始まる

税務調査が始まっても、いきなり調査官が帳簿をひっくり返してチェックを始めることは基本的にありません。担当する調査官にもよりますが、最初は雑談を交えながら、業界や会社の状況についての質問から入るのが一般的です。

そこから、組織構成や従業員数といった会社情報、受注から納品・入金までの流れなど、次第に業務全体を把握する内容へと質問が移っていきます。特に売上については、締め日・入金日・売上計上のタイミングなど、少し踏み込んだ内容を聞かれると考えておくとよいでしょう。在庫を抱える小売業などでは仕入れに関する質問もありますし、給料の締め日・支払日・支払方法、場合によっては社長の趣味を尋ねられることもあります。

一見すると税務調査と無関係に思える質問にも、実は意味があることが少なくありません。たとえば社長の趣味を尋ねるのは、後述する交際費の私的利用を確認するための布石であることがあります。

税務調査でチェックされる重点ポイント

会社の概況を確認した後、多くの場合は調査1日目の午後から帳簿の確認作業に入ります。重点的に見られるのは、次のような項目です。

売上計上時期のずれ(期ズレ)

税務上、売上計上のタイミングは引渡基準(商品の納品日・サービスの提供日)が基本です。これを入金日に計上する現金主義で処理していると、計上時期がずれてしまいます。特に期をまたいで計上時期がずれていると、売上計上漏れとして指摘されます。調査で最も多く確認されるポイントのひとつです。

交際費の私的利用

交際費に私的な支出が混ざっていないかがチェックされます。ゴルフ代や食事代を交際費に計上している場合、「誰と行ったのか」など詳細を確認されます。親族の結婚祝いや自分用の贈答品、取引先と行ったことにした家族旅行などが交際費に紛れ込んでいると要注意です。参加者や人数があいまいな高額の飲食領収書も目につきやすい項目です。

在庫(棚卸資産)の金額

小売業などの在庫商売では必ずといってよいほど確認されます。期末在庫を減らせばその分だけ利益が圧縮され、税額が少なくなるため、会社が作成する在庫表の数字は念入りに調べられます。在庫計上漏れがあれば追徴課税の対象となるので注意が必要です。

人件費(架空人件費)

実在しない従業員の給与を計上して利益を減らす「架空人件費」がないかを確認します。疑わしい場合は、履歴書やタイムカードの有無、社会保険への加入状況などが確認されます。アルバイトへの現金払いなどは、記録が残りにくいため突っ込んで質問されやすい部分です。

外注費・関係会社との取引

外注費の水増しや、関係会社との取引内容など、不正が発生しやすい箇所も重点的に確認されます。不明瞭な点についてあいまいな答えをしていると、かえって疑念を招きかねません。心配な点があれば、調査前に顧問税理士と受け答えのシミュレーションをしておくことをおすすめします。

調査官の質問に落ち着いて答えるコツ

当日は、調査官がさまざまな観点から質問をしてきます。前述のとおり、最も多いのは「売上の計上時期のずれ」で、本来当期に計上すべき売上を翌期に回していないかが確認されます。次いで「交際費の私的利用」「在庫計上漏れ」「架空人件費」が定番のチェック項目です。

飲食店などでは「売上の計上漏れ」も多く、調査官が事前に客として来店してレシートを確保し、実際の売上と突き合わせる、といった調査手法がとられることもあります。いずれの質問についても、正確な記録と証拠がそろっていれば、堂々と事実を答えれば問題ありません。わからないことは推測で答えず、「確認して回答します」と伝え、税理士に相談してから正確に回答するのが安全です。

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そもそも税務調査の対象はどう選ばれる?

企業経営をしていると、税務調査に不安を抱く方は少なくありません。税務調査は、その企業や団体が納めるべき税金を適正に納めているかを確認するために行われるもので、いつ調査対象になるかは事前にはわかりません。明日連絡が来る可能性もあれば、10年ほど音沙汰がないこともあります。税務調査に不安を抱える経営者のイメージ

実際の調査を担うのは税務署で、ここが具体的な調査対象を選定します。企業はその特徴ごとに区分され、多額の不正経理が疑われる企業は「継続管理法人」、不正に関わっている可能性が高い企業は「循環接触法人」などと位置づけられ、比較的高い頻度(3年に1度程度)で調査が行われることが多いとされます。一方、経営陣が大きく変わった、事業規模が急変したなど、申告内容をあらためて確認すべき企業は長期的に見ていく対象となり、数年〜10年ほどの間隔になることもあります。税務調査の対象選定をイメージした虫眼鏡の画像

調査対象になりやすい特徴としては、まず黒字が続いている企業が挙げられます。赤字企業に調査を行っても不足税額を回収しにくいため、利益が出ている企業のほうが選ばれやすい傾向があります。ただし赤字なら安全というわけではないので油断は禁物です。また、近年急に売上や収益が伸びている企業も、申告漏れが生じやすいとみなされ調査対象となる確率が高まります。退職金や貸倒れなど非経常的な経費が大きく、利益が実態より少なく見えている企業もチェックされやすくなります。

いざ調査が入ると、売上計上の金額と時期、交際費、在庫、人件費などが入念に確認されます。税務処理を社内担当者だけで抱え込まず、経験豊富な税理士に日頃からチェックしてもらうことが、あらぬ疑いを避けるうえでも有効です。税理士に相談する様子のイメージ

税務調査対策として最も大切なのは、課税対象について正確な知識を持ち、正しい証拠をそろえておくことです。たとえば取引先と食事をしたなら、領収書に相手の企業名や氏名をメモし、きちんと保管しておく。こうした心がけがあれば、処理が正当であることを証明でき、不当な追徴課税を避けられます。社内でこうした意識を徹底しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 調査官の質問に、その場で答えられないときはどうすればよいですか?

A. 記憶があいまいなまま推測で答えるのは避けましょう。「資料を確認してから回答します」と伝えれば問題ありません。誤った回答は後の食い違いの原因になります。顧問税理士がいれば、その場で確認・相談するのがおすすめです。

Q. 当日までに準備しておくべき書類は何ですか?

A. 帳簿(総勘定元帳・仕訳帳)、請求書・領収書・レシート、通帳、契約書、確定申告書の控えなどが基本です。売上の締め日や計上ルール、交際費の相手先メモなどを整理しておくと、質問にスムーズに答えられます。

Q. 世間話にも正直に答えて大丈夫ですか?

A. 基本的には正直に答えて問題ありません。ただし、雑談の中の情報が交際費や生活費の確認につながることもあるため、事実に反することを話さないよう注意しましょう。うそやごまかしは、かえって不信感を招きます。

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税務調査の流れ|事前通知から調査当日・修正申告までをやさしく解説

税務調査の流れをイメージした、書類を確認するオフィスのイラスト
どのように税務調査が進められるのか、大まかな流れについて解説しています。事前通知から調査当日、修正申告までの流れを知っておけば、いざというときも落ち着いて対応できます。

税務調査のスケジュール

ここでは税務調査に慌てることなく対応するために、一般的な任意調査の流れについて概要をまとめました。

1.事前通知と日程調整

税務調査の事前通知を受けるイメージ 税務調査を行う場合は、原則として電話による事前通知があります。指定された日程の都合が悪い場合は、変更してもらうことが可能です。 飲食店のように現金商売をしている場合は事前連絡なしのケースもありますが、基本は事前に連絡があり、日程調整をするところから始まると考えてよいでしょう。

2.事前準備

税務調査の通知がされる際に、日時や場所以外に、調査の目的や対象となる税目、課税期間などの説明があります。それに従って、総勘定元帳や請求書・領収書、預金通帳、契約書など必要と思われる書類を準備します。顧問税理士がいる場合は、早めに相談しておくとよいでしょう。

3.税務調査当日【1日目】

中小企業の税務調査は、通常2日間かけて行われることが多いです。1日目は午前10時ごろに調査官が到着し、身分証明書の提示があってスタートします。午前中は業務内容や取引先など会社概況の聞き取り調査、午後から帳簿確認作業が行われるのが一般的な流れです。

4.税務調査当日【2日目】

1日目の調査を引き続き行い、問題点がある場合は口頭で質問や指摘を受けます。また必要な資料がなかった場合は、後日提出を求められます。2日間で資料チェックが終わらない場合は、書類等を持ち帰る(預かる)場合もあります。

5.調査終了

税務調査が終了すると、後日、調査官から結果の説明があります。指摘事項がない場合は申告是認となり終了です。指摘事項がある場合は修正申告を勧められます。

6.修正申告・追加納税

指摘に納得がいけば修正申告書を提出し、納得がいかない場合は税務署からの更正決定を待ちます。更正の内容に合意する場合は不足分の税額を納めますが、納得しない場合は不服申立てを行うことができます。 以上のように、どのような流れで税務調査が進められるのかを知っておくことで、準備がしやすくなります。 なお、税務調査に対応できる税理士がいる場合は、調査に立ち会ってもらい、指摘事項に対する反論・折衝をお願いすることが可能です。

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初めての税務調査、やっておくべきこと、注意すべきことは?

税務調査に不安を抱える経営者のイメージ企業経営を行っている経営者の方の中には、税務調査に対して不安を抱いている方も少なくないと思います。 税務調査は、その企業や団体が納めるべき税金を適正に納めているかをチェックするために行われるもので、いつ自分の会社が調査対象となるかはわかりません。 明日電話がかかってくる可能性もありますし、逆に10年ほど音沙汰がないこともあり得ます。 企業ごとに税務調査が入る頻度はさまざまで異なりますが、調査に入る時期やターゲットはどのようにして決めているのでしょうか。 調査対象を選定するイメージ実際に調査を行う国の機関は税務署であり、ここで具体的な調査対象を選定しています。企業はその特徴ごとに区分けされ、多額の不正経理が疑われる企業や、不正に関わっている可能性が高い企業などが要チェックとされます。 このようないわゆる「気になる企業」に対しては、比較的高い頻度で調査が行われることが多いといわれています。 一方、経営陣が大幅に変わったり事業規模が大きく変化したなど、申告内容をあらためて確認する必要がある企業は、長期的に見ていく必要があるため、しばらく経過してはじめて調査が入るということもあります。 税務署が調査を行うか否かを最終的に判断する際には、企業が行っている税務関係の申告状況を確認することになります。ターゲットになりやすい特徴としては、まず黒字が続いている企業が挙げられます。赤字企業に調査を行っても、不足している税金を納められないケースが多いため、黒字続きで納税余力のある企業のほうが調査対象に選ばれやすくなります。もちろん、赤字だからといって必ずしも調査対象にならないわけではないので、油断は禁物です。 また、近年急激に売上や利益が伸びている企業も、売上の計上漏れなどが起きやすいため、調査対象とされる確率が高まります。この他、退職金の支払いが多額にのぼったり、貸倒れによって経費計上が増加するなど、非経常的な経費が大きく発生している企業もチェックされやすくなります。 他にもさまざまなポイントがあり、該当する項目が多ければ多いほど、調査対象になる可能性が高いといえます。 帳簿を確認するイメージいざ調査が入ると、どんなポイントを調べられるのかも知っておくことが大切です。最初にチェックされるのは、売上計上の金額はもちろん、その計上「時期」に不審な点がないかという点です。 交際費や在庫、売上の計上ミスもよく見られるので入念に調べられますし、実際には働いていない架空の人件費を計上していないかも確認されます。 税務関係は分かりにくいこともあるため、故意に不正を働いたとあらぬ疑いをかけられないためにも、日ごろから適正な処理をしていくことが重要です。 そのためにも、税務処理は社内の担当者だけで行うのではなく、経験豊富な税理士などの専門家に依頼して、普段から間違いがないかチェックしてもらうようにしましょう。 税務調査対策として最も大切なことは、課税対象となる内容について、法律に基づいた正確な知識と正しい証拠を揃えておくことです。そうすれば、その税務処理に不審な点がなく正当なものであると証明できます。 たとえば、取引先と食事をしたのであれば、領収書に相手の企業名や氏名などをメモ書きしておいたり、なくさないようにしっかり保管しておくなどの心がけが欠かせません。正当な証拠があれば、不当な追徴課税を課せられる心配も少なくなるので、社内でこうした意識を周知徹底させておきましょう。

知っておきたい無予告調査の要件と対処のポイント

無予告調査の対象となる要件

通常、税務調査は事前に通知があり、予定された日時に行われますが、通知をせずにいきなり調査に入ることが認められているケースがあります。 これが「無予告調査」です。突然アポなしで税務調査に来られてしまうため、何の準備もできていない経営者はかなり慌ててしまいます。 一般的に、無予告調査は現金での商売をしている個人事業主などが対象となることが多いようですが、必ずしもそうとは限らず、企業にも無予告調査が入る可能性はあります。 以前は、対象となる理由がわからないような企業にも無予告調査が入ることがありましたが、現在は無予告調査の要件が法定化されています。無予告調査の要件は、国税通則法第74条の10(事前通知を要しない場合)に定められています。 条文や、その解釈を示した国税庁の法令解釈通達はインターネット上で確認できますので、お時間のあるときに目を通しておくとよいでしょう。

無予告調査は要件を満たしているのか?

無予告調査の根拠となる国税通則法第74条の10には、具体的な判断要素が、国税庁の法令解釈通達に例示されています。 もし無予告調査が入った場合は、その内容を確認し、自分のところに無予告調査が入ったのは、要件のどの部分に当たっているからなのかをまず確認してください。要件に当てはまらないと考えられる場合は、その点を調査官に確認するとよいでしょう。

無予告調査をめぐる注意点

過去には、調査官が要件を正しく説明できず、想定していた無予告調査が行えなかったという事例もあるといわれています。 たとえば、個人事業主の商店に調査官が突然訪れ、無予告調査を行う旨を説明したものの、「なぜ自分が対象なのか(要件のどこに当たるのか)」を尋ねたところ、明確な説明が得られなかった、というようなケースです。 「現金商売だから」というだけでは、必ずしも無予告調査の要件に当たるとは限りません(国税庁の通達でも、単に不特定多数との現金決済取引をしていることのみをもって事前通知を要しない場合に該当するとはいえない、とされています)。無予告調査を受けた際は、必ず「何の要件に当てはまるため調査に来たのか」を確認するようにしてください。

無予告調査に冷静に対処するポイント

経営者と税理士はあらかじめ無予告調査について打ち合わせておく

税金に関してクリアな状態にしておくのが一番だとわかっていても、さまざまな事情で帳簿を完全にクリアにしておくことが難しい場合もあると思います。もしものときのことを考えて、経営者と税理士は、無予告調査が入った際の対応についてしっかり打ち合わせをしておきましょう。 顧問税理士から無予告調査についてのアドバイスがない場合は、自分から「もし無予告調査が入ったらどのように対応すべきか」を質問し、対処法を聞いておいてください。

何を言われてもすぐに税理士に連絡を!

調査官が訪れたら、まず要件を確認します。税務調査に来たということが確認できたら、すぐに税理士に連絡をしましょう。 「税務代理権限証書」を提出している場合、税理士は税務調査に立ち会う権利を持っています。何を言われても、まずは税理士に連絡を入れましょう。 可能であれば、突然調査官が訪れても、税理士が来るまでは社内に通さないことが望ましいです。対処に慣れていない経営者だけで対応すると、意図せず不利な受け答えをしてしまうことも考えられます。「税理士が来るまでお待ちください」と、毅然とした態度を取れるのが理想です。

「今までは大丈夫だった」という言葉は禁句

税務調査でよくあることですが、前回の調査では指摘されなかったことが今回指摘されたというときに、「今までこれで何も言われなかった」と言いたくなってしまうことがあります。しかし、これは避けたい言葉です。これを言ってしまうと、さらに古い税務記録までさかのぼって確認されることになりかねません。

帳簿のコピーや貸与を求められたら

現在は、資料のコピーや貸与(預かり)について、必要があれば調査官が求めることが法律で認められています。このため、求められた場合には応じる必要があります。 貸与については、明確に「何日以内に返却しなければならない」と法律で決められているわけではありません。資料の貸与(預かり)を求められたときは、後で内容を確認できるよう、こちらでもコピーを取ってから渡すなどの対処をしておくと安心です。

無予告調査は断れないが、日程調整は可能

無予告調査そのものを拒否することはできません。また、税務調査において黙秘をしたり、嘘の発言をしたり、偽の資料を提出したりすると、罰則を受ける可能性がありますので、絶対にやめましょう。 とはいえ、平日に突然調査官が訪れても、仕事上の大切な打ち合わせや用事がある場合もあります。調査そのものを断ることはできませんが、「今はどうしても立ち会えないので別の日にしてほしい」と日程を調整してもらうことは可能です。 参考:国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan.htm

調査内容は時系列で細かく記録

無予告調査に関しては、トラブルに発展してしまったケースもあります。調査内容は細かく時系列で記録しておき、万一トラブルが発生した際に、速やかに正しい対処ができるようにしておきましょう。

よくある質問(税務調査の流れ)

Q. 税務調査の連絡(電話)が来たら、まず何をすればよいですか?

まずは落ち着いて、調査の対象となる税目・課税期間・日時・場所を聞き取り、メモしておきましょう。そのうえで、顧問税理士がいれば早めに連絡し、日程調整や準備すべき書類を相談します。指定された日程の都合が悪ければ、変更を申し出て構いません。

Q. 調査当日は何を準備しておけばよいですか?

一般的には、総勘定元帳などの帳簿、請求書・領収書、預金通帳、契約書、給与関係の書類などです。事前通知で示された税目・課税期間に対応する年度分をそろえておくと、当日の確認がスムーズです。何を準備すべきか迷う場合は、税理士に確認しましょう。

Q. 調査が終わった後は、必ず追加で税金を払うことになりますか?

いいえ、必ずしもそうではありません。指摘事項がなければ「申告是認」で終了します。指摘事項があった場合は修正申告や更正となり、不足していた税額に加えて、内容に応じて加算税・延滞税がかかることがあります。指摘に納得できない場合は、不服申立てという手段もあります。

Q. 税理士に立ち会ってもらうことはできますか?

はい。税務代理権限証書を提出している税理士は、税務調査に立ち会うことができます。調査官とのやり取りや指摘事項への対応を専門家に任せられるため、不安がある場合は、税務調査の対応経験が豊富な税理士に相談することをおすすめします。

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税務調査に強い税理士の比較表

税務調査後のやりとりと追加納税|加算税・延滞税の最新税率と不服申立て

税務調査後の書類確認と協議を行う事業者と専門家のイメージ

税務調査は現地での立ち会いが終われば完了、というわけではありません。調査後にどんなやりとりが続き、追加納税がどう決まり、どんなペナルティ(加算税・延滞税)がかかるのかを、最新の税率にもとづいて整理しました。

現地の調査だけでは終わらない

現地での税務調査は1~2日間で行われることが多いですが、それだけで税務調査の全体が終わるわけではありません。調査官は資料を持ち帰ってチェック・検討を続け、場合によっては追加で資料の提出を求めてくることもあります。

現地ではその場で質問に答える程度で済むこともありますが、調査後には契約書や入出金の内容について、何回かに分けて詳細な確認のやりとりが行われます。ここで最終的な追加納税額が固まっていくため、求められた資料は速やかに提出し、質問にも丁寧に応じることが大切です。書類のチェックや、必要に応じた取引先への反面調査などを経て、税務調査がすべて終わるまでには数週間から1か月程度かかるのが一般的です。これらを自分だけで対応するのは負担が大きいため、顧問税理士がいる場合は、多少費用がかかっても対応を任せたほうが安心です。

調査結果の通知:是認・修正申告・更正

税務調査が終わると、税務署側がその結果をまとめて通知します。結果は大きく次のように分かれます。

  • 是認:申告内容に誤りがないと認められた場合。修正申告も追加納税も必要ありません。
  • 申告内容に誤りがある(指摘事項がある):誤りを認める場合は修正申告書を提出し、追加の税金を納めます。修正申告をすると、その後に内容を争うこと(不服申立て)はできなくなります。

指摘内容にどうしても納得できない場合は、修正申告書を提出せず、税務署からの更正(更正処分)を受けるという対応になります。一般的には指摘に沿って修正申告に応じるケースが多いものの、納得がいかない場合は、まず税理士に相談したうえで最終判断することをおすすめします。

処分に不服があるときの手続き(最新の制度)

更正などの処分に不服がある場合は、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、次のいずれかを行うことができます(国税通則法)。

  • 再調査の請求:処分を行った税務署長等に対して、もう一度見直しを求める手続き。
  • 審査請求:国税不服審判所長に対して判断を求める手続き。再調査の請求を経ずに、直接行うこともできます。

かつては「異議申立て(2か月以内)」という制度でしたが、平成28年4月の国税通則法改正で「再調査の請求」へ名称が変わり、申立て期間も原則3か月以内に延長されました。再調査の請求の結果になお不服があるときは、その後さらに審査請求(再調査決定書の送達から1か月以内)に進むことができます。古い情報の「2か月以内・異議申立て」と混同しないよう注意してください。

追加納税の流れ

指摘を受けて追加の納税が必要になった場合は、おおむね次の流れで進みます。手順が多いため、納税が済むまでの作業を税理士に依頼することも可能です(むしろそのほうがスムーズに進むことが多いでしょう)。

  1. 指摘事項についての連絡・協議:調査終了後、税務署から指摘事項の連絡が入ります。内容を確認したうえで、修正に関して署員と協議します。すべての指摘にそのまま従う必要はなく、納得できない部分は話し合う姿勢が大切です。
  2. 修正申告書の作成・提出:協議を終えて納得できたら修正申告書を作成し、税務署で内容を確認のうえ提出します。
  3. 納付書の受け取り:修正申告書を提出すると、税金を納めるための納付書を受け取ります。所得税(国税)だけでなく、住民税・法人住民税などの修正が必要な場合は、各自治体でも別途手続き・納付書の受け取りが必要です。
  4. 追加の税金の納付:納付書を持って金融機関などで納めます(e-Taxやダイレクト納付、クレジットカード納付なども利用できます)。
  5. 加算税・延滞税の納付:本税に加えて、後日、加算税や延滞税が課される場合があります。これらを納め終えて、ようやく一連の手続きが完了します。

追加で支払う税金の種類とペナルティ(最新の税率)

追加で支払う税金には複数の種類があり、申告のしかたや悪質性に応じて税率・利率が変わります。下にいくほど重くなるイメージです。税率は税制改正で見直されることがあるため、実際の課税では最新の税率を国税庁の公表資料で確認してください。

まず基本となるのが本税(本来納めるべきだった税金そのもの)で、これは通常の税率と変わりません。これに、申告の状況に応じて次の加算税が上乗せされます。

種類課されるケース税率(割合)
過少申告加算税期限内に申告したが、税額が不足していた増差税額の10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)
無申告加算税期限内に申告しなかった50万円まで15%/50万円超300万円以下20%/300万円超30%※1
不納付加算税源泉徴収した所得税などを期限までに納付しなかった10%(告知前に自主納付した場合は5%)
重加算税隠ぺい・仮装など悪質と判断された過少申告・不納付に代えて35%/無申告に代えて40%※2

※1 令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税が対象です。税務調査の事前通知前に自主的に期限後申告をした場合は5%に軽減されます。
※2 過去5年内に無申告加算税・重加算税を課されたことがあるなど一定の繰り返しがある場合や、電子帳簿保存法の電子取引データに関する隠ぺい・仮装があった場合は、さらに10%が加重されます。

これらに加えて、納付の遅れに対しては延滞税がかかります。延滞税は罰則ではなく「利息」にあたる性質のもので、納期限の翌日から納付日までの日数に応じて計算されます。本来の利率は「2か月までは年7.3%、2か月経過後は年14.6%」ですが、近年は市中金利に合わせた特例で大きく引き下げられています。2026年(令和8年)中の延滞税は、納期限の翌日から2か月までが年2.8%、2か月を超えると年9.1%です(この特例の割合は毎年見直されるため、最新の割合は国税庁「延滞税の割合」で確認してください)。2か月を境に利率が跳ね上がるため、納めると決めたら早めの納付が負担を抑えるポイントです。

追加納税に備えて資金を準備するイメージ

本税・加算税以外に注意したい「過怠税」

税務調査では、印紙税の貼り忘れも指摘されることがあります。契約書や領収書などに必要な収入印紙が貼られていなかった場合、過怠税が課されます。原則として、本来納めるべき印紙税額と、その2倍に相当する金額の合計(=本来の3倍)を納めることになります(自ら不納付を申し出た場合は1.1倍に軽減)。印紙税は見落とされがちですが、負担が大きくなるため注意が必要です。

このほか、税務調査で指摘されやすい代表的なポイントとして、次のようなものがあります。

  • 売上の計上時期のズレ:売上は原則「商品を引き渡したとき」「サービスを提供したとき」に計上します。これを「入金があったとき」「請求書を出したとき」にずらしていると、売上計上漏れとして追徴の対象になります。
  • 個人的支出の交際費混入:私的な支出が交際費などに含まれていると、役員賞与として扱われ課税されることがあります。
  • 架空人件費:実在しない従業員への給与など架空の人件費は、悪質な租税回避とみなされ重加算税の対象になり得ます。余計な疑いを避けるためにも、履歴書・給与台帳・扶養控除等申告書・タイムカードなどをきちんと保存しておきましょう。

税務調査の後は追加の支払いが生じることが多いため、いつでも納付できるよう、ある程度の資金を準備しておくと安心です。

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よくある質問(FAQ)

Q. 修正申告と更正は何が違いますか?

修正申告は、納税者が自ら誤りを認めて申告し直す手続きです。一方、更正は、修正申告に応じない場合などに税務署側が税額を確定させる処分です。修正申告をすると後から不服を申し立てることはできませんが、更正であれば再調査の請求・審査請求といった不服申立ての手続きを取ることができます。

Q. 指摘にすべて従わなければいけませんか?

必ずしもそうではありません。事実関係や法令の解釈について納得できない点があれば、根拠資料を示して協議することができます。専門的な説明が必要になる場面も多いため、判断に迷う場合は税理士に相談しながら進めるのが安全です。

Q. 追加の税金が払えそうにないときは?

一度に納付するのが難しい場合は、税務署に相談することで分割などの「納税の猶予」が認められることがあります。放置すると延滞税がふくらみ、最終的には滞納処分(差押え)に進むこともあるため、早めに税務署や税理士へ相談しましょう。

まとめ

税務調査は現地調査の後にも資料確認や協議が続き、その結果として修正申告や追加納税につながります。指摘に納得できる場合は速やかに修正・納付を、納得できない場合は3か月以内の再調査の請求・審査請求という手続きが用意されています。本税に加えて加算税・延滞税が上乗せされるため負担は小さくありませんが、日頃から正しい申告と証ひょうの保管を心がけていれば、過度に恐れる必要はありません。調査後の対応に不安があれば、税務調査の対応に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

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税務調査で起きやすいトラブルと対応|任意調査・反面調査・事前通知を解説

事業者の帳簿を落ち着いて確認する税務調査のイメージ

「税務調査」と聞くと、ドラマのような緊迫した場面を思い浮かべて身構えてしまう方も多いかもしれません。しかし、一般的な税務調査は淡々と帳簿を確認していくもので、必要以上に恐れることはありません。ここでは、税務調査で起きやすい場面やつまずきやすいポイントを、現場の視点から落ち着いて整理します。あらかじめ流れを知っておけば、いざというときも冷静に対応できます。

突然の調査や調査官の態度

まず、よくある誤解を解いておきましょう。映画「マルサの女」で描かれていたのは、税務調査のうち強制調査(査察)と呼ばれる場面です。査察は巨額・悪質な脱税が疑われる事案に対し、裁判所の許可状(令状)にもとづいて行われる特別なもので、一般の事業者が受ける調査とは別物です。

私たちが通常「税務調査」と呼ぶのは任意調査です。「任意」とはいえ、納税者には調査に協力する義務(受忍義務)があり、正当な理由なく拒むことはできません。とはいえ、調査官の態度は一般的に紳士的です。会社中を勝手に探し回るようなことはなく、訪問して帳簿書類を順に確認していきます。淡々と帳簿を調べていくだけですので、過度に不安に思う必要はありません。

調査はアポなしで始まることもありますが、多くの場合は事前に電話で日程の連絡(事前通知)が入ります。一方で、現金商売の業種では予告なしで来るケースもあります。代表例が飲食店です。現金を直接扱うため、実際の売上の状況を確認する目的で、予告なく訪れることがあるのです。

調査期間中の対応

税務署から調査の電話が来たとき、あるいは調査官が予告なく訪れたときは、まず顧問税理士に連絡しましょう。税理士は調査対応に慣れているため、任せるのが安心です。予告なしの場合、税理士から「到着するまで待ってもらうように」と指示されることもあります。

その際は、税理士が到着するまで調査官に外で待っていただくことになります。なお、顧問税理士が「税務代理権限証書」を税務署に提出していれば、原則として予告なしの調査は行われにくくなります(事前通知が税理士にも行われる仕組みのため)。ただし「原則として」であり、まれに予告なく訪れるケースもあります。その場合も前述のとおり、税理士の到着を待ってもらうのが基本です。

調査にかかる期間は事業の規模や内容によりますが、中小企業では2日程度、小規模であれば1日で終わることもあります。長引くかどうかは、資料の整い具合や説明のしやすさにも左右されます。

【参考】国税庁の公式情報

個人・取引先にも及ぶ調査

調査の手は、会社だけでなく個人や取引先にも及ぶことがあります。個人については、預金通帳を確認されることがあります。税務署は「質問検査権」という権限を持っており、必要に応じて銀行に照会して口座の動きを調べることもできます。パソコンや机の中を確認の対象とすることもあります。

ただし、調査官が勝手にパソコンや机に触れて調べるわけではありません。社長自身にパソコンを操作してもらったり、書類を示してもらったりして、それを調査官が確認するかたちが基本です。

取引先に確認が及ぶこともあり、これを「反面調査」と呼びます。調査官が文書で取引内容を取り寄せて終わることもあれば、実際に取引先を訪れることもあります。こちらの帳簿と取引先の帳簿が食い違えば、不審に思われる原因になります。反面調査は取引先に手間や心配をかける可能性があるため、日頃から取引内容を正確に記録しておくことが、結果的に自社と取引先の双方を守ることにつながります。

よくある質問(FAQ)

Q. 任意調査は断ることができますか?

事実上、拒むことはできません。任意調査でも納税者には協力する義務(受忍義務)があり、正当な理由のない拒否は認められません。ただし、日程の調整などは相談できる場合があります。

Q. 反面調査を止めることはできますか?

原則として止めることはできません。取引先への影響が心配な場合は、自社の帳簿や証ひょう(請求書・領収書など)を整え、取引内容をきちんと説明できるようにしておくことが最善の備えです。

Q. 調査官に対して何を準備しておけばよいですか?

帳簿、請求書・領収書、契約書、預金通帳などの基本資料をそろえ、いつでも提示・説明できる状態にしておきましょう。準備が整っているほど、調査は短く・スムーズに進みます。

まとめ

税務調査で起きやすいトラブルの多くは、事前の準備不足や、慌てた対応から生まれます。流れを知り、顧問税理士と連携し、根拠資料を整えておけば、必要以上に不安を感じることはありません。日頃の正確な記録こそが、いちばんの「トラブル対策」になります。

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税務調査で税理士に依頼する費用の相場|立ち会い・修正申告の目安

税務調査の対応を税理士に相談するイメージ

税理士に税務調査の立ち会いを依頼する場合の費用について

個人事業主や会社の経営者にとって、税務調査の連絡はやはり不安なものです。「不正をしていなければ怖くない」と思われがちですが、実際には意図しない処理のミスや解釈の違いを指摘され、追徴課税が発生してしまうケースは少なくありません。

そこで心強いのが、税務調査に立ち会ってくれる税理士の存在です。ここでは、税務調査の対応を税理士に依頼したときにどの段階で・どのくらいの費用がかかるのかを、現場の実務にそって順を追って解説します。落ち着いて備えるための目安としてお役立てください。

顧問税理士がいても、立ち会い費用は別途かかる

税務調査が行われる場合、原則として事前に税務署から連絡が入ります。突然職員が訪問して抜き打ちで調べる、ということは通常ありません(現金商売など一部の例外を除きます)。通知された日程で都合が悪ければ、日程の調整を相談することも可能です。

顧問税理士がいる場合、確定申告書や決算報告書に税理士の氏名・連絡先を記載する欄があるため、税務署からは顧問税理士にも連絡が入っているのが通常です。調査の連絡を受けたら、まず顧問税理士に伝えましょう。

ここで注意したいのが、毎月の顧問料には税務調査の立ち会いは含まれないのが一般的だという点です。顧問料は通常、会計データの確認や試算表の作成といった日常的な業務への報酬とされています。税務調査の立ち会いのように普段は発生しない業務を依頼する場合は、別途の費用がかかると考えておきましょう。契約内容によって範囲は異なるため、事前に顧問税理士へ確認しておくと安心です。

税理士費用は「事前準備」「立ち会い」「修正申告」の3段階

税務調査の対応費用は、大きく次の3つの段階に分かれます。それぞれの相場をまとめると、おおよそ以下のとおりです(税理士事務所や事業規模によって幅があります)。

段階費用の相場(目安)主な内容
事前の打ち合わせ・準備1日あたり3万円〜5万円帳簿・申告書の事前チェック、想定問答の準備
調査当日の立ち会い1日あたり3万円〜5万円調査官対応、質疑応答の同席・交渉
修正申告書の作成(必要時)10万円〜20万円程度指摘を受けた場合の申告のやり直し

2日間の調査で修正申告まで依頼した場合、事前準備・立ち会い・修正申告を合わせて12万円〜31万円ほどになるケースが多いとされています。規模が大きく調査日数が長引く法人では、総額で30万円〜70万円程度になることもあります。一方、修正すべき点がなく「是認(ぜにん)」で終われば、修正申告の費用はかかりません。

事前の打ち合わせでかかる費用

税務署から調査の連絡が来てから当日までは、おおむね2週間程度の猶予があります。この期間に税理士と事前の打ち合わせをして当日に臨むのが、一般的な流れです。

事前の打ち合わせでは、帳簿や提出済みの申告書の控えを税理士が細かくチェックします。この段階で処理のミスが見つかることも多く、ミスではなくても「突っ込まれそうな箇所」をあらかじめ洗い出し、聞かれたときの説明の仕方まで整理してくれます。

資料が多い場合や規模の大きな会社では、打ち合わせが2日以上にわたることもあります。費用は1日あたり3万円〜5万円程度が相場です。

このとき大切なのは、税理士が把握していない資料やお金の流れを必ず共有しておくことです。税理士に伝えていない収入・支出を当日に指摘されると、その場での十分な対応が難しくなります。隠さず事前に相談しておくことが、結果的に調査をスムーズに終えるための備えになります。

調査当日以降の対応でかかる費用

調査当日の立ち会い費用も、1日あたり3万円〜5万円が相場です。調査は2日間にわたることが多いため、立ち会いだけで6万円〜10万円程度になるのが一般的です。

規模の大きな会社では2日で終わらず、3日以上かかることもあり、その場合は日数に応じて費用も増えます。逆に、零細企業や個人事業主では半日〜1日で終わるケースも多く、その分費用も抑えられます。

調査の結果、指摘がなかった場合や、指摘に適切に回答して調査官に納得してもらえた場合は、そのまま無事終了です。一方、誤りが確定した場合は修正申告を行う必要があり、その作成を依頼すると10万円〜20万円程度の費用がかかります。これは費用の中で最も高くなりやすい部分ですが、ミスや不正がなければ発生しない費用でもあります。

なお、修正申告にともなって、過少申告加算税や延滞税などの附帯税が別途かかる場合があります。これらは税理士費用とは別に納税者が負担するもので、税率や計算方法は国税庁の最新情報をご確認ください。

顧問税理士がいない場合(スポット依頼)

個人事業主や小規模な会社では、顧問税理士を付けていないことも珍しくありません。売上や利益が小さければ調査が入りにくい傾向はありますが、「絶対に入らない」というわけではありません

顧問契約を結ぶのが難しい場合でも、税務調査のときだけ立ち会いを依頼する「スポット依頼」という方法があります。零細企業や個人事業主であれば、事前の打ち合わせ3万円+当日の立ち会い3万円の合計6万円程度で済むことも多く、修正申告が必要になっても規模が小さければ10万円程度に収まるケースが一般的です。

調査官の指摘に的確に答えられず、想定以上の追徴課税を課されてしまう例もあります。費用を惜しんで自力で乗り切ろうとするより、専門家に同席してもらうほうが、結果的に負担を抑えられることも少なくありません。

税務調査の税理士費用を抑えるためのポイント

最後に、費用をムダに増やさないための実務的なポイントを整理します。

  • 日頃から帳簿・領収書を整えておく:資料が整理されているほど事前準備の日数が減り、費用も抑えられます。
  • 料金体系を事前に確認する:日当制か一式(パッケージ)か、修正申告は別料金かを依頼前に確認しましょう。「着手金+成功報酬」型の事務所もあります。
  • 修正申告の範囲を確認する:修正申告は本来、納税者自身や税務署側でも作成できます。高額な修正申告報酬を提示された場合は、内訳を確認すると安心です。
  • 追徴課税の交渉実績を確認する:附帯税の軽減や指摘範囲の交渉は税理士の力量によります。元国税調査官(国税OB)など税務調査に強い事務所は、結果的に総負担を抑えられることがあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 税務調査の費用は経費にできますか?

A. 税理士に支払う立ち会い・申告書作成などの報酬は、原則として事業の必要経費(または損金)として処理できます。一方、追徴された本税や加算税・延滞税などのペナルティは経費になりません。詳しい取り扱いは税理士にご確認ください。

Q. 修正申告は自分でもできますか?

A. 制度上は納税者自身でも可能です。ただし、複数年度・複数税目にわたる修正は計算が複雑で、対応を誤るとかえってペナルティが増えるリスクもあります。不安があれば税理士に依頼するのが無難です。

Q. 顧問税理士に立ち会いを断られたら?

A. 顧問契約の範囲外として立ち会いを行わない事務所もあります。その場合は、税務調査の立ち会いに対応しているほかの税理士へスポットで依頼することもできます。

Q. 費用は事業規模でどのくらい変わりますか?

A. 個人事業主・零細企業なら総額10万円前後で収まることが多い一方、調査日数が長引く中小企業では20万円〜30万円程度、規模の大きな法人では30万円〜70万円程度になることもあります。資料の量と調査日数が費用を大きく左右します。

まとめ

税務調査の対応を税理士に依頼する費用は、事業規模と資料の量によって変わります。目安としては、事前の打ち合わせが3万円〜5万円、調査の立ち会いが1日あたり3万円〜5万円、修正申告が必要な場合はそれにプラスして10万円〜20万円程度と考えておくとよいでしょう。

費用はかかりますが、正しく備え、的確に対応することが、結果的に追徴課税やペナルティを最小限に抑えることにつながります。不安な点は早めに専門家へ相談し、落ち着いて調査に臨みましょう。