
会社を経営している方や個人で事業を営んでいる方には、さまざまな税金がかかります。普段は税理士に任せていて、内容を詳しく知らないという方も少なくありません。
しかし、税務調査が入ることもあるため、基本的な仕組みを押さえておくことは大切です。ここでは「事業税」を取り上げ、どんなときに課税されるのか、税務調査で見られるポイント、当日の対応の注意点を、税務の現場目線で整理します。
事業税とはどんなときに徴収される?
事業税とは、事業を行っている法人または個人に課される税金で、地方自治体(都道府県)に納める「地方税」です。法人が納める主な税金には、国に納める法人税のほか、地方に納める法人住民税と法人事業税があります(このうち事業税が地方税にあたります)。個人事業主の場合は「個人事業税」が課されます。
事業税は、単に事業を営んでいれば必ずかかるわけではありません。個人事業税には「事業主控除」として年290万円が差し引かれるため、控除後に課税対象が残る場合(おおむね前年の事業所得が290万円を超える場合)に課税されます。事業を始めたばかりで赤字、あるいは所得が290万円以下であれば、原則として個人事業税はかかりません。
注意したいのは、個人事業税には所得税のような「青色申告特別控除」が適用されない点です。青色申告特別控除を差し引いた後の所得が290万円以下でも、控除前で290万円を超えていると課税されることがあります。
税率は業種によって3%〜5%と異なります。物品販売業・製造業・飲食店業など多くの業種(第1種・第3種事業の多く)は5%、一部の業種は4%や3%です。なお法定の業種に該当しない事業には個人事業税はかかりません。
申告と納付の流れ
個人事業税は、原則として自分で税額を計算する必要はなく、都道府県から送られてくる納税通知書に従って納めます。申告期限は毎年3月15日までですが、所得税の確定申告または住民税の申告をしていれば、個人事業税の申告書を別途提出する必要はありません(確定申告書の「住民税・事業税に関する事項」欄に記入すれば足ります)。年の途中で事業を廃止した場合などは、別途申告が必要になることがあります。
納付は原則として8月(第1期)と11月(第2期)の年2回です(自治体や税額により異なる場合があります)。申告自体を行っていないと無申告として扱われ、税務調査の対象になり得ますので、申告は確実に行いましょう。最新の取り扱いは、お住まいの都道府県の主税局・県税事務所のサイトでご確認ください。
事業税の税務調査で見られるポイント
事業を行っていると税務調査を受けることがありますが、すべての事業者が毎年調査を受けるわけではありません。税務署の人員は限られているため、一般には数年に一度程度の頻度で行われるのが通常です。
そのうえで、税務調査が入りやすい傾向としては、次のようなケースが挙げられます。
- 現金商売の業種(飲食・バー・クラブなど)……現金売上は記録が残りにくく、売上計上のもれが疑われやすい。
- ネット関連の事業(アフィリエイト、ネット物販など)……経費が少ない事業で経費が過大に計上されていると不自然と見られやすい。税務署にはネット取引を専門に扱う調査担当もあります。
- 所得が大きい・利益が伸びている事業者……調査による是正効果が大きいため、相対的に対象になりやすい。
もちろん、これらに当てはまっても正しく申告・記帳していれば過度に恐れる必要はありません。日頃から帳簿と証ひょう(請求書・領収書・通帳など)を整理し、売上と経費の根拠を説明できる状態にしておくことが、何よりの備えになります。
業種別の税率の目安(個人事業税)
| 区分 | 主な業種の例 | 税率 |
| 第1種事業 | 物品販売業・飲食店業・不動産貸付業・製造業 など | 5% |
| 第2種事業 | 畜産業・水産業・薪炭製造業 | 4% |
| 第3種事業(原則) | 医業・弁護士・税理士・デザイン業 など | 5% |
| 第3種事業(一部) | あんま・マッサージ・指圧、装蹄師業 など | 3% |
※いずれも年290万円の事業主控除後の所得に対して課税されます。区分・税率の詳細は各都道府県の公式情報でご確認ください。
税務調査の注意点(任意調査・無予告調査の対応)
税務調査には大きく分けて任意調査と強制調査(査察)があります。
任意調査は通常行われている調査で、一般に資本金1億円未満の法人や個人は所轄の税務署が、それを超える規模の法人などは国税局が担当します。「任意」とはいえ、納税者には質問や帳簿提示に応じる義務(受忍義務)があり、正当な理由なく拒否すると罰則の対象となることがあります。
強制調査は国税局の査察部が裁判所の令状にもとづいて行うもので、巨額・悪質な脱税が疑われる場合に、刑事告発を目的として実施されます。通常どおり営業している事業者であれば、まず縁のないものと考えてよいでしょう。
任意調査では、原則として事前に連絡(事前通知)が行われます(国税通則法第74条の9)。前日に突然というケースはまれで、ある程度の余裕をもって日時・場所・対象が知らされるのが通常です。通知された日時に都合が悪い場合は、合理的な理由があれば日程の変更を求めることもできます。
一方で、事前通知をせずに調査が行われる「無予告調査」もあります(同法第74条の10)。売上除外などが疑われ、事前に知らせると証拠が隠されるおそれがあるなどの場合に認められるもので、「事前通知がない=違法」「だから拒否できる」というわけではありません。無予告で訪れた場合でも、その場で顧問税理士への連絡や、立会いの時間確保・調査開始時刻の相談を求めることはできますので、慌てず落ち着いて対応しましょう。顧問税理士がいる場合は、まず連絡を取り、相談したうえで対応するのが安心です。
税理士に相談するメリット
「調査の連絡が来てから新しい税理士に頼んでも意味がないのでは」と考える方もいます。確かに、税理士に依頼したからといって、本来納めるべき税額が魔法のように減るわけではありません。是正すべき申告もれがあれば、それは正しく修正することになります。
もっとも、税理士の立会いには手続きが適正に行われているかの確認、調査官とのやり取りの整理、論点の説明、修正申告の要否の判断といった実務的な役割があります。とくに普段から記帳・申告を任せている顧問税理士であれば、事業の実態を把握しているぶん、スムーズで的確な対応が期待できます。日頃から信頼できる税理士と関係を築いておくことが、いざというときの安心につながります。
よくある質問(FAQ)
Q. 所得が290万円以下なら個人事業税はかかりませんか?
A. 事業主控除(年290万円)後に課税対象が残らなければ、原則としてかかりません。ただし個人事業税では青色申告特別控除が使えないため、青色申告特別控除を差し引く前の所得で290万円を超えていると課税されることがあります。
Q. 個人事業税の申告は確定申告とは別に必要ですか?
A. 所得税の確定申告(または住民税の申告)をしていれば、個人事業税の申告書を別途出す必要は原則ありません。確定申告書の所定欄に記入すれば足ります。
Q. 税務調査の連絡が来たら、まず何をすればよいですか?
A. 顧問税理士がいれば、まず連絡して相談しましょう。並行して、調査対象期間の帳簿・請求書・領収書・通帳などを整理し、売上と経費の根拠を説明できるように準備しておくと安心です。日程の都合が悪ければ、合理的な理由を添えて変更を相談できます。
※本記事は税制の一般的な解説です。税率・控除額・期限などの最新の取り扱いは、国税庁および各都道府県の公式サイトでご確認ください。